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キャピタルゲイン・ロス申告本格デビュー

筆者はふだんほとんど資産の売却をしないので、過去7回のアメリカ確定申告(tax return)において、キャピタルゲインやロスを報告する必要はほとんどなかった。せいぜいRSUやESPP関連の売却が数件ある程度で、これらについては1099-Bの内容を手入力する手間も大したことがなかったので、tax returnにおけるこれらの事務作業上の問題をあまり意識する必要はなかった(ただしRSUESPPとも、blogに書いたようにIRS規定に由来する罠はある)。しかし、2015年にはいろいろな事情が重なってかなりの件数の売却が発生したため、キャピタルゲイン・ロスについてのtax returnでの報告方法について、TaxActの操作方法も含めた実務上の細かい問題にいろいろ直面することになった。この記事はその学習結果のまとめである。

とくに重要な点をまとめておくと、

  • 取得日(date acquired)が異なる同一銘柄を同じ日にまとめて売却した場合は合算報告可能。これで事務処理をかなり軽減できる(可能性がある)
  • BasisがIRSに報告済みで、その他の修正もない場合はForm 8949での報告自体不要。これも事務処理軽減の助けになる(ただしTaxActでの操作方法はやや謎)
  • 多数の売却データをまとめてTaxActに入力するのにはCSVフォームのアップロードが便利。証券会社によってはこの形でデータをダウンロードできる場合もあるので要確認

それにしても、(今回はやや特殊要因という事情ではあるのだが)アメリカのtax returnも8回目にもなろうというのに、いまだに新しい発見が出てくることには呆れるしかないという感じである…

キャピタルゲイン・ロスの報告方法

Tax returnにおいて、キャピタルゲイン・ロスはSchedule Dというフォームで報告する。また、売買の状況によってはForm 8949でその明細を報告しないといけない場合もある。

よく知られているように、キャピタルゲイン・ロスの対象となる資産売却(transaction)はその資産の保有期間に応じてshort termとlong termの2つに大別される。また、Schedule DやForm 8949を見るとわかるように、これらのそれぞれについて、tax return上は以下の3つの分類があり、その組み合わせで合計6通りに分けられることになる:

  1. そのtransactionを記載したForm 1099-Bにおいて、basisがIRSに報告されたことになっているもの
  2. そのtransactionを記載したForm 1099-Bにおいて、basisがIRSに報告されたことになっていないもの
  3. Form 1099-Bでは報告されていないtransaction

3つ目については、金融資産では普通はほぼあり得ない気もするが、日本で保有している株式を売却した場合などはこれに該当するだろう。

Tax returnの事務手続きとして、原則的には、個々のtransactionがこの6分類のどれに該当するかを決定して、その明細(売買日、basisとproceeds、ゲインやロスの額など)をForm 8949に、また6分類のそれぞれの小計をSchedule Dに記載することになる。ただし、以下のように、複数のtransactionについてまとめて報告することで事務処理を簡略化できる場合がいくつかある。

まず、同一の資産でその取得日(date acquired)が異なるものを同じ日(date sold)に売却した場合(1099-Bでは別々のエントリで報告される場合もある)は、date acquiredを”various”として合算して報告することが認められている(Form 8949 instruction Line 1 Column(b)の説明参照)。ある程度長期に渡って積立投資した資産をまとめて売却するようなことは、頻繁ではなくてもそれなりに起こり得るだろうから、そのような場合にはこれによって事務処理の手間を大きく削減できる可能性もある(ただし実務上は、下記のように実際に申告に使うツールの詳細にもよるだろう)。なお、この方法を使う場合でも、保有期間の分類(short/long)が異なるtransactionは別々に報告する必要がある(もう一方の3分類が異なるものについての扱いは筆者には不明)。

