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新型コロナウイルス対策法フェーズ3法案に潜むTCJAテクニカル修正規定 – Downward Attribution例外復活その他

コロナウィルス対策法の第三弾が近日中に可決される予定だっていう点は前回のポスティング「新型コロナウイルス対策法第二弾可決で米国は次の「ピラー3」突入」で触れたけど、Mitch McConnell率いる上院共和党が第三弾法案を提出した。「Coronavirus Aid、Relief、and Economic Security Act」だ。略して「CARESA」かな?23ページの法案とは言え、コストは2Tドルに近づいていると言うことだから、1ページ当たり100Bドル(10兆円!)という高価な法案だ。

それにしても昨日まで$1Tと言われていたのに、各産業を代表するロビイストたちが暗躍し、より広範なセクターに高額の公的支援をすることになっているかもしれない。また民主党が譲らない失業保険の拡充も大きなコストとなる。州政府が、レストラン、バー、ジム、等の営業を禁止し、市民に外出しないよう促しているんだから、公的支援が必要な産業や失業保険が必要な個人も後を絶たないだろう。NewsomeにしてもCuomoにしても、経済的コストは覚悟の上、苦肉の策として究極のDraconian策を打ち出しているだろうけど、どこかで何とかしないとね。Q2はあきらめるとしてQ3には復活して欲しいものだ。

で、対策法第三弾、税務的には、「Recovery Rebate」と名付けられた適格納税者に対する1,200ドルの現金支給、申告書提出期限の7月15日への変更、慈善団体への寄付金一部のAbove-the-Line控除や控除枠の拡充、予定納税や給与税の支払い遅延、と並び、前回から触れているNOL使用時の80%所得制限の2020課税年度における適用一時停止、Section 163(j)の支払利息損金算入制限のEBITDA x 「30%」の枠を2019年および2020年課税年度に関して「50%」への引き上げ、等、予想された内容のGoodiesが並んでいる。

で、そんな中で法案を見てビックリだったのが、TCJA絡みの複数の規定にかかわる修正法案(Technical Correction)が盛り込まれている点。中でもナンとTCJAで撤廃されていたSection 958(b)(4)、すなわち外国法人がCFCに当たるか、また米国人が外国法人の「米国株主」に当たるかの決定時に外国人から米国人には持分がみなしでDownward Attributeされてこない、という従来の有益な例外規定が復活することになっている点。さらにその上、Section 951Bという条文を新設して、元々達成したかった立法趣旨をより厳密かつ狭義に規定した形でのDownward Attributionの適用を規定しているのだ。Technical Correnctionなので、TCJAの発効時に過去訴求して適用となる。2年半も経っているのに。

TCJAは、ご存知の通り2017年12月に電光石火の早業で可決されたことから、法文そのものが必ずしも立法趣旨を反映していない条文が存在する点が可決当時から指摘されており、可決後早々にTCJA立法立役者の張本人である下院歳入委員会長のBrady自らが修正法案(「Technical Correction」)を草稿していた。修正が必要と認識されている規定の代表的なものが、他でもない、従来存在していた「Downward Attribution例外規定」の全面撤廃にかかわるものだった。

チョッとおさらいしておくと、米国で法人に対する持分を論じる際、大別して、直接持分、間接持分、みなし持分を考えないといけないことが多い。みなし持分というのは実際には自分は所有していないけど、自分と何らかの関係にある者が所有している持分をあたかも自分が所有しているかのように取り扱うというものだ。その意味で間接持分、すなわち自分が所有している事業主体が所有する他の事業主体の持分を間接的に所有しているかのように取り扱う規定、はみなし持分とダブルけど、みなし持分はもっと広範で、特定の家族メンバーの所有している持分がAttributeされてきたりする。中でもチョッと直感的に分かり難いのがDownward Attribution。法人に関しては、50%以上の株主が所有する持分は自分が「全て」所有しているかのように取り扱われる。例えば50%ピッタリ自社Xを所有する株主が他社Yの100%株式を所有している場合、自社Xは他社Yの100%をみなしで所有しているように取り扱われる。パートナーシップに至っては、どんなに少数の持分でもパートナーが所有している株式は全てパートナーシップがみなし所有していることになる。例えば、5%しかパートナーシップXの持分を所有していないパートナーがY社株式100%を所有している場合、パートナーシップXはY社の100%をみなしで所有しているように取り扱われる。遺産や信託に関しても同様に受益者からの広範なDownward Attributionが規定されている。また、みなしで所有していると取り扱われる持分は、一定の例外を除きそこからさらにAttributeされていくのでたちが悪い。

