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Taxクレジット

クレジットとは?

税制でクレジットといえば、税額を直接減らしてくれる項目の事です。控除は課税対象になる収入を減らしますが、クレジットは税額を直接減らします。例えば、控除が$1000で、自分のTax Bracket(税区分)が28%だとすると、$280の節税になります。これに対してクレジットが$1000あれば、税額自体が$1000減ります。このように控除の場合は自分のTax Bracketによって節税額は違いますが、クレジットの場合は自分のBracketによらず、金額ベースで税金が減ります。そのため、一般的には控除よりもクレジットのほうが有利となります。 このページの金額は、それぞれのセクションの執筆時点のものです。これらのクレジットを利用する際は、必ず申請年度の金額を確認してください。

クレジットの種類

クレジットには大きく分けて、RefundableとNonrefundableに分けられます。Refundable(払い戻し可能)とは、もし、クレジットの額が税額よりも多くなった場合、差額を納税者に払い戻すという意味です。例えば、クレジットを除く納税額が$500だったとします。もしRefundableクレジットが$1000あれば、納税額$500を一切払わないで良いだけでなく、差額の$500をIRSから「払い戻す」つまり実質的にはもらえることになります。Refundableクレジットは種類が限られますし、適用できる条件が決まっているので、実際に払い戻しになることは稀ですが、それでも、もしチャンスがありそうならしっかりと確定申告を計算してもらえるものはもらいましょう! それに対して、Nonrefundable(払い戻し不可能)とは、クレジットは最大でも納税額を超えず、その年の税額を減らすためだけに使える、という意味です。クレジットが納税額を超えても、差額を現金としてもらうことはできません。また、クレジットの超過分は特定の項目を除き、次の年に繰り越すことはできません。

Refundableクレジット

Earned Income Credit

Earned Income Credit (EIC)は主に子供がいる低所得者に対してSocial Security Taxを軽減するために設定されたものです。EICが適用されるのは次のような条件を満たした場合です(金額は2009年の場合)。
  • 子供がいない場合、Earned IncomeとAGI(Adjusted Gross Income)のどちらもが$13,440 (夫婦合算の場合は$18,440)以下であること
  • 子供が一人の場合、Earned IncomeとAGIのどちらもが$35,463(夫婦合算の場合は$40,463)以下であること
  • 子供が二人以上の場合、Earned IncomeとAGIのどちらもが$40,295(夫婦合算の場合は$45,295)以下であること
  • 子供が三人以上の場合、Earned IncomeとAGIのどちらもが$$43,279(夫婦合算の場合は$$48,279)以下であること(子供が三人以上の条件は2009年より)
  • 夫婦別々に確定申告しないこと(Married Filing Separatelyは申請できない)
  • 労働所得があること
  • 利息や配当金など投資による収入が年間 $3,100以下であること
  • 本人、配偶者、および子供すべてがSSN(Social Security Number)を持っていること。ITINやATINでは代用できない
  • Nonredident Alien(非居住外国人)でないこと
実際のクレジット金額は$1から最大で$5,657になり、子供の人数と収入に応じて決められます。

Additional Child Tax Credit

Additional Child Tax Creditは後述するChild Tax Creditに追加して計算されるクレジットです。Child Tax CreditそのものはNonrefundableですが、Additional Child Tax CreditがRefundableになる場合があります。計算は少し面倒で IRS Form 8812 を使って Additional Child Tax Creditを計算します。このクレジットはEarned Income Creditなどに影響しますので、他のクレジットを使っている人の場合、計算はさらに複雑になります。

Nonrefundableクレジット

Child Tax Credit

Child Tax Creditは、17歳未満の子供一人につき$1,000のTax Creditがもらえるものです。Child Tax CreditはNonrefundableですが、上記のAdditional Child Tax Creditに書いてある通り、条件を満たせば最終的に一人当たり$1,000のクレジットがもらえる場合があります。Child Tax Creditは子供がいる家庭の多くが適用できる可能性のあるクレジットです。適用できるのは下記の条件を満たす子供です。
  • 確定申告本人の実子、配偶者の連れ子、もしくは養子である
  • 申告する年に17歳未満である
  • 生活費の半分以上を自分でまかなっていないこと
  • 申請年度の半分以上の期間、申請者と同居していること
  • 米国市民、もしくは在住外国人である
また、申告者本人の収入の制限もあり、MAGI(Modified Adjusted Gross Income)が下記の金額までは一人につき$1,000のクレジット満額が適用されます。
  • Married filing jointlyの場合、$110,000まで
  • Single もしくは Head-of-Householdの場合、$75,000まで
  • Married filing separatelyの場合、$55,000まで
収入(MAGI)が上記の金額以上になった場合、クレジットは徐々に減額されます。減額は収入制限を$1,000越える毎に(端数は切り上げ)、クレジットが$50減額されます。つまり、収入制限を$20,000越えると、一人分のクレジット$1,000が無くなる計算です。減額方法は収入制限に対する超過分で計算されるので、同じ収入であっても子供が多いほうがクレジットは多くなります。 またChild Tax Creditは子供に関するほかのクレジットの代わりではありません。このクレジットと同時に他のクレジット(Earned Income Credit や Child Care Credit)も申請することができます。

