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新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (6) NOL Carryback手続等ガイダンス

Max Hata
失業保険申請数が僅か3 週間の間に1千7百万人にのぼり、Cares Actに規定された小規模事業者へのSBAによるPPPローンプログラム(税法とか直接関係ないので、一応)に申請が殺到し、大至急追加資金の供給が必要ということで、今週にでもフェーズ3.5/Cares Act 2.0が議会を通過するはず、だった点は「失業保険申請一千万人とGDP30%減の衝撃と「フェーズ3.5/CARES Act 2.0」」で触れたけど、両党の意見が合わず、結局週明けに持ち越し。McConnellは上院で$250Bの決議を断行すると伝えらえている。どれだけの民主党上院議員が反対するのか見もの。

で、議会がフェーズ3.5/Cares Act 2.0の可決に失敗している間に、財務省・IRSはCARES Act絡みの規定適用にかかわる6つの手続き的なガイダンスを早々に公表した。Revenue Procedure 2つ、Notice 3つ、現金給付用の情報入力ウェブサイト、という超豪華セットだ。内容は大別してNOLのCarrybackにかかわる手順、諸々の期限延長、適格内装が過去訴求して即時償却対象となった点を勘案して不動産業者によるSection 163(j)不適用選択の取り消し、現金給付などだけど、取り急ぎ、関心が一番高そうなNOLのCarrybackにかかわる手続き部分に触れておく。これらの新手続きは最後に触れる2018年1月1日以降の課税年度に生じるNOLの取り扱い以外はRevenue Procedureに記載されている。

CARES Actは、2018年~2020年に開始する課税年度に生じるNOLに関して5年間のCarrybackを認めている点は既に何回かにわたり触れた。CARES Actに限らず、NOLのCarrybackは、Carryback先となる課税年度の修正申告書を提出して還付申請を行うのが原則。法人であれば1120Xだ。ただし、CarrybackするNOL発生課税年度終了から1年以内であれば、簡易手続きに基づく還付申請が認められるという緩和措置がある。こちらはForm 1139(法人以外はForm 1045)だ。

Carrybackは法的に拘束力を持つため、Carrybackが規定される課税年度にNOLを認識している場合にはCarrybackをしないといけないのが原則。ただし、納税者自らがNOL発生課税年度の申告書上、Carrybackする権利を正式に放棄する選択をする場合にはその限りではない。当放棄選択をすると、Carrybackの代わりに全額Carryoverとなる。放棄選択は一旦行うと取り消し不能。

CARES Actでは、一部過去に訴求してCarrybackを認めているので、NOL発生課税年度終了から一年以内のみに認められる簡易手続きとか、延長後に遅延なく提出される申告書で行われるはずのCarryback放棄選択とか、可決時点で既に期限が過ぎている措置にどのように対応するのか不明だったけど、今回のRevenue ProcedureおよびNoticeで大概の疑問はクリアになったと言える。

で、まず暦年2018年および2019年に開始する課税年度に生じるNOLのCarryback放棄選択だけど、これは2020年3月28日以降に終了する最初の課税年度(例、2020年3月期)の延長申請を加味して遅延なく提出される法人税(または所得税)申告書に、Carryback放棄する旨を記載したStatementを添付して行う。放棄は暦年2018年または2019年に開始する課税年度、各々別々に選択することが認められるけど、Statementには放棄選択対象となる課税年度を明記する必要がある。

次に、CARES Actには、5年間のCarryback期間に、留保所得一括課税(Transition Tax)対象課税年度が含まれる場合、当課税年度をCarryback対象から除外する選択が規定されている。暦年2018年および2019年に開始する課税年度に生じるNOLをCarrybackする際に、Transition Taxを計算している課税年度をCarryback期間から除外する選択を希望する場合、通常のCarryback放棄と同様に、2020年3月28日以降に終了する最初の課税年度(例、2020年3月期)の申告書にCarryback放棄する旨のStatementを添付する。2020年1月1日以降に開始する課税年度に生じるNOLのCarrybackにかかわる同選択は、NOL発生課税年度の申告書にStatementを添付して行う。Transition Taxを計算している課税年度をCarryback期間から除外する選択にかかわるStatementを添付する「申告書」だけど、Revenue Procedureが発行された2020年4月9日以降に提出される法人税(または所得税)申告書、簡易手続きのForm 1139(法人以外はForm 1045)、Transition Taxを計算している課税年度に当たらないCarryback対象課税年度にかかわる還付申請のための修正申告書、のいずれか一番早くに提出される様式が対象。さらに、同選択のStatementは、Carryback対象課税年度にかかわる還付申請のための修正申告書の各年度にコピーを添付する必要がある。

