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三軒目の家(7)〜決断

F Fries

エバンストンの家の値段の相場というのはわりと判りやすくできていて、一口で言えば、大きくて湖(ミシガン湖)に近いほど高い。アパートから職場までの通勤路は比較的、湖に近いところだったので、これよりも東(湖側)は無理だろうなあと思いながら毎日通勤していた。案の定、通勤路の途中で見かけるFor Saleの家の値段を調べてみると、ちょっとした家で60万ドル、少し大きくなると70万ドルといった手の届かない値段ばかりだった。

それがある日、予算の45万ドルを少し上回る価格帯でサーチしていると、なんと通勤途中で見かける「あの家」が出て来たではないか!「あの家」というのは湖からたったの3ブロック、落ち着いた感じのFarm house(広告にはVictorianとあったが、あれをVictorianと呼ぶのはちょっとやり過ぎ)で、家の前には大きな常緑樹がそびえ、前庭のベンチに腰掛けた女性が子供達を遊ばせていた家である。立地条件からして絶対60万、70万ドル台だろうと思っていただけに、この価格設定はやや驚きだった。

実際に家を見ると、その値段の謎が解けた。キッチンはちゃんとリモデルされ、屋根裏にベッドルームとバスルームを新しくつけた感じのよい家だが、なんと敷地内に駐車スペースがないのである。現在のエバンストンの市条例によれば、新しく一軒家を建てる場合は敷地面積はどれだけ以上、建ぺい率はどれだけ、駐車スペースはどれだけと決まっているが、この条例ができる以前に建った家には条例は適用されない。だからアメリカの郊外のくせに駐車スペースのない家などというものが未だにまかり通ることになったのである。(家を壊して建て直そうとすると条例に沿って建てねばならないので、実質的には家は壊せないことになってしまった。)

偶然とはおもしろいもので、ちょうどこのとき、この家の隣の、構造的にほぼ双子ともいえる家も同じくらいの値段でFor Saleだった。双子の方はslumlordが学生相手に部屋を貸している物件で、骨組みはしっかりしているけれど内装はめちゃくちゃ。大勢の学生(3ベッドルームに加えて屋根裏、地下に二人ずつくらい入れてたから、合計7人か?)が出たり入ったりすることに近所の目がうるさくなり、嫌気がさしたslumlordが売りに出すことにしたらしい。ただこちらは駐車スペースという大きな特典があった。しかしここに人間が住むには相当改装費がかかるだろう。

さて、駐車スペースを取るか、改装済みのキッチンを取るか。

文句の多い同居人は改装済みのキッチンを選んだ。

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