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米国税法改正大綱 「Unified Framework」(5)

前回は米国税法改正大綱とも言える「Unified Framework」の法人税および事業所得に対する課税について、特にR&Dクレジット、製造者控除のような特殊恩典と課税ベース拡大、そして最後に法人の二重課税軽減と上院のCorporate Integrationプランに関して触れた。今回はクロスボーダー関係。

元々The Blueprintが2016年夏に公表され、その後選挙で両院プラス大統領府を共和党が制した後も、米国税法改正が最終的に一体全体どのような形のものとなるかという点に関しては多くの不明点があったが、現状の全世界課税からテリトリアル課税制度に移行することは間違いないと考えられていた。

で、予想通り、Unified Frameworkでも米国のテリトリアル課税制度への移行が明記されている。The Blueprintでもそうだったように、海外子会社からの配当は100%非課税としている。これはCamp案とかの従来の提案が日本同様に95%非課税としていたのと対照的だ。なぜ5%とか課税する案が多いかと言えば、親会社レベルでの金利負担に代表される海外子会社投資のCarrying Costを紐付きで損金不算入扱いしない代わりに、配当5%部分に課税してみなしでCarrying Costを損金不算入したっような効果を得ようとするからだ。Unified Frameworkでは100%非課税としているだけで特にこの点への言及はなく、Carrying Costを損金不算入するような特別な規定が入る話しはない。損金不算入はないと考えるべきか、それとも既存のSection 265を改訂して少なくとも利息の一部損金不算入となるのか、今後の注目。

非課税となる配当はCFCからのものばかりでなく、10%以上の持分を持つ投資先からのものも対象となる。現状の間接外国税額控除も10%持分が基準だけど、その場合は議決権で判断するので今回も議決権ベースかもね。

そして米国のテリトリアル化の際に避けて通れないのが制度移行時の一括課税。国境調整に基づく消費地課税が取り下げられた今、めぼしい財源と言えばこれしか残っていない。米国多国籍企業は現状の税法ではとても海外で稼いだお金を米国に持って来れず、多額の埋蔵金を海外に留保しているのはみんなも知っての通り。

以前「トランプ大統領税法改正プラン(5)」で書いたけど、アップルに至ってはナンと2,500億ドル(円ではない)の現預金相当を持っており、その9割が米国外にある。米国外にあると言っても、預金の大半はNYCの金融機関にあると思われ、海外子会社がNYCに非居住者口座を持っているようなイメージだろう。EYの監査クライアントなので公けの情報のみを基に話しておくけど、2,500億ドルと言えば100円換算でも25兆円だ。WJSによるとこの金額は英国とカナダの外貨準備高の合計より、またWalmartのマーケットキャップより大きいというから凄まじい。この現金をどのように戦略的に使うべきかに関しては外部からいろんなコメントがあるけど、歴史的にアップルは余り大きなM&Aをしていない。Netflixを買収するべきという話しもあるし、いやテスラでしょう、という話しもある。ただ、これだけの現金があるとNetflixとテスラの双方を同時に買収してもまだお釣りがくるそうだ。その昔は破産の危機に瀕していたこともあるのにやっぱり元祖iPhoneをこの世に送り出してくれたSteve Jobsの才能は凄まじい。

で、Unified FrameworkではThe BlueprintやCamp案でもそうだったように制度移行時点で累積されている配当原資、すなわち米国基準で算定するE&Pに対して2つの低税率で課税するとしている。The Blueprintでは現預金に対して8.75%、事業資産に再投資されている部分は3.5%としていたが、Unified Frameworkは税率を明記していない。トランプ大統領は一律10%としていた。歳入がどれだけ必要かにより税率を決めるつもりなんだろうけど、どの時点で現金と他の資産を区別するのか、とか結構複雑なことになるような気がする。5%も税率が異なるんだったら当然急に現預金を事業資産に投資してバランスシートを操作するプラニングが横行しそうだけど、そんなプラニング防止のため9月27日とか法律が最終化する以前の日の資産状況を基に対象税率を決定したいという話しもあるようだ。ただ、現実問題として期末以外のタイミングで正確なバランスシートなど存在しないことが多く、変な日にちが設定されると面倒なことになりそうだ。余りに複雑になるようだと結局単一レートという可能性も無くはないだろう。

制度移行時点で累積されている配当原資に一括課税というとシンプルに聞こえるかもしれないけど、現実にはテクニカルな検討事項が結構多い。世界中の子会社を別々に見るのか、マイナスとプラスのE&Pを相殺させてくれるのか、とかいろんなアプローチがあり得る。一括課税をテクニカルにどう位置付けるのかも不明だけど、新たなSubpart Fカテゴリーを規定して留保金課税するのが自然な感じ。どのような課税方法が採択されるにしても現時点で米国多国籍企業が最も注力しているのがこの一括課税をどう最小限に食い止めるかという点だろう。

ちなみに10%投資先からの配当も100%非課税となるからには当然一括課税の対象にもなる。10%しか持っていない投資先の米国算定基準のE&Pなんか分からないケースもあるだろうし、配当性向に関して決定権を持たない投資家が配当原資全額に課税されてしまうのもチョッと気の毒なケースもありそう。

税率がどれだけ低く設定されたとしても埋蔵金が巨額なだけに、一括課税から上がる税収は大きい。となると支払う方は大変で、しかもみなし配当課税だから、本当に海外で再投資されているケースでは親会社に十分な納税原資がないこともあるだろう。The Blueprintでは8年間の割賦納付が規定されていたが、Unified Frameworkでも複数年掛けての納付を認めるとしている。ただ、それが何年なのかは明記されていない。

テリトリアル化で心配されるのは米国多国籍企業によるBase Erosion。一度、海外子会社に所得が移転されてしまうと米国としては2度と課税するチャンスがないからだ。同様の懸念が2009年に日本がテリトリアル化した際にも存在したが、プラニングに対する熱意が異なる米国企業相手となるとこの懸念はRealだし確かにいろいろなプラニングを実行してくるだろう。その対策にかかわるUnified Frameworkのコメントに関しては次回。