保険とは何らかの損害があった場合、その損害に対してお金で補償してくれる仕組みです。損害に対してお金を払うだけで、損害そのものを防ぐ事とは違う点を認識する事が大切です。
例えば、家に保険を掛けておき、火事で家を失った場合、給付金をもらうことによって家を建て直すことができます。つまり、家がなくなるという損害に対して、お金でできることをしてくれるのです。しかし、火事そのものを防ぐ事はしてくれません。火事を防ぐには火の始末に気をつけたり、電気の配線を検査したり、放火を誘発するような燃えやすいものを外に置かない、など予防策が必要になります。失った物品はお金で直すことが出来ますが、精神的な負担な負担もあります。燃えてしまった思い出の品は同じ物は手に入りません。保険はあくまで金銭的な補償に過ぎないことを忘れないようにしましょう。
絶対に安全と分かっているのであれば、保険を掛ける必要はありません。しかし、人が生きている限り、絶対に安全な事はありえません。では、何にでもいくらでも保険を掛ければ良いという訳でもありません。リスクの度合に応じて保険を掛ける必要があります。
リスクは2つの要素で成り立っていると考えられます。1つはどのくらいの頻度で危険が実際に起こるかです。危険に遭遇する確率と言っていいでしょう。確率の例としては家が火事になる確率、交通事故に遭う確率、理由に寄らず死亡する確率などです。これらの確率は個人に対して確率があるわけではなく、誰に起こるか分からない、しかし統計的にはほぼ確実に一定割合で起こると分かっているものです。交通事故は誰に起こるか分かりませんが、毎年100万人当り何人が死亡する、という数字は大きく変わらないため、ほぼ確実に起こることが予想できます。しかし自分にそれが起こるかどうかは分からないので、保険を掛けておくのです。
リスクのもう1つの要素には、その危険が起こった場合、どの程度の損害が発生するかと言う度合、あるいは規模があります。例えば死亡してしまうということは、いくら確率が低くても、それが発生してしまえば大きな損害と言えるでしょう。それに対して、持ち物がなくなることは、死亡するよりも高い頻度で起こりますが、損害はその持ち物の価値や、無い事による不便などで、死亡するよりも程度は低いと言えます。
リスクを考えるとき、確率と同時に、その損害が発生したら、どの程度の規模なのかも考える事が重要です。
リスクを確率と規模で考えるようにすれば、保険をどんなものに掛けたらいいか、考えやすくなります。
保険が必要になるのは、損害が発生したときに規模が大きいものです。一番の例は死亡してしまう場合でしょう。その人が家計で重要な役割を担っていた場合、その人の収入が無ければ残された家族の生活まで悲惨なものになってしまいます。その人が死亡することだけでも家族にとっては十分悲惨なものなのですから、せめて経済的には悲惨にならないようにしておくのが思いやりと言うものでしょう。また、自分や家族に危害が加わらなくても経済的に大きな損害になる場合も、規模が大きいと考えます。一番の例は損害賠償でしょう。何らかの過失で人に怪我をさせてしまい、障害を負うことになった場合、医療費や精神的な被害、失った収入の代償として多大な金額を払わなければならないこともありえます。
このような危険は確率から言えば低いと言えます。しかし、万が一であっても起こってしまっては大変です。リスクが低くても規模が大きい損害は必ず保険を掛ける必要があります。
それほど規模が大きくなく、自分の一生に関わるようなものではなくても、損害が発生すると経済的に打撃が大きい場合も保険を掛けておくべきでしょう。例えば3万ドルの車が盗難された場合、賠償責任も人への危害もなく、自分の一生がおかしくなることもありません。しかし経済的な打撃はかなり大きいものと言えます。また盗まれてしまったと言う精神的なダメージもあるでしょう。しかも、車が盗難されたり、自損を含む事故で損害を受ける確率は高いと言えます。このような場合も保険を掛けるべきといえます。
損害が発生しても、その規模が小さい場合は保険を掛けずに、損害が発生したらあきらめる方がよいものがあります。例えば電気量販店で勧められるExtended Warranty(延長保証)は、少額の電気製品の場合、故障や盗難でなくなったとしても、あきらめれば済みます*1。
