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Inversion(8)

Max Hata
前回はSection 7874が制定され、それでも止まない単独Inversionのところまで漕ぎ着けた。Section 7874では、旧米国法人の株主が引き続きInversion後の外国法人の持分80%以上を持っていると、外国法人を米国税務上は米国法人とするという厳しい結果となり、さらに60%以上80%未満の場合には、外国法人と認められるが、その後10年間に米国法人が認識する「Out-from-Under」絡みのGainをInversion Gainとして、Gainに対して欠損金他の控除を認めないというものだ。Out-from-Underに関してはInversionの話しの最初の方で触れているが、CFCを実際にまたは経済的に米国から外すことを意味し、CFC株式売却Gain、CFC無形資産の外国へのライセンス、などがInversion Gainとなる。

ただし、前回も触れた通り、SBAテストの例外を満たすと持分継続にかかわらずSection 7874の適用はなくなる。趣旨としては、仮に持分が継続している場合でも、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが実体を伴うある程度のサイズの事業に従事している場合、再編にはタックス目的以外の事業目的が認められるからだ。

このSBAテストがいつ満たされるかという検証法はSection 7874そのものには具体的に規定されていないために、財務省の規則を適用することになるが、2006年に発行された最初の規則では「10%安全ガイドライン」+「F+C」で、比較的親切に「こんな感じでF+CテストがOKになりますよ~」みないな事例が複数記載されていたりした。ところが、2009年には「F+C」のみとなり、更にF+Cを満たす事例は削除される。

F+CのSBAテストは意外にも適用が多く、Section 7874ができたというのに、未だに単独Inversionが絶えない状況となってきていた。これがInversionのVersion 4.0とでも言うべきGenerationで、Sara Lee、Ensco、AonなどのInversionが有名所だ。ちなみにこの3社とも行き先は英国だった。ちなみに英国というのは個人的に不思議な国に思える。規制がいろいろとあるようでないようで、Trustの考え方が発達していたり 旧英連邦に沢山のタックスヘイブンを抱えていたり、シティーがかなり独立自治的な存在だったり、NYCのウォール街でできないようなことができちゃったりする不思議な国だ。金融・相場関係のスキャンダルもNYCよりもロンドンに多いような気がする。London WhaleとかLIBORの件とか。007の映画じゃないけど、チョッと神秘的なところがある。Beatles発祥の国だし(全然関係ない?)

単独Inversionが可能だったのは必ずしもSBAテストが軟弱だったということはなく、どのケースもかなりしっかりした事実関係を持つケースばかりで、Section 7874の立法趣旨から言っても免除されるべくして免除されているような取引ばかりのように見える。しかし、財務省はそうは考えていなかったようで、2012年には規則が改訂され、実質、SBAテストを撤廃したに近い、25%テストを導入する。F+Cテストは撤廃されてしまったので、この25%は安全ガイドライン(Safe-Harbor)ではなく、単なるBright-Lineテスト(機械的なテスト)となり、唯一SBAテストを満たすことができる術となる。25%テストは2006年の10%安全ガイドラインと考え方が同じで、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが25%以上の従業員、資産、売上を持っていれば、機械的にSBAが満たされたと認定するというものだ

米国MNCで米国以外の国に3つのファクターに関して25%以上を持っているケースは現実的にはあり得ないに近い。事実、2012年にSBAテストが強化(というか適用不能状態?)されて依頼、Inversionは単独のものはほぼ姿を消し、第三者の外国法人との「統合型」に移行していく。すなわちSBAテストを満たすことができないので、Section 7874の適用を回避するには80%以上(できれば60%)の持分を継続しないようにストラクチャーするしかなくなってしまったからだ。

2012年の規則変更以後、25%のSBAテストを満たして単独Inversionした唯一(?)のケースとして良く引き合いに出されるのはVirgin Media社の例がある。Virgin Mediaは米国MNCとは言え、ほぼ全ての事業が元々英国という変わった事実関係があり、そのために25%テストをクリアして英国にInversionしていくことができた。

SBAテストが実質撤廃された状況となり、その後の勝負は継続持分が60%または80%を切ることができるかどうかとなる。この判断は単純なようだが、実はSkinny DownとかStuffingとか、様々なテクニックが導入されてまたしても財務省とのいたちごっことなり、Inversionのサガが続いていく。

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