一方、date soldの異なるtransactionについて、この日付を”various”として合算することは認められていない。IRS資料で明示的にこれを禁じている文献は見つけられなかったが、少なくともForm 8949のinstructionではdate acquiredの方で合算について明記されている一方でdate soldについては何も記載がない。また、とある非公式文献では不可だと断言している(さらにいうと、筆者が実際の作業で試してみたらTaxActでも不可と言われた)。

これらに加えて、以下の条件を満たす場合は集約したゲイン・ロスをSchedule Dに記載するだけでよく、Form 8949での個別の取引の明細報告は省略できる(Form 8949 instruction line 1のException 1参照)。

  • Form 1099-BでbasisがIRSに報告されていると記載されていて、adjustment(1g)がゼロ
  • 1099-B記載のlong/short termの区分やゲイン・ロスの額を修正する必要がない

また、Form 8949 instructionのException 2によれば、Form 8949相当の内容を添付する方法でForm 8949の提出の代わりとすることもできるようだ。この場合はたとえば1099-Bのコピーをそのまま添付したりすればいいのだろうか?ただいずれにせよ、これはefileの場合には使えそうにない手段なので、(なるべく郵送を避けたい)筆者としては深くは追求していない。

TaxActのインポート機能

上述の通り、筆者の過去のキャピタルゲイン・ロス申告では、transaction数が少なかったので、1099-Bの内容をもとに個々のtransactionの内容をTaxActに入力することで特別不便に感じていなかった。この場合は、”Federal”タブをクリックして出てくる一覧から、”Investment Income”、”Gain or loss on the sale of investments”、”Capital gain or loss”の順にリンクをクリックして”Investment Sales”のページに移り、そこで”New Copy of Federal Form 1099-B”を選んでtransactionを追加すればよい。TaxActの通常の流儀にしたがって、”Quick Entry”と”Step-by-Step Guidance”の2種類があるので、習熟度や好みに応じてどちらかを選ぶ(慣れていれば前者の方が作業量は少ないだろう)。

しかし、2015年の場合は(date acquiredを別個に数えるなら)100を超えるtransactionがあり、これをいつものやり方で一つ一つ処理していては年が明けてしまいそうだし、作業の途中でエラーが入り込む確率も高まりそうである。そこで、今回はtransactionのデータをまとめて取り込む機能をはじめて使うことにした。こうしたデータ取り込み機能としてもっとも便利で確実なのは、証券会社からオンラインで1099-B相当のデータを直接取り込んでtax returnに反映させるというものだろう。この分野はTaxActが他社に比べて弱いと言われていた(気がする)機能であるが、筆者にとってはこれまで絶対的な必要性がなく、またデータ取り込みのために証券会社のネットアクセスに使うパスワードを他の会社に開示するのも嫌だったため、使おうとしたこともなかった(正確にはTaxAct以前の某他社製品で一度試してみて、パスワードを聞かれたところで中止した)。

しかし、今年は必要性の点でやむなしという状況に至ってしまったため、改めてTaxActのデータ取り込み機能について調べてみた。この機能は、上記の”Gain or loss on the sale of investments”から”Stock data import”のリンクをクリックした先のページで提供されている(これを見つけるのは結構難しいと思う。この辺のユーザインタフェースもTaxActはやや弱い気がする)。インポートには二種類あり、一つは証券会社のデータを直接取り込むもの、もう一つはCSV形式のファイルをアップロードするというものである。

ただ、前者については、対応している証券会社のリスト(一部はhelpページに記載あり)があまりにも貧弱過ぎる。有名どころだと、VanguardもFidelityもEtradeもCharles Shwabも入っておらず、筆者が課税口座を持っている証券会社は結局一社も含まれていなかった。あまりの貧弱ぶりに、アコギなことで有名な某I社が金融機関に圧力をかけて他社へのインポートをさせなくしているんじゃないかとか勘ぐりたくなるほどである。ただし、TD Ameritradeの場合のヘルプからすると、もしかすると証券会社のパスワードを開示することなくデータだけ取り込むこともできるのかもしれない。もしこれで対応する証券会社が増えてくれるならありがたいのだが(ただし次に今回のような多数の売却をするのがいつになるかは不明)。

