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スピンオフとホットドッグ(2)

Max Hata
前回のポスティングで、スピンオフを適格とすることの大きなメリット、スピンオフを利用して実質、投資資産の持つ含み益に法人課税を支払わずに分配してしまう「ホットドッグスタンド」プラニング、そして、それに対抗するため財務省が「全米ホットドッグの日」に規則案を公表した点など触れた。

ホットドッグスタンドを利用したスピンオフは、例えば大企業が巨額の含み益を持つポートフォリオ投資の債権を持っているような局面で、これを売却すると巨額のキャピタルゲイン課税の対象となるので、何とか非課税で分配してしまいたいと考える際に実行される。適格スピンオフにはActiveな事業すなわちATBを分配する(および分配する方にも残す)必要があるので、債権だけを分配しても適格スピンオフにはならない。そこで債権と一緒にホットドッグスタンド(5年間運営していたと仮定)のように極端に小規模な事業を抱き合わせてスピンして非課税とするイメージ。

もしかして日本の読者からするとホットドッグスタンドと言ってもイメージが沸き難いかもしれないけど、これはNYCとかのストリートに点在している屋台のホットドッグ屋で大抵パラソルが2本くらい屋台に差してあって、Pretzel(日本のプリッツではなく20センチくらいのハート型のでかいやつ)、アイス、チョッと不健康っぽいソフトドリンックとか一緒に売ってて、オーダーすると「ケチャップかマスタード?」とか聞いてくる感じのところ。日本的に考えると、駅前に夕方になるとどこからともなく登場してくる屋台の「たこ焼き」屋さんと考えるとよりしっくりくるかも。大企業が投資資産を分配する際に、ついでに5年間たまたま運営していた「たこ焼き」の屋台事業をセットアップにして分配することで、1,000億円単位の含み益が非課税になったりしたらやっぱり通常の感覚としては腑に落ちないだろう。そもそも大企業はホットドッグスタンドとかたこ焼き屋台とか営んでないのでもちろんこれは全て比喩の世界の話し。

ちなみにNYCのホットドッグスタンドのホットドッグは決して安くない。ツーリストの少ないエリアでは$2くらいが平均かもしれないけど、Central Parkの中とかWall街の近くとかだと$4はミニマムで、Pricingが明確でないケースも多い。いかにも観光客風を装うと$8とか言ってくるケースもある。市当局が不透明なPricing、というか簡単に言うと「ぼったくり」に目を光らせていて捕まるとそれ相当の罰金が課されるそうだ。ホットドッグだけ買う客は少ないだろうから、それに水のBottleが$3とか言われるので(近くのDuane Readeとかで買えば多分$1くらい?)、ついでにアイスも、とかいう感じで家族4~5人分買い物すると平気で$40~$50いってしまう。Shake Shackのプレーンなホットドッグが$3.25だからホットドッグスタンドの割高感は否めない。ただ、公園の中とかでお腹が空いたときにその場で直ぐに食べられるメリットは大きい。Shake Shackとかに行くと、まずはそこまで行かないといけないし、着いてからもたかがホットドッグとかのためにオーダーするのにラインに並んで10分、オーダーが完成してBeeperが光るまで更に10分、で結局座るとこなくて立ち食いとか、結局あきらめてC-Lineでシェークだけ買って帰ってきたりとか、かなり面倒。

実はNYCでホットドッグスタンドを営むにはNYCにLicense Feeという名前の「ショバ代」を支払う必要がある。他のビジネス同様「Location、Location、Location」なので、場所によりLicense Feeは大きく異なる。Central Park内のようなPrime Locationに屋台を出すにはナンと年間$200,000を超える金額のFeeを支払う必要があるらしい。一方で人通りが少なめな地味目の場所だったら$2,000程度で済むそうだ。古くからの法律で、復員軍人の方はこのLicense Feeが免除されているケースがあったりと、ホットドッグスタンド業界もグローバル経済同様に熾烈なCompetitionに晒されている。

で、スピンオフだけど、この手の取引はここ数年注目を浴びてはいたが、フロントページで報道されるようになったのはYahooによるアリババ株式のスピンオフからだろう。ヤフーが保有するアリババ株式(15%程度の持分で支配権には到底至らない%)を適格スピンオフしてしまおうというプランだ。従来から程度の差はあれ散々利用されてきたプラニングだっただけに、法的にはポジションは「確立済み」と考えられていたが、適格スピンとなるかどうかで税負担が$10Billion(一兆円!)近くも異なるとも言われているだけにさすがに注目度は抜群だった。

基本的な問題は上でも触れた通り、Yahooとスピンされる側となるNew Co(アリババ株式を出資してスピン用に組成される新設法人)の双方に過去5年従事してきたATBが存在しないといけない、っていうところ。支配権を持たないPortfolio投資のアリババ株式では当然ATB条件を充たすことはできない。そこで、何らかの事業を一緒に出資することで「ATBもちゃんとありますよ」って言う状況を整える必要が出てくる。そこで、ATBの規模は問われないというのが従来からの確立した考え方だったので、アリババ株式と比べて価値が「極端に」低いATBを抱き合わせるて適格スピンにする予定だった。昔のポスティングでも触れたと思うけど、YahooがスピンするNew Coに出資したATBの名前が「Yahoo Small Business」という名称だったと知って、最初は何かの悪いJokeかと思った。でも、本当にそういう名前だったのでビックリというか笑ってしまった。ATBのサイズが問われる局面で「Small Business」っていう名称を冠した事業をATBに使います!っていうのは実質的には関係ないことだけど、知覚的な意味では無神経とは言わないまでもチョッと大胆。せめて商号だけでもYahoo Startupとか何かに変えれば・・?と思ってしまう。

このスピン、結局IRSがRulingを出さないこととなり、法律事務所のオピニオンだけで実行する度胸はさすがになかったのか中止となってしまった。IRS高官がこの手の取引を問題視している旨を弁護士協会の集まりで公言した直後にYahooの株価が大きく下落したことから、このプランがそれ以前は株価にまで織り込まれていたことが分かる。

次は財務省が対抗策として全米ホットドッグの日に公表した規則案に関して。
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