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4%ルールとAnnuity:老後資金の引き出し率について

別トピのKDの質問に関する話題ですが、長文なので別トピにしました。お暇で興味ある方だけどうぞ。皆さんの意見も聞いてみたいです。

アメリカのリタイアメント・プランニングの親指ルールに4%ルールというのがあります。

『60歳で引退して株:債券が50:50のリタイアメントポートフォーリオを運営していく場合、リタイア初年はポートフォーリオの4%を引き出し、その後はその額を毎年インフレ調整して引き出していく』

というもので、この4%ルール使うと死ぬまでお金が持つ可能性が高い(95%)だろうというのは、過去の市場データやモンテカルロ・シミュレーションを使って確認されています。

例えばソーシャル・セキュリティーの他に年40Kの生活費が必要なら、$1ミリオンのリタイアメント資金を貯めてそこから年4%引き出しましょう・・・そういった大まかな計算に使われます。リタイアメント資金目標額がミリオン単位の大金になりがちなのは、この4%ルールが一因。

4%ルールにも色々欠点・制限・課題があり、

(A)死ぬまでにお金が枯渇するリスクも少しながらある(5%)。

(B)多額の資金を抱えたまま死んでしまう確率もかなりある(その場合は不必要に節約した生活をしたことになる)。

(C)引退時点瞬時のポートフォーリオの価値総額に頼りすぎる。引退時の株市場がピークだと、引き出し額が高すぎて資金が枯渇するリスクもある。

(D)ポートフォーリオが国際株やスモール・キャップ等に分散してあれば、引き出し率5%+でも大丈夫という説もある。

(E)70~90代になってもなおポートフォーリオを株:債券 50:50に保つというのも無理がある。4%ルールは、「一定条件下で、何%安全に引き出せるか」についての親指ルールで、決して「株:債権を50:50に持つべき」というルールではない。

(F)過去データでシミュレーションしてみても、株式市場が将来どうなるかは完璧には予測できない(日本ケースもあるし)

といったことが言われています。

まあ、あくまで親指ルールなので四角定規にフォローするのではなく、それをベンチマークにして個人が自分の状況を考慮して応用していくというのが実情。数学の得意なプランナーなんかは、夫婦の年齢や株:債権の割合など個人事情に合わせたモンテカルロ・シミュレーションをしてくれるらしい。

プランナーの間では頻繁に言及されるこの4%ルールですが、実はファイナンスの学者さん達の間では意外に評判が悪い。「ポートフォーリオに抱え込んだ株リスクを4%引き出し率という妙にコンサバなアプローチで打ち消そうというのは、非常にアンバランスな方法だ。毎年インフレ調整された安定したインカムを死ぬまで得ることが最終目的ならば、もっと良い(もっと枯渇リスクが低く引き出し率も高い)方法があるはずだ・・」・というのが批判の主旨。

papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1115023 

じゃあ、学者さん達の言うもっと良い方法は何かというと、結局はAnnuityになるようです。Annuityといっても色々種類がありますが、ここで言うAnnuityはImmediate Annuity(Fixed Annuityとも言われる)という保険商品で、引退後にリタイアメント資金の一部と手数料を保険会社に渡し、保険会社から自分が死ぬまで毎年もしくは毎月一定額のお金を受け取るという契約で、言わば個人年金のようなもの。料金を払ったりレートを妥協すれば、受け取る額にインフレ調整を加えたり、また配偶者が死ぬまで同様にお金を受け取るような契約も可能。

現在60歳の人向けのAnnuityのレートは6%程で、4%ルールよりはかなり良い。でも、こういったレートや%も将来の金利・株リターン、寿命統計などで変わってくるかもしれませんが。

一度Annuityに入ると、自分・配偶者共に早死にしても、大抵の場合お金は返って来ません。長生きするほどに得する仕組み。Annuityはインカム・ストリームを保障するだけでなく、一種の長命保険でもあります。歳を取ってお金の管理能力が衰えても、年金ようなお金の流れは比較的安全・便利。

Annuityを使えば、株リスクもを負うことも無く目的の安定したインカムが死ぬまで保証される。なら、皆がAnnuityに飛びつきそうなものなのに、現時点で実際にAnnuity契約をする人は意外に少ない。その理由は:

1.保険会社に多額のお金のコントロールを渡すことの心理的抵抗がある。契約翌週に癌宣告なんて受けたら悔やみそうだし。

2.契約は複雑だし、手数料も馬鹿にならないし、気が変わっても保険会社からお金を取り戻すのは大変。

3.保険会社破綻の不安(AIGの例もある)

4.子供・孫に資産を残したい人もいる

5.Annuityのインフレ調整はあまりうまく作用しない

企業・公務員年金をもらっている人達はケアフリーな老後を送っているし、他の人達も実際にAnnuityを契約してインカムを保障されてみると意外にハッピーになる人達が多いような気がします。でも、1の心理的バリアは結構強そう。