また、車を擦ってしまった場合の簡単な板金修理なども、自分の普段のお金から出せる範囲であれば、わざわざ保険を掛けておく必要もないでしょう。そういった場合、自動車保険の免責額を設定します。例えば$500までの損害は自腹を切ることにすれば、保険額も安くなり、少額の損害のときにいちいち書類を保険会社に出すなどの手間も無くなります。
保険で補償されるものは、保険対象の金銭的な価値といえます。補償されるものが物品の場合には、金銭的な価値には2つの種類があります。市場価値(Market ValueもしくはDepreciated Value)と新品を買った場合の価値(Replacement Cost)です。車であれば、失った時点でのその車の市場価値に応じて支給される給付金が決まります。また、自分の所有物であれば、市場価値の場合も、新品の価値の場合もあります*2。
生命保険などの場合、保険を掛ける人の金銭的価値で保険を掛けるわけではなく、残された家族の生活を守るのが目的です。そのため、その人の資産状況や家族構成などで保険金が決まってきます。例えば、配偶者と子供がいる場合、残された家族が困らないだけの保険を掛けておくべきでしょう。かといって、保険金が多ければよいというものでもありません。保険料が高くなりますし、残された配偶者が何もしなくても今よりも贅沢に暮らせるようにしておく必要はないといえるからです。
賠償責任では補償金額を決めるのはさらに難しくなります。これは損害を被るのが自分ではなく、被害者になるからです。この場合、自分の資産、将来の分も含めた収入、道義的な責任感などの要素で金額を決めることになります。賠償金額が保険で支払われない場合、自分の資産や、将来の収入を失うことになりかねません。そのため、十分な保険金額が必要となります。賠償責任を払いきれなければ自己破産することもあります。自己破産した場合、自分が困るだけでなく、被害者も十分な補償を受けられないと言う問題となります。このような場合、守らなければいけない資産や収入が少なくても、社会道義上、ある程度の保険を掛けておきたいと思う人も多いでしょう。
このように補償されるものの種類によって保険金額は違ってきます。以降の章で保険の内容に応じた金額のガイドラインを示していきます。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson
アメリカと日本では健康保険制度が違い、戸惑う場合もあります。日米のシステムの違いに注意し、自分の状況に合った保険を選ぶようにしましょう。
アメリカの健康保険(Health Insurance)の大きな特徴は民間企業の保険であるという点です。健康保険に関する規制はありますが、日本のように総加入制度にはなっておらず、どの保険であっても加入は任意となっています。そのため、健康保険に加入するには、一般には勤務先や学校などが提供するグループ保険(Group Insurance)を利用します。
日本では1つの健康保険で歯科治療までカバーされますが、アメリカでは歯科保険(Dental Insurance)と、それ以外の医療全般をカバーする健康保険に分かれています。歯科保険ではカバーされる治療や、年間の適用限度額などの仕組みが違いますので、注意しましょう。
健康保険にはさらにいくつかの種類に区別されています。グループ保険によっては複数の種類を選択できるようになっている場合があります。自分の状況に合った種類を選ぶことが大切です。
HMOはアメリカの健康保険制度の主流のひとつです(もうひとつはPPO)。HMOの特徴は、医療費を抑えるために主治医制度になっていることです。HMOが適用される医者のリストから自分の担当主治医(PCP:Primary Care Physician)をあらかじめ選んでおき、どのような診療でもまずはPCPに相談してから行います。PCPの専門で無い場合は他の医者を紹介してもらう必要があります。紹介なしにPCP以外の医者に行っても保険が適用されないか、自己負担額が通常よりも増える仕組みになっています。ただし、緊急医療(救急車で運ばれた場合など)はカバーされるHMOが多くなっています。自分のHMOがどのような制度になっていて、診察を受けるためにはどのような手順が必要か、確認しておく必要があります。