単にNOL Carryback自体を放棄する選択のStatementと比べて、Transition Taxを計算している課税年度をCarryback対象年度から除外する選択のStatementは、添付するべき申告書のバリエーションが多くて面食らうかもしないけど、これは当然で、NOL Carrybackを放棄するということは、NOLをCarrybackして還付を請求しないということなので、過年度の申告書をNOLを使って修正申告したり、Form 1139とかで簡易手続きに基づく還付申請を行ったりすることはないからだ。一方のTransition Taxを計算している課税年度を除外する方の手続きは、NOLをCarrybackするからこそ生じる検討となるので、Carrybackの際に提出する可能性のある申告書がいろいろとある。それらのうち、最初に出すものにStatementを添付し、またCarryback期間の各年度に関して提出する修正申告書が他にあるのであれば、それにもコピーを付けなさいってこと。まあ、よく考えられてるよね。TCJAのインプリメンテーションで多忙だった財務省やIRSだけど、CARES Actで余計に忙しくなり、かつ彼ら・彼女らだってWFHだから、このスピードであれだけのガイダンスを公表できるっていう実力は凄いね。

また、Revenue Procedureでは、Transition Taxを計算している課税年度をCarryback対象年度から除外する選択を行う場合、Transition Taxを計算している全ての課税年度を一律除外しないといけない点、また除外の結果、Carryback対象となる課税年度は元々の5年間からTransition Taxを計算している課税年度の除外した残りの課税年度になる点、が明確にされている。Transition Taxを計算している課税年度は多くのケースで2017年課税年度単年(3月決算の場合は2018年3月期)だけど、11月とか異なるFiscal YearのCFCが所有外国法人に複数紛れている場合には、プラスもう一年、Transition Taxを計算している課税年度が存在することがある。

逆にTransition Taxを計算している課税年度をCarryback対象年度から除外しない場合、NOLはTransition Taxを計算している課税年度にもCarrybackされることになるけど、その場合は、留保所得の合算額にはNOLを適用しないSection 965(n)選択が強制的に適用される。ただし、元々、NOLが存在したのに、(n)選択をしていない場合は、CARES Actで適用される強制(n)選択はCarrybackされるNOLのみが対象となる。この点はCARES Actの法文だけでは必ずしも明確ではないと言う専門家もいたのでウェルカムな確認。

当然だけど、連結納税グループは一納税者として選択を行い、連結NOLにも通常とおなじ選択ルールが適用される、と規定されている。

2017年12月31日以前に開始し、2018年1月1日以降に終了する課税年度、例えば2018年3月期、に生じるNOLはCARES ActによるTCJA法文修正を通じて、急にCarrybackが認められることになったけど、既に課税年度終了から一年以上経過しているので、通常であれば修正申告書を提出して還付申請するしかない。この点には元々CARES Act自体に緩和措置が規定されてて、CARES Actが可決してから120日目に当たる7月25日が土曜日なので、翌月曜日の7月27日までにForm 1139(法人以外はForm 1045)を提出すれば、簡易手続きに基づく還付申請が認められる。また、当課税年度のNOLに関してCarryback放棄する選択をする場合も、同じく7月27日までに納税者名、住所、納税者番号のみを記載したカラの修正申告書を提出して選択を行う。

最後に、別のNoticeによる追加緩和措置だけど、2018年1月1日以降に開始し2019年6月30日以前に終了している課税年度のNOLをCarrybackする際、既に課税年度終了から一年超の時が経過しているので、通常であればForm 1139やForm 1045で簡易手続きに基づく還付申請はできないところ、期限を6カ月延長を認めてくれるそうだ。3月決算の場合、2019年3月期がこれに当たるけど、2020年9月末までに手続きを行えば、簡易手続きに基づく還付申請が可能。この措置は2918年3月期の法人修正にかかわるNOLの措置と異なり、CARES Actには規定されておらず、行政府の判断・裁量に基づく英断。素早くかつ気の利いたガイダンスに感動。後は還付請求後、どれくらいのスピードで本当に還付されるか、が興味深い。確か、Form 1139は電子ファイルできなかったと記憶しているので(記憶なんでみんなちゃんと調べてね)、その場合はWFH状態でIRSの処理能力には限界があるだろうから、本来90日以内に処理される簡易手続きが、その通りスムースオペレーターになるかはかなり疑問だけど、こんな事態は想定されてないので多少の遅延は覚悟しないとね。

次回は軽く他の規定にかかわるNoticeに関して。

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