Annuityが一番有用なのは、ある程度リタイアメント資金を貯めたけど、それが死ぬまで持つかどうか不安がある人達(お金持ちは、子供に遺産残したいだろうし、株リスクも対処しやすい)。401Kなどの限られた資金を使ってリタイアするブーマー層に多そうなタイプ。

ということで、アドバイザー、プランナー、学者さんから果てはオバマ大統領に至るまで、そういう人達にAnnuityを薦める静かなキャンペーンが始まっている模様。もちろん商品を扱う保険会社や金融系会社も熱心(笑)。

http://www.morningstar.com/cover/videocenter.aspx?id=391029

http://www.nytimes.com/2010/01/30/your-money/annuities/30money.html

一般にAnnuityは開始時点の年齢が上がるほどに受けとる額も上がる。でも、実際の%は年齢だけでなく契約時点での保険数理・統計次第(寿命統計、市場リターン、金利など)で変わってきます。

リタイアと同時に入る人もいれば、リタイア後何年も待ってから人もいるし、一気に契約するのではなく、間隔を置いて複数の契約をする人もいる。リタイアメント資金の何割をAnnuityにするかも人それぞれ。Annuity契約には実に様々なヴァリエーションが存在する。

一方、介護資金やLong-term Care Insuranceが無く、Medicaidを利用した介護を利用するつもりの場合(これはミドルクラスでも頻繁にあるケース)、早期にAnnuityに入ってしまうとMedicaidの加入資格が危うくなる可能性もあるので要注意。Annuity契約は、多少そういったリタイアメント・プランニングの柔軟性を低めるかもしれない。

皆さんなら、Immediate Annuity購入を考えて見ると思いますか?それとも、自分で資産管理したい派ですか?

リタイア後の引き出しに関する重要なポイントが良くまとまっていますね。私もAnnuityをうまく使って収入を確保できるのが良いと思いますが、バランスが難しいですよね。現時点ではAnnuity Laddering(ポピーさんが書かれた間隔を置いて複数の契約をすること)が有用な方法と思いますが、それもそのときの状況次第ですよね。

私がリタイアするときにどんな状況になっているかにもよりますが、今のところAnnuityを部分的に使うことを考えています。

問題なのは4%ルールにしても他の方法にしても、金融業界は統計的な確率を元にアドバイスをしているので、それが実際にどうなるかは分からないことです。95%の確率で何とかなると言われても、リーマンショックで100年に一度の不況(こういう言い方は正しくないですが、あえて言えば1/100の確率でしか起きない)の時にリタイアした人には意味がなかったわけです。

これと合わせて、「リタイア後の生活資金は、現役時代の何パーセントくらいと見積もるべきか」という点も個人差があって難しいですね。よく上げられるのは「現役時代の60%から80%」とかいう数字ですが、現役時代に収入の相当部分を貯蓄に回していた人なら、リタイアして貯蓄しなくなれば80%も必要ないでしょう。長年住んでローンは完済、買ったときより相当値上がりした持ち家を売って、住宅価格の安い地域、もしくは同じ土地で安い小さな家やコンドに引っ越す人と、まだローンの残っている家に住んでいる人、あるいはずっと賃貸だった人ではリタイア後に住居にかかる費用もずいぶん違います。

わたしもリタイア資金の一部はannuityにするつもりです。目安としては、最低限の生活費はsocial securityとannuityで賄う、それを越える部分は自分で運用する、くらいになればいいと思っています。Social securityの将来が懸念されていますが、今までこれだけ払ったものがゼロになるとは思えないので、支給額は減っても、支給されること自体は確実だと思っています。

医療費に関しては、無駄に高額医療を施されないよう、Medical Power of Attorneyなど、必要な手続きをしようと思っています。

KDさん、呼び捨てして御免なさい。

NOBUさん、F Friesさん、コメントありがとうございました。お二人ともAnnuityには前向き意見のようですね。

実は私自身まだAnnuityの概念に馴れていないので(私は何でも自分でやりたい・管理したい派)、皆さんのコメントは興味深かったです。

>NOBUさん
Annuity Ladderは、柔軟性+リスク管理+インフレ対策としてよく出てきますよね。個人ニーズに合わせたAnnuityの購入方法も色々知りたい所です。

シミュレーションは1929年のアメリカの大恐慌もデータに入っているはずですが、日本シナリオは入ってないと思います。アメリカは株信仰が強くて忘れがちですが、歴史に無いことも起こり得るんですよね。

>F Friesさん
(リタイア後の必要年収÷リタイア前の年収)の比率をIncome Replacement Rateというですが、年収、生活レベル、貯金率なんかで大きく違ってくるんですよね。リタイアメント資金目標額を決める時に、勝手に80%とか設定されると、時々とてつもない額が出てきたりする(一度フィデリティーで経験済み)。

私も「Social Securityがもらえなくなる」というのは極論だなぁと思ってます。受給者の年収・資産額で受給額にキャップが付いたり、受給資格年齢が少し上がったり、COLAが調整されたり、そういった微調整はあり得そうですが。

これからAnnuityを買う人が増えたら、色々経験談や教訓も出てくるだろうし、それにもレーダーを張っておきたいと思います。

ありがとうございました。

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