Inversion(22)「Inversion規則とBurger King」

Max Hata 2016/05/15(日) - 10:17
今日は比較的最近のInversion取引のストラクチャーのひとつ、ファストフードチェーンBurger Kingによるカナダのコーヒー(+ドーナツ)チェーンTim Hortonsの買収。

Burger Kingは東京、Los Angeles, NYCのどこにもあって(香港にもあったかも)、もちろん看板とか良く見るけど、長~い間行った記憶がない。その昔、ハワイに遊びに行ったりした頃に偶然行ったかもしれないけど。Tim Hortonsに至ってはカナダでは相当有名で、NYCにも、しかもMidtownの行動・徒歩圏内にも店舗はあるみたいだけど、全く行ったことがないどころか、Inversionのニュースになるまで名前すら知らなかった。

Burger KingのInversionは、Burger Kingが米国軍がお得意先な点、またBuffet Taxの俗称で知られる富裕層の増税を提唱して正義の見方っぽかったWarren BuffetのBerkshireが関与していた点、等の理由で多くのメディア批判に晒されていた。米国税務的な観点では2014年の財務省によるNoticeが出た直後のInversionだったので、「未だInversionは続く・・」という力強いメッセージという意味で意義深かった。

このInversion、基本的な流れはBurger KingがカナダのTim Hortonsを買収する際にカナダを頂点とするMNCグループに生まれ変わるという近年のVersion 5.0の典型と言えるが、パススルー主体を介在させたりかなり複雑な取引だったようだ。ウォールストリートジャーナルによるとInversion後、4年間で$300M近い節税となるというし、他のシンクタンックの試算ではメリットはそれどころではなく$1Bを超えるという報道もあった。だったら、合法的であればWarren Buffetだって誰だって十分に実行する価値のあるDealと言えるだろう。ただ、一方で、他のInversion同様、会社側が主張するように十分な事業目的が存在するから実行している訳で、メディアで揶揄されるようにタックスのみの目的ではないのはその通りだろう。これは全てのInversionに共通で、製薬業界にInversionが多いのも、彼らが他業界よりGreedyとか言う問題ではなく、厳しい国際競争、米国外に存在する大きなマーケット、行政・保険会社からのコストカットの強いプレッシャー、等、企業側から見て構造的に不利な状況では事業運営すらままならないという死活問題が背景にある。

企業側はグローバル競争で勝ち残るのに必死だし、海外マーケットの比重が高く、他国の競争相手がより有利な税務環境で戦っていたら、Inversionを成功させるのはオプションではなくMustとなるだろう。米国議会、財務省、大統領、揃ってInversionする企業、経営者を非国民みたいに言うけれど、企業側から見れば、そんなに言うんだったら早く使い勝手のいいもっとマシな法人税法にアップデートして下さい、という立場となる。議会に至ってはCTB規定の海外2nd Tier主体への適用とかに網を掛ける法改正の機会がありながら何も行動せず、そのくせAppleの社長とか呼び出して、尋問したりと余りに無責任(?)。「Inversionはいけません」でも「国際競争力を殺ぐ最悪かつ常軌を逸する難解な税法は当面ポリティカルに改訂はないので、しっかり準拠して下さいね」という2つが並行して国のメッセージだとすれば、米国MNCは国際競争で苦戦を強いられるしか選択肢がないこととなる。

で、Burger Kingだけど、Tim Hortons買収後は、カナダに新規に設立されるNew Red Canada Partnershipという事業体の子会社となる。このパートナーシップがBurger Kingをお馴染みのReverse Sub Merger手法で株式取得し、カナダには英国法の流れでMerger法がない(?)らしいことから、英連邦ではやはりお馴染みのAmalgamation(Armageddonと間違えないようにね)でTim Hortonsを子会社化する。ここで、なんでパートナーシップ?って不思議に思った方は問題意識がきちんとあり、Issue Spottingで黄色帯合格だ。Version 5.0の通常のInversionでは統合後の持株会社は米国外の上場株式会社となるからだ。さらに複雑なのは、このパートナーシップの上にカナダ法人の上場持株会社が介在している点だ。しかも、パートナーシップ持分が、Upper Tierの持株会社と同じ配当、議決権も持ち、こちらも上場されている。すなわち、Lower Tierのパートナーシップ、Upper Tierの持株会社の双方が上場企業の形を取っていて、またパートナーシップ持分は1年後に持株会社の株式に転換可能となっている。

随分と複雑はストラクチャーだけど、誰がどの持分を受け取ったかっていう点を良く見てみると何となく謎が解けるような気もしてくる。取引の詳細、実際のところはベールに包まれているのであくまでも推測だけど。Burger Kingは3G Capitalって言うFund(ブラジル系?)が70%所有していて、残りの30%は一般上場株主だ。再編に際して3Gはカナダのパートナーシップ持分のみを受け取り、上場株主はパートナーシップ持分と持株会社の株式のどちらかを受け取っているようだ。投資の神様Warren BuffetのBerkshireはこのDealには現金$3Bをポンと出資しているが、Berkshireはパートナーシップ持分は受け取らず、持株会社の優先株式およびワラント債を受け取っている。Tim Hortonsの旧株主は持株会社の株式を受け取っている。なぜ米国のFund3Gと米国一般株主の一部のみがパートナーシップ持分を受け取ったんだろうか。想像できるのはSection 367の株主レベルの課税を3Gが嫌がり、パートナーシップへの出資とすればSection 351ではなく、Section 721となるのでSection 367に抵触しないということかも。で、かつ同じDeal Economicsとするためにパートナーシップそのものが実質、持株会社株式と同様の権利、流動性を持つような形態を編み出したような感じ。う~ん、Creative。こう言うのって後からストラクチャー見てああだ、こうだと分析するのは容易だけど、実際に考え付いて実行するのは大変な才能。ウォール街、弁護士事務所、Big-4のアドバイザー達は皆本当に頭がいい。国としてはその頭の良さをもっと何か本当にCreateする分野に使わせるような戦略が必要かも。

という訳で今日はBurger Kingでした。先週末と違い、天気もいいので意を決してWhopperバーガーでも食べに行こうかな、とも思ったけど、どうせCarb取るんだったらMidtownのイタリアンの方がいいかも。

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