401k(など)最強拠出戦略 2022年版

jinmei 2022/03/25(金) - 19:38

2021年に個人的な事情にいろいろと変化が起きた結果、各種税優遇口座への拠出枠が増えた割に所得は減りそうな一方、2022年限りの特殊事情もあり、拠出戦略を含む資金繰りをかなり精密に考えないといけないということがわかってきた。(2021年を除き)これまでは優遇口座への拠出を何も考えずにどんどんmaxoutしていてもキャッシュフローに問題が出たり優遇枠を有効に使えずに終わるような事故を起こしたりすることも少なかった(ないとは言わないが)のだが、今年(から)はいままで以上の精密さが要求されそうである。
そこで、以前作成した「401(k)(自称)最強拠出戦略」を抜本的に改定した。改訂版戦略は、401(k)にとどまらず、その他の優遇口座への拠出や、日常生活費のためのキャッシュフロー、税金の源泉徴収額の調整なども統合したプランになっている(したがって、「など」がついている)。以下ではその詳細について説明し、さらにその戦略を実行するためのツールとなるスプレッドシートについても述べる。

2022年版(自称)最強拠出戦略
タイトルでは「拠出戦略」と書いているが、より正確には税金等の天引き額の調整を含む給料からの資金繰り戦略ということになる。
冒頭で述べた「2022年限りの特殊事情」のうち、この戦略に大きな影響を与えているのは以下の2点である:

  • (Mega含む)Backdoor Rothが廃止になるかもしれないこと(たとえばこの記事参照)。最悪のシナリオは今後年内に議会が廃止法案を通し、しかもそれを年初に遡って適用した上で、すでに実施してしまったbackdoorのキャンセルも認めない、というものだが、絶対とは言えないまでもこの可能性は無視できそうだ(百万が一起きたとしても多少のペナルティを払うくらいで済むだろう)。その次に悪いシナリオは、年の途中で廃止法案が通り、それ以降のbackdoorが不可能になるというもの。世の中の大方の見方と同じく、そもそも法案がどんな形であれ成立する可能性自体がかなり低いように筆者には思えるが、この「次悪」のシナリオも考えるなら、むしろ早めにbackdoorを通ってしまうのがよいということになる。例年であれば、手取りをより有効に増やせるdeductibleな拠出枠を先に埋める方が一般的に得なはずだが、今年は例外である。
  • 別なblogでも触れたとおり、2021年の所得と確定税額が少なかったせいで、今年はsafe harbor入りのために給与からの源泉徴収額を増やす必要がなさそうである。その分のお金をなるべく有効に使う必要がある(2023年4月には税金として払わなければいけないので浪費はできない)。

さて、「最強」戦略の概要は以下のようになる:

  1. 生活費は毎回の給料から確保する。とりあえず貯金を取り崩しておいて年の後半で帳尻を合わすこともできそうで、その方が資金効率的にはいいだろうが、万一仕事を失ったりしたときに慌てないためにもここは最善の効率を求めずに保守的にする。
  2. Backdoor Roth IRAは一時リバランス(つまり現有資産の取り崩し)で早いうちに実施する。1つ前の方針と矛盾するようだが、金額がそれほど大きくないので取り崩しのリスクは低いし、万一年の途中で「成立後は不可」の形で廃止法案が通ってしまうリスクに備えて前倒しする(というか、このblog執筆時点で実施済み)
  3. 前項と同様の趣旨で、after-tax 401(k)経由のmega backdoor Rothは生活費に支障が出ない範囲で前倒しで実施する。
  4. pre-tax 401(k)は、当面はmatchを取るのに必要な額だけ拠出。After-tax拠出が完了したら、年末までmatchを取り続けられる範囲内でなるべく早くmaxoutする。秋に出るボーナス額依存ながら、これで十分maxoutできるはずだが、もし業績悪化などでボーナスが激減しそうなどの事情があれば、年の途中でafter-tax拠出より優先することも考える。
  5. HSA(今年から数年ぶりにHDHPの健康保険に加入したのでまた拠出できるようになった)には毎回の給料から均等に拠出。以前は年初のうちに一年分をまとめて拠出していたが、今年は、上記3項を考えると年初もしくは年の前半にmaxoutするだけの余力がないということと、失転職などで拠出資格を失う月ができてしまう場合のリスクもあることから、無難に均等拠出とする。
  6. 所得税天引きの増額はしない(上述の通り)。

