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恐怖の外国銀行口座報告(FBAR)ペナルティー

恐怖の外国銀行口座報告(FBAR)ペナルティー

米国に派遣されている日本人駐在員の方であれば、毎年確定申告に必要な情報と並んで「米国外の銀行口座」の存在・年間最高残高を報告するための情報収集をした経験があるだろう。結構面倒な作業であり、かつ2年前からは各口座の年間最高残高を金額幅ではなく、ドル額で報告しなくてはいけなくなり、より頭の痛い報告義務となっている。

この報告義務、実は税法ではなく「Bank Secrecy Act」という何か名前だけ聞いただけでチョッと怖い感じの別の法律で規定されるものだ。報告義務を管轄しているのもIRSではなく、FinCEN(Financial Crime Enforcement Network)と呼ばれるホワイトカラー犯罪を取り締まる、どちらかと言うとCIAとかFBIっぽいところだ。

*マネーランドリングからテロ資金対策まで

Bank Secrecy Actおよび米国外銀行口座開示義務は30年以上も前から存在する。しかし、余り注目されることのなかった開示義務が息を吹き返したのは2001年の同時テロの辺りからだ。

もともとマネー・ランドリングを取り締まる目的で規定されている米国外銀行口座開示義務であるが、テロ資金が多くのケースでアングラマネーを原資としているという懸念から、対テロの観点からオフショア口座の状況を把握したいという緊急のニーズが出てきたからだ。

当時、財務省が報告義務の実態について議会に報告するように命じられて調査したところ、ナンと過去30年で未報告のペナルティーが課されたのは「たったの」2件であったことが分かる。すなわち、報告義務は法律上規定されているものの実質何の施行もされていなかったことになる。

2001年に法律化された「USA Patriot Act」で報告義務が強化されると同時にFinCENの力も拡大された。その後、2004年の「American Job Creation Act」で未報告に対するペナルティー規定が大幅に強化された。

米国外の口座開示そのものに関して特に税金は発生する訳ではないが、未報告に対しては$10,000の罰金、意図的な隠蔽に関しては$100,000または「銀行口座の最高残高50%」どちらか低い額の罰金が規定されている。

*スイス銀行問題

このFBARが近年さらに注目を集めているのは米国市民の金持ちがスイス銀行のような匿名口座に資金をプールしている例が後を絶たないからだ。

米国財務省はスイス銀行に法的措置を取り、スイスの内国法で規定されている「銀行秘匿義務」を無視して、匿名口座を利用している米国市民名のリストを提出させてしまった。スイス銀行に対するこの高圧的なアプローチだが、実は米国が自分のことは棚に上げて一方的に他人に厳しく当たっているという側面がある。この点に関しては2009年8月25日にポスティングした「スイス銀行匿名口座と米国の二枚舌」を参照して欲しい。

匿名口座を利用して資金を隠して脱税している人が「僕はスイスに銀行口座を持っています」という米国外口座の開示報告をしている訳がない。したがって、今回のスイス銀行との法的措置でスイスに隠し口座を持っていると身元がばれた米国市民は、匿名口座に眠るお金の出所となる所得、また口座の資金から発生する投資所得に課税追徴されるばかりでなく、口座未報告のペナルティーも課せられることとなる。

この程もカリフォルニアの裁判所で米国での事業所得約1億円をスイス銀行の匿名口座に隠していたビジネスマンに対するペナルティーが言い渡された。このケースでは2003年から2008年まで香港法人の名前で開設されていたスイス銀行口座が利用されていた。

香港法人は株主・取締役共に「名義人」(信託契約を利用し、実際のオーナーの名前は公にならない)で設立することができるため、例えスイス銀行口座のオーナーが明らかになってもそれだけでは本当の持ち主を特定することができない。

今回のケースではIRSに対する租税回避ペナルティーと並んで、銀行口座報告違反で2003年から2008年までの最高残高に対して50%のペナルティーを支払うことになった。これらのペナルティーを支払うという条件で6ヶ月の自宅謹慎、3年の執行猶予の判決が言い渡されている。

銀行口座の開示を怠るだけで潜在的に残高の半分がなくなってしまうとなると、これはかなり恐ろしい規定だ。