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グリーンカード放棄と米国の税金「追加Update」(4)

Max Hata
前回までの3回のポスティングに続き、今回も長期グリーンカード放棄時に適用されるMark-to-Market課税の詳細を続ける。今回はMark-to-Market規定により発生する税金の支払い繰り延べ選択に関して触れる。

*税金支払い繰延選択

グリーンカード放棄時に適用されるMark-to-Market課税が「みなし売却課税」であることから、通常のキャピタルゲインのケースと異なり税額を支払う原資が存在しない。実際に売ってないのだから当然だ。

税金を払いたくてもキャッシュがないという不都合を解消するためにMark-to-Market規定に基づいて発生する税額の支払いを将来に繰り延べる選択制度が規定されている。支払いを繰り延べることから、本来の税額に加えて金利(IRSが四半期毎に公表するAFRレートプラス3%)が課せられる。IRSとは「Tax Deferral Agreement」と呼ばれる正式な契約を締結することで繰り延べが認められる。この契約書の雛形がNoticeに添付されている。

*いつまで何を繰り延べできるか?

この選択をすると税金の支払いは、対象資産が実際に売却された年、またはグリーンカードを放棄した者が死亡した年、のどちらか早い年まで繰り延べることが認められる。もちろん、本人が望むのであれば、それ以前に税金プラス金利を支払うのは自由だ。

この選択は資産毎の選択となるので、一部の資産に関しては税金をグリーンカード放棄時(正確にはグリーンカード放棄を含む課税年度)に支払い、他は後に繰り延べるという処理が可能となる。米国の居住者はキャピタルゲインを含む全ての所得を「総合課税」という形で一つの税金として納付する。このことから、個々の資産のみなし売却益に対する税負担の金額は申告書を見ても分からない。したがって、いくらの税金を繰り延べているのか、という決定をするためには何らかの仮定が必要となる。ここでは、もしMark-to-Market規定に基づくみなし売却益があった場合と、なかった場合の申告書を作成してみて、その税額の差額がMark-to-Market規定に係る税負担であると仮定することとされている。また、その税負担額を各資産に配賦する際には、税額を「各資産のみなしゲイン」と「みなしゲイン合計」の比率按分法を用いるものとしている。この算定目的ではゲインのある資産のみが関係してくる。

*担保

繰り延べの選択を行うと、将来の税金徴収を保証するためにいくつか条件が課される。まず、将来の税金支払いタイミングで、租税条約上の恩典を利用してIRSによる徴収手続きを回避するような行動にでないこと、また税金の支払いを確実にするために担保を提供する必要がある。担保はIRS側が十分であるとみなす担保金証書(Bond)または信用状(LC)という形で提供される必要がある。

万一、差し出された担保が十分でなくなった場合には、30日以内に十分な担保を提供しない限り、その時点で税金プラス金利の支払いが必要となる。

相手が非居住者になった後で税金を徴収しなくてはならないことから、IRSとしては法的に徴収その他の手続きが問題なく行える万全の体制を整えておきたく、そのため、繰り延べの選択をする際には、グリーンカードを放棄する者が米国居住者を代理人選定しておく必要があるとされている。

このように支払いを繰り延べるには結構なペーパーワークが必要となることが分かる。次回はその他の細かい規定に関して話を進めて行きたい。
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