専門家のためのアメリカ・タックス(米国税務)

アメリカの税務戦略最前線で日本企業に税務アドバイスを行う弁護士・会計士が日本企業・個人として知っておきたい米国タックス・トピックを選び詳細かつ簡易に解説。

About Me

Max Hata (秦 正彦)
Los Angeles, CA, United States
Ernst & Young LLP International Tax Partner/Japan Business Services U.S. Tax National Leader
東京都出身・上智大学外国語学部英語学科卒/ 日本企業で2年間輸出業務、ファッションメーカーで4年間海外生産業務等を経験した後、英国、香港、米国にて公認会計士の資格を取り、香港で4年、米国で 16年、国際税務コンサルティングに従事。Deloitte会計事務所タックス・パートナーを経て2008年9月より現職。米国では弁護士の資格も有する。セミナー、記事投稿多数。数多くの日本企業米国オペレーションに税務アドバイスを提供している。連絡先は「ustax.by.max@gmail.com」。

「専門家のためのアメリカ・タックス(米国税務)」の著作権はMax Hata/秦 正彦 に帰属します。
Copyright (c) 2007-2010 Max Hata

ついに米国もテリトリアル課税に?(2)

2012/01/20 00:55

前回のポスティングでは2011年後半の大きなニュースとして米国版テリトリアル課税の法案に関して触れ始めた。テリトリアル課税の基本的な考え方、世界のトレンド等の背景を中心にカバーしたが、今回は規定の内容そのものに移りたい。

*法人税率は25%に

今回の米国テリトリアル課税法案は単に米国の国際課税システムを根本的に変えてしまうばかりでなく、複雑かつ高税率で評判の悪い米国法人税システムの抜本的な改正を目指している。その目玉となるのが法人税率の35%から25%への低減だ。ご存知の通り、米国の35%という税率は世界でも突出して高い。日本の更に高い税率がなければ世界一だ。多くの国の法人税率を見渡してみると平均は25%くらいというのがザックリとしたイメージだろう。

にも係らず米国企業の実効税率が低く、20%前半が珍しくない点は過去のポスティングで散々触れている。でもこの実効税率はグローバルの連結ベースなので米国での税コストだけではない。実際に米国企業の実効税率が低い理由の多くは低税率国のかなりソフィスティケートされた利用にある。

ついに米国もテリトリアル課税に(?)

2012/01/13 04:29

明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。

という訳で2011年は超多忙の中アッという間に終わってしまった。米国税務の話しに限れば数々の新しい税法が発表され、そういう意味では面白い年ではあったが、一方で日本では震災があったり、神殿で聖なるイメージのギリシャ経済が崩壊してユーロが危機に陥ったりといろいろと考えさせられることも多かった。ドイツの信用力でお金を借りて返せなくなってしまったギリシャとか、準備通貨(Reserve Currency)を印刷できるのをいいことに相変わらず身の丈に合わないライフスタイルを続ける米国とか、せっかく毎年Million Miles乗ってあげているのに破産法の下に入ってしまったアメリカン航空の今後とか、30日以上晴天続きで雪が少ないマンモススキー上のリフト券がRFIDになってクレジットカードのようだったとか、タックス以外のことで書きたいことも沢山あるがきりがないので今年も大人しく(?)米国タックスの話しをしていくことにする。

ミリオネアー課税「バフェット・タックス」(2)

2011/10/23 14:23

前回のポスティングではミリオネアー課税であるバフェット・タックスの背景を紹介したが、今回はバフェット・タックスそのものに触れる。

*バフェット・タックス

ミリオネアーが一般家庭より低い税率で課税されているのはおかしいので富裕層の課税を強化しようというアイディアは説得力もあり違和感はない。オバマ政権も財政赤字対策の一環でバフェット・タックスを法律化するよう議会に提案している。しかし、実際にどのように実行するのかという点は未だ明確ではない。財務省も「いろんな考えがある」という程度の方向性しか表明していない。

一番分かり易く行くのであれば、キャピタルゲイン、配当に対する優遇税率を撤廃してしまうのがいいだろう。これで全て解決しそうなものだが、そうすると潜在的に億万長者ではないけど、投資所得で暮らしている善良な市民にも影響がある。

ミリオネアー課税「バフェット・タックス」(1)

2011/10/23 14:13

米国の著名投資家で億万長者の代名詞とでもいえるウォーレン・バフェット氏が「自分の税率が一般家庭より低いのはおかしい」という至極もっともな理論でミリオネアーの課税強化を提唱した。

