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州税還付とAMTとNIITの微妙な関係

以前のblogで、AMT適用になった年の申告で州所得税の還付を受けると翌年二重課税になり兼ねないという問題について考えた。このblogを書いた2017年春の申告(2016年分)は結局還付が出なかったため、そこでの心配も無用であったのだが、2018年春の申告(2017年分)では、AMTとitemized deductionと州所得税還付という条件が揃ってしまい、今回(2018年分)の申告で改めてこの問題を考えることになった。

2017年のblogでは、「どういう場合に違いが出る可能性があるのか、筆者はすぐには思いつかない」と書いていたが、改めて考えてみると、「還付がなかったとした場合に結果としてitemized deductionの額が減り、その結果として本来はAMT適用を免れたはずだった」という場合には違いが出て還付分の一部が課税対象となり得ることに気がついた。現実的には、還付額がよほど大きくない限りはこのような逆転は起きないだろうと思うが、理屈の上ではあり得なくはない。

そしてさらに、当時はまったく考慮に入れていなかった点で還付金が課税対象になり得ることにも気がついた。Net Investment Income Tax (NIIT)で州所得税の控除を受けていた場合である。

NIITは、一定以上の所得がある納税者に対して投資所得(利子・配当・キャピタルゲインなど)に3.8%分の税金を上乗せするというもの。複雑な制度の中に紛れてこっそり増税している点、「一定以上」の条件が物価に追随していない点(AMTで学んだはずの教訓がまったく活かされていない)、庶民の貯蓄意欲に水を差しかねない点、などにより凶悪なアメリカ税制の中でも悪質な税金の典型である。共和党も、税制を簡素化すると謳って減税法案を作るならNIITこそ標的にしてほしかったのだが…。

NIITの増税分はForm 8960というフォームで計算して申告する。その際、通常の税金計算においてitemized deductionとして州所得税を控除していた場合は、そのうち投資所得への課税に相当する分をNIIT用の控除としても差し引けることになっている(Form 8960 instructionのline 9bの説明参照)。

ここで、通常の税金計算ではAMTが適用されて州所得税が控除できなくなることがあり得るが、それはNIITの投資所得計算には影響しない。このことは、Form 8960 instructionを読んでもずばりとは書いていない(ように見受けられる)のだが、たとえばReasonable method allocationsの説明において、


State, local, and foreign income taxes if properly deducted on your return when calculating your U.S. regular income tax.

のように、”regular income tax”と記載されているところから窺えるし、deduction recoveriesの項において


the deductibility of state income taxes for NIIT is independent of the taxes for alternative minimum tax purposes.

とあることからも確かであろう。さらに言えば、実は筆者は当初この場合に州所得税の控除が請求できることを理解しておらず、後からこの部分だけを修正したamend returnを出している。それに対してIRSから何の文句も言われていないということから考えても、AMTとNIITの控除の条件は独立という解釈が正しいと言っていいだろう。

さて、このような形で州所得税(の一部)に対する控除を受け、その後州からの還付があった場合、その効果は翌年の申告のForm 8960で”deduction recovery”として埋め合わせることになる。この際、Form 8960 instruction(上記リンク)に記載の通り、たとえ通常の税金でAMTが適用されて州所得税の控除がなくなっていたとしても、NIITの計算においてはdeduction recoveryが必要になる。したがって、NIITの支払いが必要である限り、州所得税の還付があれば(AMT適用の有無に関わらず)翌年の申告で還付分の税金処理が必要になる。

筆者の場合、ここ数年そもそも州所得税の還付がなかったので気にすることもなかったのだが、今回の申告では危うくこの点を見落とすところであった。前回のblogにも書いたことだが、州所得税の還付があった場合に、それが課税対象所得になるのか、なるとして還付額のどの部分までが課税されるのかの判断については、申告用ソフトウェアの対応もかなり不親切であり、納税者側がかなり気をつけていないと無用に課税されたり申告漏れになったりし兼ねないのではないだろうか。

もっとも、NIITのdeduction recoveryについては、たとえ見落として申告漏れになったとしても、IRSから指摘を受けて追徴されたりすることはあまりなかったりするのかもしれない。まず第一に、州所得税のうちNIITの控除部分に用いる”Reasonable method allocation”にある程度の恣意性があるので、還付があったとしてもその結果自動的に課税額が増えるとも言い切れないように思われる。少なくとも人手による監査対象にでもならない限りは指摘されないのではないだろうか。第二に、還付による最終的な税金額への効果はかなり小さいだろうということがある。還付金が税額に与える影響は、「還付金の額✕NIIT用の”reasonable allocation”の割合✕3.8%」なので、たとえば還付金が$1000、全所得のうちの投資所得が1割でそれを”reasonable allocation”とみなしたとすれば、その金額は高々$3.80である(筆者自身の場合では$1であった)。一般的に、数ドル程度の誤差ならIRSは大目に見るというような噂もあるし、この程度の金額が申告書から漏れていても現実に指摘を受けることはないというのもありえそうである(言うまでもないが、筆者がそれを保証するものではない)。

さらにいえば、今後はこの問題ももっと根本的なレベルで無関係になりそうだ。Tax reformの結果として、ほとんどの場合には通常の税金計算において州所得税の控除を請求すること自体がなくなりそうだからである。結果的に、他の国ではもちろんアメリカ内でさえももはや無用となった知識をまたしてもムダに習得することになってしまった…。