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新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (12) 「QIP Glitch」(適格内装資産とボーナス償却(2))

チョッと間が開いてしまったけど、前回のポスティングでは、CARES Actに盛り込まれたTCJAのTechnical Correctionのうち、適格内装資産の償却法に関して話し始めた。結果として2018年1月1日以降に事業用途に供された適格内装資産は過去遡及する形で償却方法が変わってしまったことになるけど、そんな調整をどうやってすんの?っていうのが今回のメインテーマ。

過去遡及して償却法を変更する面倒な手続きの話しに行く前に、一点超細かい点だけど、サワリだけ触れておきたい点がある。2018年1月1日以降に事業用途に供される内装でも、2017年9月27日以前に取得されているものは、TCJA以前のボーナス償却規定が適用になるので要注意という点。また2017年9月28日以降に取得され、2017年12月31日までに事業用途に供された内装は、特別に独自のクラスを構成している点も注意。通常、償却の話しは事業用途に供された日が気になるけど、取得日も重要なことがあるんで気を抜かないように。この組み合わせの話しは面倒な割に多分適用件数は低いと思われるので、こんなパターンで取得や事業用途に供されている内装があったら専門家に相談するようにね。

Section 163(j)もそうだけど、適格内装資産にかかわる過去遡及手続きを複雑にしているのが、適格内装資産を含む税務上の償却を取り巻く複数の選択。まず、原則に戻って即時償却なんていうものが存在しなかった時代には、有形資産は大概においてMACRSっていう加速償却を適用して税務上の償却費用を計算するのが普通の姿。MACRSは、前回のポスティングでチラッと触れたConvention制度があったり、多くの動産が200%定率だったり、経済耐用年数とは直接関係ない政策的に規定される法廷償却年数や方法に基づいてCapex、資本的支出の費用化を規定する税法の世界だけに存在する償却法だ。なんで、MACRSの「CR」は「Cost Recovery」ではあるけど、MACRSにDepreciationを表す「D」は入っていない。このことからも、MACRSはいわゆるDepreciationではなく、あくまでも資本的支出の費用化という概念。米国税法の構成的には、Section 167で事業所得を算定する際に償却費用すなわちDepreciationの計上を認め、その上で、金額は有形資産に関しては大概においてSection 168のMACRSを適用して決める、っていうもの。

で、このMACRSが嫌な場合、特別な選択をすることで、その課税年度に事業用途に供されたMACRS対象資産をMACRSではなく、ADSというMACRSより長い償却期間で定額償却する不利な方法を選択することができる。元々ADSっていうのは資産の使用場所が米国外だったり、非課税団体にリースしてたり、加速償却を規定するMACRSの適用が政策的に適切でない状況に適用が義務付けられるものだけど、AMTのSubsetだったACE(覚えてる?)の算定時に使われたり、今でもE&Pの計算時に適用されることから、結構頻繁に登場し侮れない存在。さらに、TCJA後の世界ではFDIIやGILTIのみなし超過利益算定時のみなしルーティングリターンをADSベースの税務簿価に10%を掛けて算定することから、各社、ますますMACRSと共にADSベースの資産管理が求められる。もちろんこれらMACRS、ADS共に会計上の償却とは異なるので、一つの資産でも複数の簿価が存在することになる。で、ADS選択っていう制度は、ADSの適用が義務付けられるケースとは関係なく、通常の課税所得算定時にMACRSを適用できるにもかかわらず、課税年度内に事業用途に供されたMACRSの資産クラス別に自らADSを選択すること。ADSは一度選択すると取り消し不可能。One way streetだ。

で、そんなMACRSに加え、設備投資減税として、歴史的に時限立法でいろんなパターンの即時償却が規定されてきてるけど、TCJAでも100%即時償却が規定されている。で、100%の即時償却が嫌な場合には、課税年度に事業用途に供された資産に関して自ら即時償却を適用しないという選択がある。これも税法に規定される資産クラス毎に選択できる。当選択をすると、普通にMACRSで加速償却することになるけど、これに更に上述のADS選択を組み合わせることも可能。また2017年9月27日を含む課税年度に限定された話しだけど、TCJAの100%即時償却ではなく、それ以前の50%ボーナス償却を選択することもできる。確かこの選択だけは資産クラス毎ではなく、その課税年度に事業用途に供された資産全てに関して選択が必要だったはず。