一方、CSVのインポート機能はまあまあ使える印象である。証券会社によってははじめから汎用スプレッドシート形式(CSVやXLSなど)での1099-Bのデータを提供しているところもある(たとえばFidelity)ので、そういう場合はそれをダウンロードしてTaxActが期待する形に整形してアップロードすればよい。CSVのデータを自分で作成しないといけない場合でも、コピーペーストなどで入力の手間を減らす余地はTaxActのアプリケーション内よりも大きいだろうし、小計などの計算も手元のスプレッドシート上で容易に確認できるから、入力ミスを減らす助けにもなるだろう。

TaxActのヘルプページにも書いてあるように、CSVの列としては以下が必須である:

  • Description
  • Date Acquired
  • Date Sold
  • Sales Proceeds
  • Cost or other basis

これらの名称(1行目)が正確にこの通りでないといけないのかはよくわからないのだが、筆者は一応指定された名前になるように設定した。ただし、capitalizeのポリシーが多少違っていても正しく認識されたので、多少のずれは許容されるような気がする。上記に加えて、”Reporting Category”の列も作っておくことがおすすめである。これはForm 8949(そしてSchedule D)を完成させるために必要な情報であるし、かなりの部分をコピーペーストで済ませられると思われるからである。一方、short/long termの区分など、必須項目から自動的に決められる値は省略しておいてよい(というよりも、手入力の場合はとくにミスを防ぐために省略する方がいいだろう)。

結果的に、transactionの多かった証券会社からはスプレッドシートデータがダウンロードできたということもあり、うんざりするレベルの手作業は何とか避けて全データをアップロードすることができた。ただし、後から振り返ってみると、このうちのかなりの部分はdate soldが同一日の同一銘柄であったため、date acquiredを”various”として集約したデータにしていれば作業量をもっと大幅に削減できた可能性もある。

一方、いまもって若干謎なのは、前の項で書いた「Form 8949での報告が免除される場合」のtransactionについてTaxActでどのように入力するのがいいのかということである。TaxActではSchedule Dを直接編集することは(筆者の見る限りでは)できず、必ずForm 1099-Bの内容を入力(またはアップロード)する必要がある。その結果、Form 8949での報告が必要ないものについてはTaxActが自動的にそれを判断してSchedule Dのみへの記載にするようなのだが、ここで困るのはdate soldがまちまちなtransactionが多数ある場合である。前述のとおり、date soldを”various”にすると文句を言われるし(それが正しいのだが)、これらのデータをCSV形式で用意するのも面倒である。Date soldの日付を特定の一日に揃えた上で合算データを1099-B形式で入力するという方法が考えられなくもない(cheatしていることになるが、結局date soldを含めForm 8949での報告は省略されるので申告書類としては問題ないはず、ただしshort/long termは正しく分けておかないといけない)が、印刷して紙で提出する場合はともかく、efileだと入力内容のどの部分が実際に送信されているのかはっきりとはわからないのでやや不安である。結局、筆者の今回の場合に限っていえば、たまたまこのデータについてはスプレッドシート形式でのダウンロードが可能だったため、それをCSVに直してアップロードするという形で比較的手間がかからずに済んだのだが、一般の場合でも個別のtransactionの報告が必要ないことがわかっているのだから、それに則した入力方法を用意してほしいものである。

ところで、某I社の製品ではCSVやODP、XLSといった汎用スプレッドシート形式のデータを直接読み込ませることはできないようだ(Q&Aページより)。この点では標準かつ扱いやすいフォーマットであるCSVをサポートしているTaxActの方が使い勝手がいいといえる。まあI社の場合金融機関からの直接インポートが優れているようなのでこういう需要自体があまりないということかもしれないが。