このDownward Attributionそのものは、今も昔もそのまま存在し続けてるんだけど、クロスボーダー課税の検討局面、すなわち外国法人がCFCなのか、とか米国人が外国法人の10%持分を所有する米国株主なのか、とかの判断時には、従来は、外国人が所有している持分を米国人がDownward Attributionを通じてみなし所有しているとは取り扱わない、というとても有益かつ常識的な例外規定が存在していた。Section 958(b)(4)だ。TCJAはインバンド企業のCFCに対するDe-Controlling、例えば米国子会社が所有する100%CFCの51%持分を日本の親会社に譲渡して、外国法人をCFCでなくしてしまうような取引、等を阻止するため、Downward Attribution例外規定をまるまる撤廃していしまい、結果としてDownward Attributionがクロスボーダー課税の全ての局面で取り込まれることになってしまった。Sub Fに加えてGILTIが導入されたり、Transition Taxが規定されたりしたので、その適用はDe-Controlling取引等を取り締まる目的を大きく逸脱してしまったのだ。それに気づいた議会は早速、Technical Correctionドラフトを公表したが、後の祭り。TCJAそのものは予算調整法を利用して共和党だけで可決できたけど、Technical Correctionは通常の法律通り、上院にて単なる多数決ではなく60票の賛成が必要なので、民主党の賛同が不可欠。コロナウィルス感染という共通の敵が現れるまで、弾劾裁判だの何だのと党派の戦いに忙しかったので、とても可決の見込みはたってなかった。

今回、コロナウィルス対策法第三弾の法案で、この部分のTechnical Correctionをチャッカリ取り込んでいるのは賢い。この修正はもちろんコロナウィルス対策とは関連はないに等しいけど、Technical Correctionのみでの可決は不可能に近い政局の中、可決Mustとなるコロナウィルス対策法案に盛り込めば、修正が法制化できるからだ。

で、具体的には「Downward Attribution例外復活」とかなり直接的なタイトルで規定される修正規定は、従来のSection 958(b)(4)をそのまま甦らせている。一語一句そのまま。なつかしい~。夢のようだ。そして、更にSection 951Bという条文を新設している。Section 951っていうのは元々Sub F合算を規定している条文で、Section 951Aはお馴染みGILTI。この「A」とか「B」って意味深に聞こえるかもしれないけど、実は特に大きな意味はなく、951に準じる規定なんだけど、952とか953が既に取られているので、無理やり951と952の間に押し込んでいるだけの話し。

Section 951Bは、基本Downward Attributionは適用しないけど、特定の取引でDownward Attribution例外が濫用されていると思われる局面に限定して、Downward Attributionを適用していると同様の効果をもたらす面白い規定になっているように見え、BradyのTechnical Correctionドラフトに規定されていたSection 951Bと同様に見える。Downward Attributionを適用したとして、外国法人の50%超の持分を所有することになる米国人を「Foreign Controlled United States Shareholder」と定義して、通常の規定、すなわちDownward Attributionは不適用、で判断したらCFCにはならないけど、Foreign Controlled United States Shareholderを米国株主として取り扱うとするとCFCになる外国法人を「Foreign CFC」と定義している。その上で、Foreign CFCやForeign Controlled United States ShareholderにはSub FやGILTIを適用するっていうことみたいなんだけど、従来通り、直接・間接の持分がなければテクニカルにはSub FやGILTIの対象となるケースでも、実際の合算は生じない。

ちなみにSection 958(b)(4)と並び、法文エラーでSection 168(k)即時償却の対象外となっていた適格内装資産への即時償却適用、およびTransition Taxの支払いにかかわる還付制限の緩和もTechnical Correctionとしてしっかり含まれている。どさくさに紛れて結構見せてくれるね。このまま可決するのかな。