HMOでは、加入している医者のリストがあり、担当主治医および紹介を受けた場合のどちらも、このリストに載っている医者である必要があります。このリストに載っている医者をNetwork、載っていない、つまり保険適用外になる場合を Out of network と表現します。何かの理由により、Out of nteworkの医者に掛かった場合、Network内の医者に掛かるよりも自己負担額が多かったり、保険が全く使えない場合もあります。
HMOと同様に、PPOも保険が適用されるリストに載っている医者に行かなければなりません。しかし、HMOと違い、担当主治医を決めておく必要はなく、Network内であればどの医者でも診療を受けることができます。PPOの方が一般にはHMOよりも柔軟性が高く、大手の健康保険ならNetwork内の医者も多く、実質的にはどの医者に掛かっても保険が適用されることが多いでしょう。
PPOではNetwork以外であっても、保険が適用される場合があります。しかし、その場合は自己負担額はNetwork内に比べ高くなります。
Copaymentとは、毎回、医者に通院した場合に払う費用のことです。医者に掛かるための基本料金といってもいいでしょう。保険の種類や雇用主の契約している保険会社によってCopaymentの金額も違い、普通に医者に掛かる場合、$5~$40程度が一般的です。医者に行くたびに払う必要があり、日本の初診料のように初回だけというわけではありません。
また、処方箋薬(Prescription)を購入する場合もCopaymentがあり、$5~$20程度の一定額を払う必要があります。
医療費や処方箋薬の自己負担分をOut-of-pocketと呼びます。医者は1回の診療で掛かった費用のうち、既に受け取ったCopaymentを引いた、残りを保険会社に請求します。保険会社はそのうち、保険が適用される割合のみを医者に支払います。割合は診療内容によって違います。100%カバーされる治療費であれば医者は保険会社から請求した全額を受け取ります。100%カバーでない場合は、不足分を患者に請求します。
この仕組みのため、医者に掛かると、請求書が後から送られてきて支払うことになります。大掛かりな検査や手術では複数の医者や技師が関わり、それぞれ別々に診療費を請求します。一度、手術を受けると、退院して何週間も経ってから、次から次へと請求書が送られてくることになります*1。
健康保険に限らず、保険でPremiumと言えば保険料のことです。会社などでグループ保険に入っている場合、会社が一部を負担し、保険料の自己負担は給与から自動的に引かれます。グループ保険でない場合や、後述のCOBRAの場合は、Premiumは自分で払わなければなりません。Premiumの支払いが遅れると保険がキャンセルされてしまう場合もありますので、注意しましょう。
保険が適用される前に自分で払わなければいけない金額のことです。この金額まで自分で払った後は、規定に従って保険が適用されるようになります。ただし、全ての診療にDeductibleが適用されるわけではありません。Copaymentを払えばDeductibleなしで直ぐに保険が支払われる診療項目もあります。
会社によっては複数のプランから健康保険を選ぶことができる場合があります。同じ保険会社のHMOとPPOから選べる場合が多いと思いますが、いくつかの保険会社から選べる場合もあります。いずれの場合もプランを選ぶ際には、違いを理解して選ぶ必要があります。
一番重要な選択はHMOにするかPPOにするかでしょう。PPOであれば主治医を決めることなく、いつでもネットワーク内の医者に掛かることができます。しかし、一般的にはその分、CopaymentやDeductible、Premiumが高く、自己負担額が多くなります。HMOは主治医を決めなければなりませんが、例えば小さい子供がいていつも同じ人に見てもらっているなど、信頼の置ける医者にいつも相談しているのなら、HMOでも問題はないでしょう。
プランを選ぶ際には、Copaymentなどの自己負担額だけではなく、最大でいくらまで健康保険が支払われるかにも注意が必要です。治療が難しい病気や怪我などを負い、高額医療が必要になった場合、制限があると自己負担額が大きくなってしまいます。例えば、Lifetime Limit(生涯で受けられる医療の合計額)が無制限でない場合、その金額に達すると医療行為を自己負担なしには受けられなくなってしまいます。Lifetime Limitは最低でも$1~2 Million、できれば無制限のプランを選択しましょう。
