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家の登記のこと

F Fries

アメリカで家を買う(分譲マンションも含めて)と、その事実は郡(カウンティ)の役所に記録される。その記録は公の文書で、役所に行けば誰でも自由に閲覧できることになっている。そして、これがいかにもアメリカ的だと思うのだが、その記録は地元の新聞に載るのだ。

アメリカの新聞は、基本的に「地方紙」である。世界に名立たる大新聞、ニューヨーク・タイムスにせよ、ワシントン・ポストにせよ、地方紙としての性格は残っている。ニューヨーク・タイムスには「全国版」があるので、その全国版を読んでいる限りは地方色はあまり感じないが、ワシントン・ポスト(インターネット版ではなく、実際の紙面)は原則的には今でもワシントンDC及びその近郊の地方紙である。地元の高校のインターハイの成績や、「わたしたちの町の自慢」みたいなのが、堂々と載る。冠婚葬祭の記事はすっかり減ってしまったが、それでも「葬」の部分は、「死亡広告」という形で残っている。そして、「最近の不動産取り引き」は売り主、買い主のフルネームと、物件の住所、価格入りで掲載されるのだ!

はじめてこれを見たときには、ギョッとした。当時、ポスト紙は、週に一回、取り引き記録を掲載していたので(載る場所と曜日は固定しているから、新聞全体を探す必要はない)、たとえば職場の同僚が最近家を買ったらしい、なんてことがあれば、それから数週間、毎週注意して新聞を見ていれば、「ほう、あの人は、こんなところにこんな値段の家を買ったのか。予想外に金持ちだな。」なんてことが簡単にわかるからである。

実際、不動産エージェントのおばさんに、この件をちらりと尋ねてみたら、「そうなのよね、あれは全部載るのよ。『記載しないでください』なんてこと出来ないのよ。うちも今の家を買ったとき、主人が職場で『あんたとこ、えらい金持ちやってんな。』と皮肉を言われたって言ってたわ。あなたも載るわよ。」ということだった。

役所はこの記録を住宅の評価額の基礎にし、固定資産税の算出のために使うのであるが、最近ではこのデータベースがコンピューター化され、ネット上で公開されている。住宅の評価額は定期的に更新されるので、このデータを元に、「わたしの家は近所の同じような家よりも高く評価されており、従って固定資産税も高くなっている。これは不公平である。」と申し立てることができる、という便利な面もある。(税金が上がれば、とりあえず文句を言ってみるのがアメリカ式です。)どうせ新聞に載る内容なのだから、ネット上で公開されても致し方のないことではあるが、それでもやはり、こうもあっさりとデータが公開されては、ちょっと心もとない気分がしないでもない。(試しに、我が町にお住まいの、某有名人のデータを探したら、おうちの住所と家の評価額が簡単に分かりました。いいのかしら、こんな簡単に分かってしまって…)

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