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為にならないオプションの話 (3) 詐欺的商品

(このポストはOption取引を推奨するものではありません)
(またオプション市場は株/先物と違い完全ゼロサムでマネーゲームの場ですから、「興味をひかせる/誘ってる文言」=「カモを探している」が基本です!気を付けてください! 笑)
(通りすがりは市場関係者とか投資で生計を建ててるとかではありません。超絶素人ですので眉唾で読んでください)

今回はOptionを使ってる詐欺(的)商品のお話。
いや正直詐欺だと明言してもいいと思うんですけどね。一応「的」商品。

その前にVanilla OptionとExotic Optionという用語の説明をしておきます。

通常普通に市場で売買されているオプションはVanilla Optionと呼ばれます。
それとは別にExotic Optionと呼ばれる、読んで字のごとく「風変わりな」Optionがあります。
これらは特殊なルールが組み込まれているOptionで、たまに見聞きするバイナリーオプションなんてのがそれの一つです。

通常のオプション(Vanilla)は「原資産」、「期日(限月)」、「権利行使価格」、「Put/Call」で構成されているdelivertive商品ですが、Exotic Optionは、それに加えて「バリアー価格」といった物が構成要素として存在します。
例えば「バリアー価格に到達するとオプションが有効になる/無効になる」なんてのは、まんまバリアーオプション(Barrier Exotic Option)。
他にも「バリアー価格に到達すると価値をもつようになる/価値がなくなる」、バイナリーオプション(Binary Option)なんてのもあります。

たとえばBarrier Optionの場合、
- バリアー価格に到達するまでは普通のオプションだけど、バリアーにヒットしたらオプションは消滅 : Knock-out Option
- バリアー価格に到達するとオプションが発生するけど、ヒットするまでは無価値 : Knock-in Option
という2種類があります。
その上で通常オプション同様 原資産が固定されていて、期日があって、権利行使価格とPut/Callが存在する状態です。

例えばS&P500の2017年8月18日を期日とする、権利行使価格2450のPut、バリアーは2400なんていうKnock-in Optionの場合、S&P500が来週金曜までに2400に到達しなければゴミクズ、到達した瞬間にSPY Aug18'17 2450Pになります。もちろん期日超えたらゴミクズなのも同様。

これを金融商品として売り出しているものが日本にはあります。
「日経平均リンク債」
債権みたいな名前が突いていますが中身はKnock-in Exotic OptionのPutの「売り」です。
もう銀行預金とか0%といって差し支えないぐらいの低金利、日経平均なんてずーっとヨコヨコの日本で、APY 3%~5%とかぐらいを謳ってる金融商品です。

Knock-in Optionの売りなので、通常Optionの売りと同様、利益先受け状態なのですが通常の売出しは
「日経平均が◯◯円以上なら、利回り△%で年×回の利払い。ノックイン価格に到達した場合は日経平均に連動」
なんていう売り出し文句となります。

例えば今n225は20,000円ぐらいをウロウロしていますが、
「2018/8月/◯日 満期 年率3.00%、ノックイン価格16,000円。年4回利払い」
「満期償還日までにノックイン事由が発生しなかった場合は、額面金額100%の償還」
「満期償還日までにノックイン事由が発生した場合は、額面金額x(償還日日経平均株価 / 売り出し日日経平均株価)の償還。ただし額面金額は上回らないし0を下回らない」
みたいな感じで売られます。

利払いだの償還だの言っていますが、中身はExotic Knock-in OptionのPut売りです。しかも自分でClose(買い戻し)が出来ないOptionの売り。

20%下とか、そうそう無いんじゃないかと思ったりしちゃうことがあるかもしれませんが、「一回でもタッチしたら」下には日経平均連動するくせに、上は額面金額まで(なのでどんだけ日経平均があがろうが利払い受けだけが利益)という糞商品。

実際去年の頭ぐらいにリンク債がノックインしまくって阿鼻叫喚だったりしてましたよ。
例えば https://zuuonline.com/archives/97535 なんかに書かれていますね。
2007年~2008年もリンク債がノックインしまくっていました。

市場の下げでの損は致し方ない、でも普通には逃げれない(債権扱いで売ってるのでペナルティ払わないと解約できない)上に、下には無限追従、上は額面で天井とかありえない。
普通に考えれば資金投入とかあり得ない商品なのに、日本では大いに売れてたりします。どんだけ金融リテラシーが低いのか。商品先物の発明国なのに。

こういう「なんかよくわからないけど、すごいっぽい」みたいな商品は中身が何であるかをよ~く確かめてから手を出す癖をつけましょうね。
exotic optionを組み込んだ、しかもshort(売り)のみの商品なんてとてもじゃないけど怖くて手出せないのが普通です(笑
そもそも、このタイプのstructured productは(私が昔確認した限りでは)アメリカでは規制で売り出せませんけどね。

ちなみに余談ですが、このknock-in exotic optionを普通に買えるのか?といったら普通に市場では買えません。
(binary exotic optionは変えたりしますけどね、バイナリーオプション専門ブローカーが存在します。もちろん資金投入する価値はありません)
じゃあリンク債の運用サイドはどうしているのか?というと、「該当Put Optionを買った事にしてる」だけです。
売買は常に買い手と売り手が居て初めて成立するものです。
このリンク債の場合、顧客はPutの売り手です。運用サイドは買い手とならなくてはなりません。
普通には売っていないoptionの買い手はどうやって買うかというと、先物で模倣します。

Optionはブラック・ショールズ式を通すとGreeksという指標(デルタ、ガンマ、セータ、ベガ)が出せます。
この内デルタは「原資産が1円($1)動いた時のオプションの価値の動き」です。
Put Optionの場合、原資産が1円($1)上がったら価値は下がりますから、マイナスの値が出てきます(デルタマイナス)。
デルタが0とはどういうことかというと、原資産が上がろうが下がろうが、そのポジションの価値に変更が無い事です。

したがって運用サイドは、「Put Optionを買ったことにしている」ために発生するデルタマイナスを打ち消すようにdelta 1.0(原資産が1円動くと、同じく1円価値があがる)の先物を必要数買い建てて、トータルポジションのデルタを0にするように、随時運用していきます。

これをdelta neutral strategy(delta hedge)といいます。

このdelta hedgeで運用サイドは原資産の値動きに対してニュートラルなポジションとなるので、安全に手数料だけを美味しく頂くことが出来るようになります。「商品売った後は顧客の利益なんてかんけーね~」なわけですね(笑

delta neutralの手法は、個人レベルでも重要です。

一旦利益になるポジションを作った後、機械的にdeltaを0にしていれば、利益を守ることができます。
例えばOptionの売りを入れた後、deltaを0にするように現物や先物の売り/書いを入れていると最終的に売りによって得たプレミアムを期限まで死守できます。

もっともdeltaはvolatilityで変動しますから、今日deltaを0にしても、明日も0とはなりません。
よって頻繁に0に調整を続けないとうまく行きません。
また理論と実際は違うので、そうそうピッタリ0というわけにもいきません(笑
その上個人の場合はポジションの維持証拠金が必要なのもネックですね。