拠出と天引き額計算用スプレッドシート
前回の「(自称)最強拠出戦略」blog記事の時点でも、戦略遂行のためにスプレッドシートで緻密に拠出額を管理していたが、上記の通り、401(k)以外の拠出や生活費も含めた全体の資金繰り戦略の遂行にあたっては、このときよりもさらに精密な管理が必要になる。そのため、401(k)専用だった前回バージョンを抜本的に改定し、各種天引き額やFSA、HSAへの拠出なども含めた総合的なスプレッドシートを作成した。前回に倣い、今回のバージョンも参照用のテンプレートを公開している。
以下、将来の自分自身用のマニュアルという意味も含めて、シートの使い方を詳細に説明する。説明を具体的にするため、テンプレートには架空の具体例に基づいた値がすでに記入されている。この値を用いたシートの利用例は次節で紹介する。
下方にある緑色のセルには天引き額に影響する諸制度のパラメータ(通常毎年変わる)を入力する。このうち、もっとも重要なのは天引きの計算に用いる税率表である。連邦所得税用には、IRS Pub 15-Tの”Percentage Method Tables for Automated Payroll Systems”の項に記載の表から、Californiaの州所得税用にはEDD発行の天引きスケジュール(2022年版PDF)から、それぞれ転記する。
テンプレートにおいては、連邦所得税用にはfiling statusがmarried jointly用で、W-4が2020年度(以降)版である場合のデータを使っている。Californiaの州所得税用には、共働き(dual income)で子供が一人いる場合の世帯で高給の方の配偶者(したがって3 allowanceになる)で月2回の給料日がある場合のデータを使っている。当然ながら、独身の場合や、既婚でもsingle incomeの場合、子供が複数いる場合、古いバージョンのW-4を使っている場合など、条件が異なる場合はそれぞれに応じたデータに変更する必要がある。
ボーナスの源泉徴収額は通常の給与とは計算方式が異なる(以前のblog参照)。筆者の勤め先はflat rate方式を採用しているので、このテンプレートでもその方式にのみ対応している。これが”Flat tax rate for bonus”で、連邦、Californiaともこの数年変わっていない。
なお、RSU、ESPP、stock optionといった、株式ベースの報酬についても対応すべきだろうが、筆者の勤め先が非上場になって以来これらと縁遠くなり、天引き額の計算方法などについても調べていないので割愛している。
所得税の天引き用テーブル以外に、手取りに影響するいくつかの値も指定する必要がある。”SS wage limit”はsocial security tax用のmaximum taxable earnings。毎年の値はSSAのサイトに掲載されている。401(k)に関する各種上限値はIRSが毎年公表している。なお、50歳以上にはcatch-up contributionが認められているので、拠出上限額(pre-taxおよびtotal)はその分だけ上乗せする必要がある。Californiaに関するものでは、State Disability Insurance(SDI) taxの上限値とrate、および天引き時点での控除額がある。SDIに関する値はEDDの資料に記載されている。天引き時の控除額は上記天引きスケジュールに記載されている。
水色にマークされた見出しの行には、個人ごとの状況に応じた所得や拠出などの金額を記入する。原理的には毎回の給料日ごとに異なる可能性があるので、給料日の日数分入力が必要という体裁になっているが、名目給与額など、現実的には一定期間(もしくは年間を通じて)固定である項目が多いだろうから、そのような部分をコピーで済ませれば入力の手間はそれほど大きくはないだろう。