累進税率かつ総合課税の米国でなぜ何百万ドルも収入がある者が、所帯当りの所得が20万ドル位の一般家庭よりも低い税率で課税されるようなことが起こり得るのか単純に不思議に思われる方もいるだろう。

米国は総合課税だが、キャピタルゲインと配当は特別に15%という上限税率が規定されている。90年代はキャピタルゲインのみ15%だったが、ブッシュ政権が2001年~2003年に実施した減税で配当も15%上限となった。分離課税に似ているが、総合課税の枠の中で上限税率が規定されているというのが正しい。すなわち、キャピタルゲイン、配当も他の所得同様に申告書に載せて、そこから人的控除だの個別控除を差し引いて累進税率を適用するが、キャピタルゲイン、配当部分には15%のリミッターが掛かる。キャピタルゲインや配当があっても小額であれば控除で消えてしまい、税負担がないこともある。この辺りの計算は結構面倒で「たかが」個人所得税で給与と配当、キャピタルゲインがあるだけのような局面でもコンピューターとか申告書作成ソフトのヘルプなく申告書を作成するのは困難な状況に陥る。

アメリカ版「パテント・ボックス」?

2011/10/09 11:00

ここ何年かの間に世界各地ですっかりお馴染みとなりつつある税法に「パテント・ボックス」というものがある。オランダ、ルクセンブルグ、アイルランド、ベルギー、スペイン、フランス、スイスというどちらかというと納税者フレンドリーなヨーロッパ諸国に加えて中国も同制度を導入している。また2013年からはいよいよ英国でも採用される見通しとなり、ますます市民権を得つつ感じがある。そこでいよいよアメリカでも、ハイテク、製薬業界等のプッシュに基づき、導入論が浮上してきている。

*パテント・ボックス

パテント・ボックスなどというと、パテントを入れる魔法の箱(そんな箱ない!)、または特許技術に基づいて製造されたハイテクな箱をイメージするかもしれない。

実はボックスとは言え、本当の箱ではなく、基本的な仕組みは、パテントを取ってそれを利用した製品から得られる所得を「別ボックスに入れ」は、一般の法人税よりも低い税率を適用してあげましょう、というものだ。世界的な傾向として通常の法人税率は25%前後のところが多いがパテント・ボックスに適用される税率は10%~15%といったイメージだ。

損失を持つ子会社の利用法(3)

2011/09/20 21:00

前回までのポスティングで無価値の子会社株式を通常損失として計上する方法のいくつかに関して触れてきた。その流れで連結納税の対象となっている子会社株式の税務簿価の算定法に関して書いたが、今回は簿価がマイナスとなるケースに触れる。

*Excess Loss Account

簿価というものはゼロが最低というのが基本的な考え方なので、技術的に言うとマイナスの簿価というのは存在し得ない。だが子会社株式に対してInvestment Adjustmentを加えていくと簿価がゼロを下回ることがある。このマイナスの簿価を「ELA(イー・エル・エーと発音するアクロニム!)」と呼ぶ。ELAなどと言うと専門家っぽいが実態は単なるマイナスの簿価である。

このELAをもった状態で株式を売却でもしてしまうと、売却代金が僅かであっても、ELAの金額は丸々ゲインとなるので注意が必要だ。例えば、二束三文の子会社をようやく誰かに$100で買ってもらうとする。受け取る売却代金は$100なのでゲインの上限は$100かのように思えるがELAがあるととんでもないことが起こる。もしELAが$1,000,000あると、ナント$10,000,100のキャピタルゲインが発生するこになる。

*ELAとSec.338(h)(10)

損失を持つ子会社の利用法(2)

2011/09/20 20:42

前回のポスティングでは無価値の子会社株式を通常損失として計上する方法に関して書き始めた。無価値となった子会社を清算するのが基本的な考え方だが会社法上、本当に清算しないでも税務上は清算したかのように取り扱うことができることがある。今回のポスティングではそんなみなし清算を実現できる取引形態のひとつであるSec.338(h)(10)選択の話しから入りたい。

*Sec.338(h)(10)と無価値株式

Sec.338(h)(10)は連結納税をしている(またはすることができるが敢えて選択していない)子会社を売却した際に、売り手となる親会社と買い手がJointで選択することで適用が可能となる。通常のSec.338(=(g)選択)と異なり両者合意の必要がある。Sec.338(h)(10)はS Corpの売却にも利用できるがここでは連結子会社を例に話しを続ける。