プランによっては医者に保険金が直接支払われず、一旦、自分で払っておく必要があるものがあります。その場合は後でレシートを送ると、負担割合に応じて保険金が戻ってきます。ネットワークの制限がない保険や、自営業向けの個人加入の健康保険ではこのような場合もあるようです。支払いを受けるための手順などを確認し、いざというときでも医療を受けられるようにしておきましょう。
日本の健康保険は窓口負担は3割(高齢者は1割)と、自己負担が割合で決まっています。しかし、アメリカの健康保険では保険プランごとに違います。Copaymentだけで済む診療もあれば、何%が自己負担と決まっているものもあります。さらに、同じ治療を受けられる回数が決まっているものもあります。例えばレントゲン(X-Ray)は年に1回だけ、理学療法(Physical Therapy)は60回までという具合です。この規定回数を超えると、保険会社は払わず、すべてが自己負担となります。
20人以上の従業員がいる企業に勤めている場合、会社を辞めた場合でもグループ保険を続けられる権利があります。Consolidated Omnibus Budget Reduction Act of 1985 で制定された法律ですが、一般には略称を使ってCOBRAと呼ばれます。COBRAは、今までと同じ健康保険を18ヶ月間(違う期間の場合もあります)続けられる権利です。
COBRAの権利がある場合、会社を辞めた後に保険加入の案内が送られてきます。もしすぐに他の健康保険に加入できない場合、指示に従って加入の手続きをするようにしましょう。COBRAでは保険を続ける権利はありますが、保険料(Premium)は自分で払わなければなりません。多くの企業では健康保険の一部を会社が払っていますが、辞めた後はその分も支払わなければならないので、かなりの負担になる事が多くなっています。
アメリカでも医療費は高騰し続けており、保険会社にとっては医療費を抑えることは重要な課題です。そのため、被保険者にさまざまな健康促進のためのプログラムを特典として提供しています。ジムの会費の一部を支払ってくれるものや、無料の定期検診、肥満を解消するためのダイエットプログラムなどがあります。自分の健康保険のプログラムを確認し、利用できるものがあれば活用しましょう。
歯科保険は健康保険とは違ったルールになっています。歯科保険を利用するためにはその仕組みの違いを理解しておく必要があります。
歯科保険は1年間に保険でカバーされる金額が決められており、一人当たり数千ドルが一般的です。そのため、一度にいくつもの歯の治療をしようとすると、限度額を超えてしまう場合があります。歯科医とのコンサルテーションを行い、自分の歯の状況に応じて治療プランを立てます。自分が加入している保険で適用される治療と限度額を考慮しながら、どの治療から始めるか、いつ治療を行うかなどの計画を立てていきます。
どういった治療プランにするかを判断する上で重要なのが、治療の内容によって保険の適用範囲や、限度額が違うことです。以下に歯科保険の適用範囲の例を示します。自分が加入してる保険が、どのようになっているか、これを参考に確認してください。
虫歯などの予防につながる定期的なクリーニングや、最初に歯科医に掛かる際の診断はタイプ Iとして分類されます。多くの歯科保険ではタイプIは全額がカバーされることが多くなっています。ただし、このタイプに分類されるものであっても、適用される回数や期限が決まっているものがあります。例えばクリーニングは6ヶ月に1度、口全体のレントゲン(X-Ray)は5年に一度、などと決まっています。どのような治療が全額カバーの対象か確認し、期限以前に同じ治療を受けて自己負担にならないようにしましょう。
主に歯冠などの治療がタイプIIになります。虫歯を治し、詰め物をした場合、多くの治療行為はこのタイプになります。歯科保険ではこのタイプの治療費のほとんどをカバーしますが、Deductible(免責額)や自己負担額が決まっています。例えばDeductibleが$50であれば、まず$50を自分で払い、それに加えて治療費の20%を自己負担として払う、などと規定されています。他のタイプ同様に一定期間で適用される保険の回数が決まっています。特に同じ歯に対する期間が決まっている治療もあります。例えば1つの歯に対して歯冠治療は2年に一度などと決められています。