  • Gross Salary: 税金や拠出などの天引きがある前の名目給与の額
  • 401(k)関連: pre-taxおよびafter-tax 401(k)の拠出(予定)額を名目給与に対する割合で指定する。筆者の現在のプランでは、金額の絶対値での指定ができないため割合で指定して絶対値は自動計算するようになっているが、絶対値で指定可能なプランの場合は直接その値を入力すればよい(rateの値は他では使われない)
  • Other wage: 勤め先独自のbenefitのpointなど、税金処理上は賃金扱いだが現金でもらうのではない所得
  • HSAとFSA: HSAを分けているのは、Californiaで控除対象にならないことと、(年度内の使い切りが前提のFSAと違い)HSAを運用口座として使う場合があることによる。
  • Other deduction: 健康保険premiumの従業員負担分など、所得税控除の対象となる天引き項目
  • Credit per pay: child tax credit分に対応する天引きからの税額控除。W-4のstep 3に記載した値を”# of pay periods”で割ったもの
  • Fed/CA adjustment: 天引き額を自主的に増やしている場合にその値を入れる
  • Benefits: 雇用者支払いの生命保険premiumなど、課税対象所得扱いになるbenefit類。なお、筆者自信のケースではこの額は天引き時点では反映されない(tax return用のW-2ではwageに含まれる)ので、このシートでもそのように扱っている。
  • After-tax deduction: after taxで支払う障害者保険のpremiumなど、給料から引かれているが税金の計算には影響しない値を入れる
  • # of pay periods: 年間の給料日の回数(通常の給料のみ、ボーナスなどは除く)。給料日が月1回なら12、2回なら24になる。なお、より正確には、IRS Pub 15-Tのworksheet 1Aに記載されている表に従うのだが、この場合、週1回のような支払い形式の場合は表の値(52)と実際の回数(52または53)にずれが出る可能性がある。

これらの値と、緑色のセルに入力したパラメータから、毎回の給料日とボーナス支給日(Dateの行)ごとの各種天引き額、そして最終的な手取りが自動計算される。”Final Fed/CA WH”が連邦および州それぞれの所得税天引き額、”SS tax”以下の4行が各種payroll tax、”Net wage”が手取り額になる。なお、テンプレートの例では、4月14日(列I)と10月14日(列V)がそれぞれボーナス支給日となっている。
“401k match”の行は、文字通り401(k)のmatch(雇用者拠出)額である。ここも自動計算されるのだが、matchのルールはプランごとにかなり違いがあって一般化するのが難しいので、単純に現在の筆者の勤め先のプラン(名目給与の3%を上限として拠出額の100%をmatch)用の設定になっている。この行の中身は実際には各プランの条件に応じて変える必要がある。なお、名目給与が”401k compensation limit”(2022年では$305,000)を超える場合、matchの対象になる給与額はこのlimitが上限となる(これはIRSの規定なのでプランには依存しない)。”401k match”の行はこのlimitも考慮しており、その部分についてはプランの条件に関わらず維持する必要がある。
右端の”Summary”の列には主な行の年間の合計額の他、以下の参考情報が記載されている:

  • 401k totalとexcess contribution: 401kのpre-tax, after-tax, matchの合計と、それと”401k total limit”との差分。後者が0より大きいと面倒な修正処理が必要になるので、そうならないように拠出額を調整する必要がある。
  • Tax owe: 連邦とカリフォルニアの所得税額の見積もり合計と天引き額との差分、すなわちtax return時に支払うことになる金額。前者は見積もりツールなどを使って別途計算した値をセルにて入力する。
  • Available: 生活費や(401k以外の)資産運用に使える金額。”tax owe”の金額はここから除かれている。一方、FSAへの拠出額は生活費の一部として使うと想定してここに足されている。HSAへの拠出額は運用に使うと仮定しており、ここでは含めていないが、「真っ当」に当年の医療費として使うのであれば足すことになる。

“Available”なお金の運用先は、普通の課税口座におけるfundや株式などに加えて、IRAのような401(k)以外のリタイアメント口座への拠出、とくに子供のいる家庭であれば529 fundへの拠出などが考えられる。
スプレッドシートのcase study
所得税の計算用スプレッドシートの場合と同様、公開版の天引き計算テンプレートには、架空の夫婦(Alice & Bob)の場合の架空の数字を実際に入れてある。今回の設定は以下のようなもの:

  • Aliceはまずまず高給な会社員で、所得のほとんどが給与。課税口座での運用所得はほとんどない
  • Bobは不定期にcontractorとして働き、僅かなearned income($5000ほど)がある他、熱心な投機家で、毎年それなりの額の運用所得(数万ドル程度)がある。
  • 夫婦には子供が一人いて、二人共が働いている間はデイケアに預けている
  • 世帯の生活費は一月$6000(San Joseの4人家族の生活費例を参考に設定)

Aliceについてのその他の条件で、ここでの試算に関係する部分の詳細は以下の通り:

