米国タックス行く年・来る年(12)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

Max Hata 2017/01/04(水) - 21:37
前回はThe Blueprintのクロスボーダー系の部分に関する二つの抜本的な改正のうち国境調整に関して触れた。そんなバカな・・という第一印象を持たれるであろうこの国境調整ももし税率が15%程度であれば、確かにVATの代わりと割り切ってしまえば、それなりに納得感もあるかも。20%だとチョッと高価なVAT過ぎるし、パススルーの25%とかだとVATとしての納得感も減少してしまうけどね。輸入コストが原価にならなかったり、輸出の売上げが課税されないとなると移転価格の問題も激減するようにも思われ、もしかしたら納税者にとっては悪いことばかりではないかもしれない。という訳で国境調整は切りがないので、今回はクロスボーダー課税2つ目のトピックである意味「Most anticipated」とでも言うべき「テリトリアル課税」について。

時代遅れの全世界課税は撤廃しテリトリアル課税に移行する必要性は米国でももう何年も議論されており、Camp提案のようにかなり具体的なものもあり、抜本的な税法改正はテリトリアル課税の議論なしには不可能な状態だった。そんな状況なので国境調整と異なりテリトリアル化が盛り込まれている点は想定内と言うか、これが無かったら逆にビックリしていただろう。

The Blueprintによるテリトリアル課税は海外子会社からの配当は気前良く100%非課税と提案されている。ただ、日本の2009年のテリトリアル移行時と異なり、制度移管時の措置として、その時点で海外子会社に溜まっている剰余金(正確にはE&P)は一括課税の対象となる。この課税方法も以前のCamp案と若干異なり、現預金相当の形で持っている部分には8.75%、他の資産で持っている部分(おそらくE&Pマイナス現預金相当額で算定)には3.5%で課税、と二層別々の対応となる。Camp案同様、一括課税の負担は会社によっては大きいので8年の分割払いが認められる。大盤振る舞いの税法改正においてこの一括課税は大きな歳入源だ。

The Blueprintでは、テリトリアル化により米国企業が海外に眠らせている数兆ドル単位の埋蔵金も自由に米国に持って返ってくることができるようになり、他の施策と合わせると法人や事業主は税法ではなく、事業ニーズに基きサプライチェーン、雇用、投資の場所を決定することができるようになるとしている。決算書でも面倒で意味のないAPB 23ポジションとかを文書化する必要もなくなり皆ハッピーだろう。

この2つの改正、すなわち国境調整とテリトリアル課税、さらに20%という低税率の組み合わせで自然と米国企業はInversionなど検討する必要はなくなり、安心して米国企業とし活躍できるとし、Subpart F(日本のタックスヘイブン税制に類似)規定のほとんども用無しになるという「自浄作用」があるとしている。

確かにSubpart Fは複雑極まりなくなっているが、投資所得に対する「personal holding company」規定のみを残して、他の部分は改正と同時に撤廃可能としている。日本が米国型の現行Subpart Fに傾いているのとは逆行していて面白い。日本で米国Subpart F型を推し進める際、米国企業がどれだけSubpart F等のコンプライアンスに時間とコストを掛けていて、それがどれだけ重荷となっているかという点を加味して判断しているのかチョッと不思議。Subpart F絡みのコンプライアンスは、本社が世界中の子会社から定量・定性双方で困難な情報収集を強いられ、大手米国MNCでは会計事務所に年間数百万ドル(円ではない)支払っているところも珍しくないくらいの面倒さなので、日本が米国のSubpart F型に移行するというのであればそれなりの覚悟が必要だ。なんせ張本人の米国議会が酷い規定として反省し、廃案を提唱している位だから。

The Blueprintの実体的な提唱はここまでで、最後は「21世紀に相応しいService FirstのIRS!」としてIRSを生まれ変わらせるという大胆な提案で締めくくっている。Service Firstに関しては次回。

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