メインコンテンツに移動

かなり強力「Closing Tax Loopholes Act」(4)

Max Hata
前回までのポスティングでは国際課税の改正草案「Closing Tax Loopholes Act」に関して、中でも辛口の規定が提案されている外国税額控除の濫用への対抗策を中心に触れた。草案発表当時は今にも法律化される、という勢いであったがここに来て法案の行方は定かでなくなってきている感がある。いずれにしても何らかの法律化が実現すると思われるので、前回まで特集している外国企業を買収した際の米国税務目的でのステップアップ、その結果達成される「人工的なHigh Tax Pool」の話しを続ける。ステップアップを達成する代表的な手法としてSec.338に触れたが、今回は法案で「Covered Asset Acquisition」として規制の対象となりそうな他の二つの取引に関して触れる。

*Check-the-Boxを利用したステップアップ

1990年代後半に財務省が「Check-the-Box」と言う実に納税者フレンドリーで弾力性に富む規定を発表した際、この規定がどれだけ多くの国際税務プラニングに寄与するか予想していただろうか?Subpart F規定の適用回避にCheck-the-Box規定が大きな役割を果たしている点は2009年5月30日の「時代に逆行(?)アメリカの国際課税ルール(2)」でかなりしつこく触れた。

そして今回、ステップアップを達成する一手段としてもまたこのCheck-the-Box規定が登場する。仕組みは極めて単純で、外国の企業を米国企業が買収する際に、会社法上および外国の税務上は株式買収をしておき、買収と同時に買収先の外国企業がCheck-the-Box選択をして米国税務目的では支店同様の取り扱い(Disregarded Entity)にするというものだ。

取得した外国事業が支店扱いとなると米国企業が直接、外国の事業資産および負債を取得した形となり、取得価格は当然、各資産に配賦されステップアップが実現する。

ただし、Check-the-Boxの選択は外国の全てに事業主体形態に対して認められているものではないことから、この手法を利用するためには買収先の外国企業が財務省規則の「Per Se Corporation」リスト(=選択の余地無く米国税務目的で「Corporation」と取り扱われる事業形態リストで、日本では「株式会社」がこれに当たる)に列挙されていないという条件が必要だ。実際には外国の事業形態の多くがPer Seリスト外となるので当プラニング適用の機会は多い。

*パートナーシップ持分取得とSec.754選択

Sec.338およびCheck-the-Boxの利用は、外国で法人形態を取る事業主体の買収に係るものであったが、もうひとつステップアップを実現する取引形態にパートナーシップ持分取得がある。単にパートナーシップの持分を取得しただけでは、株式会社の株式を取得した局面同様に、パートナーシップ持分の簿価が時価となるだけで、パートナーシップが持つ各資産の税務簿価は従来のままとなる。このような不都合を解消する目的で頻繁に利用されるのがSec.754選択だ。この選択をするとパートナーシップ持分を買収をしたパートナーの買収持分に相当するパートナーシップ資産の税務簿価が時価に置き換わる効果を持つ。結果としてGoodwill等の簿価がステップアップして上述の他のケースと同様の効果を達成できる。

こんなところでステップアップと外国税額控除の話しは一旦打ち切る。次回のポスティングでは同「Closing Tax Loopholes Act」に盛り込まれている他の規定の話しを続けたい。

コメントを追加

認証
半角の数字で画像に表示された番号を入力してください。