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リスクとリターン:Bill Miller氏の場合

ポピー

「あの人は今?」といった感じで、Bill Miller氏の近況をレポートするWSJ誌の記事があった。

Mutual-Fund King Bill Miller Makes Comeback

Bill Miller氏はLegg Mason Capital Management Value Trust Fund (LMVTX)というMutual Fundの投資マネージャーで、1991年から2005年までの15年間連続でS&P500を上回るリターンを出して、Mutual Fund業界の伝説的な存在だった。

以前は、インデックス運用 v.s. アクティブ運用の議論になると、後者の成功例としてよく彼の名前とファンドが挙げられていたものだ。

しかし、先の金融危機で、早期回復を見込んだMiller氏は、金融・住宅関連株(AIG, Wachovia, Freddie Mac, Bear Stearns etc.)を買い込んだが、予測が大きく外れてファンドの単位価格はピーク時の4分の1近くに下がってしまった。同時期にS&P500が半分弱に落ち込んだのと比べても、劇的な下がり具合。

それ以来、Miller氏と彼のファンドは、リスクとリターンの相関関係を説明するための逸話になる。

高リターンを狙うには、高リスクを取らなくてはならない(例えば、先の金融危機時に金融・住宅関連株を買うような事)。高リスクを取ったから、それが高リターンにつながるという保証はない。それがペイオフすることもあれば、しないこともある。しない確率がいくらかあるからこそ、高リスクと呼ばれるのだし。

市場全体がイケイケムードで上がっている時は、投資家の才能と幸運を見分けるのは難しい。プロも素人も、高いリスクを取りそれが運よく高いリターンを出すと、才能の成果だと悦に入ったり、世間の賞賛をあびたりする。

Miller氏にしても、お値打ち株を見分ける才能のあるマネージャーで、彼の見込みが当たったことも多数回あったに違いない。しかし、高リスクの投資がペイオフするかどうかは、投資マネージャーの才覚では完全にコントロールできない不確定要素が影響する。天才と呼ばれたMiller氏の見込みも、最悪の形で外れることもある。

Miller氏は、金融危機当時は毎晩2,3時間単位でしか眠れず、夜中に目覚める度に携帯で海外市況をチェックし、そのまま仕事場に出かけるように日が続き、ストレスのせいで40ポンドほど太ってしまったという。金融危機と関係あるかどうかは分からないけど、奥さんとも離婚したらしい。

Miller氏は、2011年にLegg Mason Value Trust Fundのマネージャーを辞めた。今は別のマネージャーがついて、名前もClearbridge Value Trust Fundに変わり、底値から167%ほど回復しているが、前のピークに比べるとまだ低い。

Miller氏は、Legg Mason Opportunity Trust Fund(LMOPX)というもっと小さい別のファンドに専念し、それが非常に好調で、金融危機の底値から4倍程上がっているという。でも、このファンドの価格も、金融危機でピーク時の6分の1程まで下がったので、まだ前のピーク価格までは回復していない。

アメリカの金融業界は、リスクをバンバン取って登り詰めた後で暴落させた投資マネージャーには意外と寛容なので、Miller氏もまた伝説として復帰するかもしれない。不思議な世界である。

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