クラウン、ブリッジ、義歯など比較的大掛かりな治療がタイプIIIになります。これらの治療は費用が掛かるため、自己負担額も一般的に高くおり、多くの保険では半額が自己負担になります。適用を受けられる期間も決められており、クラウンや義歯を入れ替えられるのは5年に一度程度と、長めに設定されています。
子供のための歯列矯正も歯科保険でカバーされることが一般的です。しかし、その範囲は限られており、自己負担額が大きくなるのが一般的です。例えばDeductibleを払った後、カバーされるのは50%までで、かつ、一生の間でカバーされるのは$1,000まで、などといった形です。
上記のように、日本とアメリカで歯科治療のシステムが違うので、診察を受ける際にもさまざまなことに注意する必要があります。
日本人が一番注意しなければいけないのは、歯科医療の保険のカバー範囲は限定的で、十分な計画が必要である、と言うことです。例えば、歯科医に最初に行くと、現在の状態を把握するための診断がなされます。口全体のレントゲンが必要な場合もあるでしょう。親切でない歯科医の場合、患者の保険の適用の有無を確認せず診察を行ってしまいます。5年以内に既にレントゲンを別の歯医者で受けていたため、保険が適用されない、と言った事態が発生します。歯医者を選ぶ際には、患者の保険を確認し、患者の立場になってプランを考えてくれる人を選ぶ必要があります*2。
事情により、別の歯医者に移る事もあるでしょう。その際は、レントゲンの写真など、以前の診断の記録を新しい歯医者に移してもらう必要があります。こうすることにより、一定期間ではカバーされる回数が決まっている診断であっても、新しい歯医者が正しい診断を下すことができます。
大掛かりな治療の場合、あらかじめ保険会社に連絡し、どのような治療行為が保険でカバーされるのか、確認することができます。まず、治療項目毎にどのくらいの費用が掛かるか見積書(Pre-Treatment Estimate)を歯科医に発行してもらいます。この見積書を保険会社に送ると、どの項目がいくらまでカバーされるのかを示した説明書が送られてきます。これを元に、治療プランを立てると良いでしょう。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson
アメリカでは保険は州ごとに規制されています。そのため、最低限必要な保険金額などが違ってきます。しかし、現実的には州が定める最低限の保険だけでは足りず、自分でそれよりも高額な保険に入ることになります。どのような場合に、どれだけ保険料が支払われるのかを理解するためには、保険のそれぞれの項目が何をカバーしているか確認する必要があります。
対人保険(Bodily Injury To Others)は、自分の車が原因で起きた対人事故の損害を補償します。一般には医療費が対象ですが、それ以外にも被害者が受けた損害、精神的被害、訴訟費用などが対象になります。重要なのは、単に医療費を補償するための保険ではなく、賠償責任を補償するためのであることです。詳しくは「5.賠償責任とアンブレラ保険」で解説しますが、事故を起こして相手に賠償責任を請求され、それで自分の資産がなくなってしまっては困ります。そこで、自分の資産を十分に保護できる賠償金額にするべきです。
州によって規則が違いますが、おおむねBodily Injuryは強制的に数万ドルの保険に加入することが義務付けられています。しかし、これで十分とは言えません。むしろ少なすぎるために任意で上限を高くすることは必須といえます。州により、Bodily Injuryの賠償金額をそのまま引き上げることが出来る場合と、強制加入の金額は変更が出来ず、オプションとして賠償金額の上限をあげる場合があります。いずれの場合も、十分な金額に引き上げることが必要です。
対物保険(Property Damage)は物損事故を起こした損害を補償します。例としては他の車に当ててしまった場合や、他の家に突っ込んでしまった場合です。州によっては最低でも数千ドルの保険への加入が義務付けられています。しかし、対人保険と同じように、最低の保険金額では足りない場合があります。高級車にぶつけてしまった場合、修理費も高額になりますし、建物や電柱を壊してしまったら、意外と高い費用が掛かります。対人に比べれば破滅的な損害にはなりませんが、自分の貯金などの資産が空っぽになってしまうのも困ります。十分な金額に設定しましょう。