Hope Credit

大学などの高等教育に費用が掛かった場合、一人当たり最高で$1,650のクレジットが申請できます。確定申告の本人、配偶者、もしくは控除対象になる扶養家族(子供)の教育費が対象になります。このクレジットは高等教育の最初の2年間しか、申請できません。4年制大学の場合、1、2年生の年しか申請できないことになります。 教育に掛かる費用(授業料や学校に払う手数料など)から、奨学金や会社からの補助金を引いた、実質の負担額がクレジット金額の計算の元になります。この自己負担分のうち、$1,100にまでは100%、それを超える分に関してさらに$1,100までは50%のクレジットが認められます。例えば、自己負担が$1,600だった場合、$1,100 x 100% + $500 x 50% = $1,350のクレジットになります(金額は2006年の場合)。 このクレジットにはMAGI(Modified Adjusted Gross Income)の収入制限があります。Singleの場合は$45,000まで、Married filing jointly の場合は$90,000までは制限なしにクレジットが認められますが、MAGIが$55,000(Single)または$110,000(Joint)を超えるとクレジットはなくなります*1。 このクレジットは一人当たりの教育費について最大$1,650までですから、二人の子供が同時に大学の1、2年生だった場合などには、それぞれについてクレジットが認められます。なお、このクレジットをLifetime Learning Creditと同時に同じ人に対しては申請できません*2。また、最低でも2分の1以上の期間、学校に籍がある必要があります。

Lifetime Learning Credit

Hope Creditは2年間しか使えませんが、Lifetime Learning Creditはいつでも使えます。最大額は$2,000までです。Hope Creditの場合は一人当たりで計算しましたが、このクレジットは申請書全体で$2,000までになっています(金額は2006年の場合)。 対象となるのは自己負担の教育費の$10,000までで、その費用の20%がクレジットになります。例えば、その年に払った授業料が$8,000で、雇用主が$5,000負担した場合は、自己負担額$3,000 x 20% = $600 がクレジットになります。 Hope Credit と違い、Part-timeの学生でも認められるので、働きながら夜間、学校に通って勉強している場合も対象になります。また、例えば子供が大学1年生でHope Creditを使い、親がPart-timeで勉強して Lifetime Learning Creditを申請するということも可能です。 Hope Creditと同様の収入制限があり、MAGIが$45,000/$90,000(Single/Joint)まではクレジットが満額認められ、$55,000/$110,000まではPhase-out(割合に応じて減額)していきます。それ以上になるとこのクレジットは認められません*3

Foreign Tax Credit

Foreign Tax Creditとは、外国で発生した収入に対して外国と米国で2重課税にならないように、外国で徴収された税金をクレジットとして扱うものです。駐在員が日本円でも給与を受け取っている場合や、日本に銀行口座/投資口座があり利息や運用収入が発生する場合は、税金も日本で取られています。日本で課税された金額をクレジットにすることで、日本の収入に対してアメリカで2重に税金を取られないようにします。 外国で徴収された税金は控除(Deduction)として申告することもできますが、多くの場合はForeign Tax Credit を選択したほうがメリットが大きくなります。理由は
  • クレジットは直接税額を減らす(控除は課税対象の収入を減らす)
  • 標準控除を選択している場合でもForeign Tax Creditは申請できる
  • クレジットの繰り戻し、繰り越しができる
Foreign Tax Credit は外国での収入と米国内での収入の割合に応じて申告できる上限(Limit)が決まります。例えばある年のLimitが$300で、実際に外国で収めた税金が$500だった場合、その年に申告できるクレジットは$300だけです。しかし、Foreign Tax Credit はその特徴として、繰り戻し(2年間)、繰り越し(5年間)ができます。繰り戻し(Carry Back)とは、その年に使えなかった外国での税金(Unused Foreign Tax)をあたかもそれ以前の年に払ったかのように扱うことです。上記の例で言えば、$200が使えませんでした。もし、それより過去2年間の間に外国での収入と税金があり、Limitまで使っていなかった場合、$200を過去にさかのぼってクレジットとして申請できます*4。 また、使えなかったクレジットは繰り越す(Carry Over)こともできます。来年以降5年先までで外国の収入があった場合にクレジットLimitに達しなければ、使わなかったクレジット分も(Limit額まで)申請できます。繰り戻し/繰り越しのルールとしては、最初に繰り戻しを計算し、繰り戻しが可能ならそちらを先に使います。繰り戻しができなかったり、繰り戻ししてもまだ使っていないクレジットが残る場合、それ以降の年に繰り越していきます。 Foreign Tax Credit の申請には Form 1116 の提出が必要ですが、以下の条件を満たす場合、Form 1116の提出は必要なく、上記のLimitも適用されません。
  • 外国での収入がPassive Income(利息など)だけである
  • 外国での納税額が$300(Single)/$600(Joint)以下である
  • すべての海外でのPassive IncomeがForm 1099-DIVや1099-INTで報告されている
ただし、この方法を使うと、上述のCarry Back/Carry Overは使えません。1099-INTなどが必要なことから、日本のアメリカ系銀行(CITIBANKなど)に預けている場合などが該当します。 Foreign Tax Creditを適用するにはその他にも税金の種類など細かいルールがあり、利息収入以外の場合は複雑になります。AMT(Alternate Minimum Tax)が課せられる場合もありますので、会計士に頼むか、自分で申告する場合はIRSのPublication 514をよく読んでください。
*1:Married filing separatlyの場合は、このクレジットは認められません。
*2:つまり、一人がHope CreditとLifetime Learning Creditの両方を使うことはできません。
*3:Hope Creditと同様にMarried filing separatlyの場合は、このクレジットは認められません。
*4:過去にさかのぼるのでForm 1040Xによる修正申告が必要になります。