もうひとつ、即時償却の対象となるフルーツやナッツの実がなる植物が、既に栽培されているケースにも特別な選択があるけど、余りにオタクなのでこの部分は割愛。何がフルーツで何が野菜かってよく議論になるよね。ロビイストが暗躍してフィルムとかナッツとかが即時償却の対象となっているのは面白いけどややこしいね。

で、過去遡及にかかわる手続きだけど、適格内装資産の償却は以前のポスティングで触れた不動産業や農業にかかわる支払利息の損金算入制限、Section 163(j)、の適用除外選択と密接に関係する。したがって、不動産業や農業がSection 163(j)の適用に関して新たな選択をしたり、過去に行った選択を取り消したりする結果として変更される適格内装資産の償却は、Section 163(j)に関して別途公表されている選択手続きの枠の中で処理する必要がある。これらに関しては「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」を参照して欲しい。また、Section 179等で即時償却規定とは別の形で事業用途に供された課税年度に既に費用化されている適格内装資産に関しては、CARES Actの影響はなく、そのままの取り扱いとなる。Section 179は、個人的な感覚では、どちらかと言うと個人事業主っぽいノリのオタクな規定だった。それがTCJAで即時償却が中古資産にも認められるようになり、資産取得型のM&Aのモデリングに大きな影響を与えてるけど、中古資産でも即時償却の対象となるかどうかの判断時にSection 179が引き合いに出され、急に脚光を浴びた観のある条文。

で、法的に過去遡及をどのように整理するか、っていうアプローチだけど、まず忘れていけないポイントは、CARES ActでTCJAの法文が修正される前の状態では、適格内装資産の償却は法的に39年定額、または納税者のADS選択で40年定額しか認められなかったという点。この点に関して納税者側に何の裁量も存在しなかった。それが、CARES Actによる法文修正で2018年1月1日に遡り、逆に原則、即時償却、納税者が即時償却の不適用を選択すればMACRSの15年定額、さらにその上でADS選択する場合には20年定額しか法的に認められなくなったという点。したがって、当時は法的に仕方なく39年や40年で償却し始めているケースでも、これをそのまま継続するっていうオプションは存在しないことになる。つまり、償却にかかわる処理変更が「強制」されることになる。過去に法的に適用が強制されていた39年や40年の償却は現時点で「法的に容認不可処理法」となり、即時償却等が急に「容認処理法」に生まれ変わる。面倒~。。

法文修正に伴い、容認不可処理法から容認処理法に変更する方法は、二通りあり、修正申告(BBA適用パートナーシップに関してはAARを含む点は以前からのポスティングで触れている通り)をする、またはこれから提出する2019年等の申告書で税務処理変更願い、Form 3115、を出し、修正申告することなく累積影響額を一気に調整する方法、のいずれでも可としている。処理変更の道を選択する場合、通常だと容認不可処理法は2年続けて適用していないと処理法として確立したことにならないけど、今回は特別に1年だけ法文修正前の方法で処理していても処理変更対象にするとしている。最初、財務省のガイダンスを読んだ際、「1-Year QIP」だけ別途規定があり、修正申告と同時に処理変更でもOKと、他の状況と同じ扱いを敢えて別に規定しているのが不思議だったんだけど、2年間適用していないことにかかわる手当なんだろう。いろいろとよく考えてあるね。

次に過去遡及の選択だけど、2017年9月27日を含む課税年度に限定の50%ボーナス償却選択やフルーツとかナッツの償却の話しは割愛して、ADS選択や即時償却の不適用選択にフォーカスしておくと、2020年4月16日以前に提出されている申告書に関して、今から不適用選択を希望する際には、こちらも法文修正後の強制処理法をそのまま適用するケース同様に、修正申告を提出するか、今後提出する申告書にForm 3115、処理法変更願い、を添付するか、いずれの方法で、不適用を選択することが認められる。

逆に過去にこれらの選択をしてたけど、選択を取り消したいケースだけど、即時償却の不適用を選択していたケースは、新規に過去遡及して選択するケース同様、修正申告または処理法変更願いのいずれかの方法で取り消しが認められる。通常のMARCSの代わりにADSの適用を選択してたケースで、やっぱり普通のMACRSに戻りたいケースの選択取り消しは修正申告を通じてのみ可能。これらの選択は、通常だったら一旦選択すると取り消し禁止だけど、今回は例外。う~ん、複雑。申告書作成大変そう。