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バイデン政権下のタックスポリシー(9) ホワイトハウス ・インフラ増税案「Fact Sheet」公表

前回まで、バイデンの選挙活動中の提案、政権誕生後に任命された財務省高官新メンバーの過去の言動や文献、最近の議会ヒアリング等から想定されるバイデン政権下の増税案の方向に触れてきた。そんな中、米国時間の昨日、バイデン大統領府は「Fact Sheet」と呼ばれる資料で$2T(Bじゃないからね)に上るインフラ投資およびその財源として増税案を正式に公表した。増税提案の内容そのものは大概において前回までのポスティング通りで特筆するべき新提案はないように見えた。ただ、TCJAを、時にトランプ税とか読んで批判している論調は、その激しさが眼を引いた。財務省租税分析局長に就任しているキム・クロージングが学者時代に公表していた論文に通じるものがあり、誰がドラフトしたか計り知れる気がする。

この資料、マニフェストっていうかかなり宣伝っぽい内容だけど、ポリティシャンの公表する資料なのでそれは当然というか仕方がないとして、ポリシー提案文書を「Fact Sheet」って名付けて公開しているのはチョッと不思議。道路や橋の老齢化等の指摘をもってFact Sheetって呼んでるんだろうか?道とか老齢化が激しいのは本当で、これはどんなスタンダード下でもFactって言っても論争は起きないだろう。油断してると道路の穴とかヒットして直ぐにタイヤだめになるしその度にPep Boysとか行かないといけないし、特殊なタイヤだからって言われてわざわざTireRack.ComでオーダーしてPep Boysでサービスだけしてもらったりね。そういえば、交通インフラのアップグレードで思い出したけど、結局JFKはコロナ禍でも比較的良く行ったけど 久しぶりにLa Guardiaの方に足を運んだら、ターミナルBが見違えっててビックリ。そういえば毎日のように出張してたその昔、って言っても僅か一年前なんだけどね、改修後のターミナルBがもうすぐ誕生ってあちこちに書いてあって完成を楽しみにしてたのを思い出した。改修前のターミナルBは1940年っぽさが炸裂してたから。コロナ禍の中ひっそりと完成してたんだ~って思うと感無量(?)。でも、しばらくあんまり関係ないかもね。長距離フライトはどうしてもJFKだしね。

で、ホワイトハウスのFact Sheetだけど、今の世の中Fact CheckとかFact Sheetとか言われても、各自が思うところの都合のいいナラティブをFactって言うことが多いので、Factを辞書通り「実際に起こった事実」という本来の意味で捉える人は少ないだろう。でもよく考えてみるとFactって昔から同じように本当は掴みどころがなかったんだろうね。昔はイノセントで、僕が子供の頃はもちろんインターネットなんてなかったし、新聞やテレビのニュースで報道されることは単純にFactって勘違いしてた。そうじゃないっていう事実(Fact?)がいろいろな情報ソースにアクセスできるようになって浮き彫りになっているだけで、世界や人間の世界は昔から同じなんだろう。ローマ時代とかもね。でも、Fact Sheetってタイトルで増税案が公表されると、増税がFactになってしまってるみたいでチョッと怖い。

Fact Sheetを読んで興味深いのは、インフラにかかわる巨額歳出とか当然盛り込まれているであろう内容に加え、名指しする形で米国が中国との比較で優位なポジションを築くため、と明記されていた点。先日開催された米中会議でブリンケン国務長官が中国にお説教されて帰ってきたっていう弱腰外交イメージを払拭するためだろうか。チョッと取って付けた感は否めないけどね。また、インフラがかなり広義なんで、コロナ対策ではコロナの名前でいろんな民主党支持基盤に資金を提供したように、インフラ対策もインフラの名前であちこちにお金がばらまかれる。何と言っても先日のコロナ歳出と合わせて$4Tだからハイステークだよね。$4Tって日本やドイツの一国のGDP同等で、こんな金額がばらまかれるかと思うとその大盤振る舞いの凄さが分かる。

で、もちろんだけどFact Sheetに対する反応はまちまち。とは言えどれも想定内。「歳出が少な過ぎる」っていう左翼系民主党議員の批判、そんなことよりまずは連邦所得税算定時の州税控除の復活の方が先、という中庸民主党議員の中間選挙を見据えた現実的な反応、コロナ法案で中庸案を提示したにもかかわらず一切相手にされなかった共和党による拒絶(?)反応、法案に自己権益を盛り込んでもらおうと働きかけるロビイストとか、自分の選挙区にお金を落とそうとする議員さんたちとかね。

Fact Sheetはピラー2に極めて前向きな点が印象的だった。他国がグローバル・ミニマム税を導入するのを奨励し、OECDと共に「Race to the bottom」を封じていくそうだ。であればGILTIもぜひピラー2に準じて欲しいところ。国別FTCのところだけピラー2風にする一方、税率は21%にして有形資産リターンのカーブアウト撤廃、ではピラー2と整合性が欠ける。また親会社の所在国がIIRを採択したら、インバウンド企業が米国傘下にCFCを所有するストラクチャーでもGILTIを非適用にしてくれるとか、その手のピラー2との共存論もあれば良かったけど。そういうのは盛り込まれてない。逆にピラー2が21%でカーブアウトなし、なんてなったら世界中に大迷惑。ピラー1に全く触れてないのも興味深い。BEPS 2.0は、この夏にはピラー2に関してアクションプランみたいなものを最終化して合意をみたような形に持ち込むのでは、っていう予想を裏付けてる気がした。

米国内外における今後の審議、どうなるでしょうか。