  • 基本給が年俸$192Kで月2回(14,28日)払い。その20%のボーナスが4月と10月の2回に分けて(それぞれ年俸の10%)支給される
  • 勤め先の401(k)ではafter-tax拠出からのmega backdoor Rothが可能。雇用者拠出(match)は給与の3%まで、拠出額の100%がmatchされる。これらをmax outすることを目指す
  • 健康保険には家族まとめてAliceの勤め先のHSA対応プランで加入。HSAにはその場合の満額(2022年で$7300)拠出可能で、max outを目指す。
  • 勤め先にDependent care FSAのプランがあり、デイケア費用に充当するため満額($5000)拠出。(なお、Bobに$5000のearned incomeがあるという設定は、この拠出額を所得税の控除に使えることにするためである)
  • 健康保険premiumの従業員負担と勤め先負担の生命保険premium、after-taxでの障害者保険premiumがそれぞれ給料日あたり$150、$50、$50(筆者の場合の実例を参考にしつつ決めた適当な値で、深い意味はない)
  • 生活費はすべてAliceの給与で賄う(Bobの運用益は再投資する)

以上の条件をもとに、冒頭で述べた「(自称)最強」の資金繰り戦略を実現するための拠出・天引き計画がテンプレートに実際に記入されている。名目給与の額をはじめ、ほとんどの項目は上記の条件からすでに確定しており、HSAとFSAへの拠出も均等にすることとすれば、決めなければいけないの401(k)への拠出割合だけである。テンプレートの例では、毎月約$7000(見込み月額生活費に$1000の余裕を持たせた値)の手取りが残るようにしつつ、戦略の3項と4項を満たすようにpre, after-tax 401(k)への拠出比率をそれぞれ決定している。なお、ボーナス支給日の4月14日には通常の給与も支払われるため、この合計の手取りが約$3500になるようにafter-tax 401(k)への拠出比率を決定している。
2回あるボーナス支給日におけるpre/after tax 401(k)への拠出比率は、ボーナスと通常給与で同じになっているが、これはたまたま筆者のプランがこのような制約を持っているのに合わせただけで、より柔軟に指定できるのであれば変えていても構わない。
pre-tax 401(k)をmax outするという前提では、matchの金額も自動的に決まり、totalの上限を超えない範囲でafter tax 401(k)に拠出できる金額もそこから決まる。Aliceの例ではこれは$33,588になる。
テンプレートの例では、まずは生活費を捻出できる範囲でpre-taxにはmatchを満額取るための最低額を拠出し、残りは可能な限りafter-tax 401(k)に拠出する。8月28日にafter-taxへの拠出が上限に達するので、それ以降はまずmatchを年末まで満額取れるようにしながらできるだけ多く拠出していき、max outに近づいたところで再びmatchに必要な分だけを拠出、最後に帳尻を合わせてmax outに到達する。
なお、この例では基本給・ボーナスともにその金額が年初に確定していると想定しているが、実際には、とくにボーナスは変動があり得るだろうし、年の途中で昇給(あるいは稀だろうが減給)がある場合もあるだろう。ボーナスが想定より多かったり昇給があったりすると年末を待たずにmax outに到達してmatchを取りそこねたり、この例のようにafter-taxを先にmaxoutすることを狙っていると、もらえるはずのmatchがtotal limitのせいでもらえなかったりといった事故が起こる可能性がある。そのため、実際には年末あたりで調整できるような遊びを多少持たせておいて、401(k)対象の給与の額が完全に確定した段階で最後の調整をすることが望ましいだろう。
Safe harbor入りのためには、2022年の所得税額が必要になる。このテンプレートでは、別テンプレートで見積もり税額を計算し、safe harbor条件を満たせるように年の終盤(10/28以降)に連邦分の天引き額を増額している(17行)。なお、この例の場合では州所得税の天引き額を増額する必要は生じていない(むしろ還付見込みとなっている)。
この計画にしたがった場合の”Summary”を確認すると、401(k)拠出は$68を残して実質的にmax outできており、過剰拠出にはなっていない。所得税の未払い見込み分は約$1800、これを差し引いた「手取り」は約$101Kとなる。ここから生活費見込額の$72K($6K ✕ 12ヶ月)を引いた$29Kが運用その他に充当できる金額ということになる(厳密にはBobの$5000のearned incomeからの手取りも加わるのでこれよりさらに少し増える)。筆者の戦略に倣うなら、ここからまずIRAに満額拠出(Bobのspousal IRAも含めて$12K)し、残り約$17Kは世帯の考え方次第でI Savings Bond、(子供がいるので)529 fund、または普通の課税口座などの運用に回し、さらに一部は生活費外の休暇などにも使うことになるだろう。

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