事故を起こした相手ではなく、自分の怪我に対する保険です。Personal InjuryもしくはMedical Paymentなどと呼ばれ、州によって強制の場合も、任意の場合もあります。注意しなければならないのは、自分の医療費は、通常の健康保険でカバーされるべきという点です。日本の健康保険の多くは交通事故の場合、自動車保険からの支払いを優先するようなシステムになっています。しかし、アメリカでは健康保険のほうが先に適用され、自己負担分などが自動車保険から保証されるシステムになっています。
そのため、しっかりとした健康保険を持ち、自動車保険の医療費はなくて構わない、もしくは強制加入の最低限の額で構わないというエージェントもいます。自分のためだけならそれでも構いません。しかし、誰か人を乗せることがある場合、後述の同乗者保険に注意する必要があります。
アメリカの自動車保険で分かりにくいのは、同乗者に対する保険です。日本の保険とはシステムが違うため、上記の対人保険(Bodily Injury)ではカバーされない場合があります*1。州によりますが、同乗者のためには医療費用保険(Personal Injury)もしくは対人保険オプション(Optional Bodily Injury)を購入する必要があります。自動車保険を購入するときは、どの項目に同乗者への医療費、賠償責任が含まれるか確認し、必ず他の賠償責任と同額までカバーされるようにしましょう。
自損事故保険は、自分の自動車に対する損害を補償します。もし他の車との事故であり、自分の責任がまったく無ければ相手(の保険)が修理費を負担します。しかし、自分の責任で事故を起こした場合、この保険が無ければ自分の車の修理費はもらえないことになります。責任の比率が100%相手になることは少なく、いくらかの責任がそれぞれに課されることのほうが多いのが実情です。このような場合はその割合に応じて、自分の車の修理費を負担しなければなります。また、自損事故などで相手がいない場合、100%自分の責任ですから、この場合も保険が無ければ自己負担となります。
この保険は日本とは違い、アメリカでは2つに分かれています。衝突保険(Collision)は他の車との事故の場合を補償し、車両保険(Comprehensive)はそれ以外の場合を補償します。衝突保険が補償するのは、自分の責任割合に応じた修理費や、州によっては相手が無保険だった場合の自分の車の修理費です。Limited Collisonという、相手の責任が50%以上だった場合のみ補償する保険もありますが、お勧めしません。
車両保険は、衝突以外の理由で車に損害があった場合を補償します。火災や盗難、動物に当たった場合などを補償します。アメリカでよくある問題は自動車の盗難でしょう。もし車両保険が無ければ、車を盗まれても何も補償されません。そこで、ある程度以上の価値がある車の場合は、必ず車両保険に入るべきでしょう。ただし、同じ車を買いなおせる金額が保証されるわけではありません。通常はその車の市場価値、つまり中古での価値になります。
事故を起こした相手が無保険(Uninsured)だった場合や、十分な金額の保険に入っていなかった場合(Underinsured)に、自分や同乗者への損害を補償します。通常は相手の保険から賠償責任として医療費や休業補償が支払われ、それでも足りない場合、この保険の金額の方が多ければ、受け取れなかった差額が支払われます。
アメリカでは無保険車が1~2割程度あると言われ、また十分な保険に入っていない人も相当数に上ると見られています。もし、相手の保険が十分に補償しない場合は、相手を個人的に訴えて補償するように要求します。しかし、相手に資産が無ければ裁判で勝ったとしても実際の支払いを受けることが出来ない場合もあります。保険金額が十分でない人は一般に資産も少なく、その場合は泣き寝入りするしかありません。そういったことが無いように、十分な保険を自ら掛けておく方が賢明です。
自動車保険には任意で加入できる追加条項があります。牽引(Towing)は事故の有無に関わらず車が動かなくなったときに、牽引費用を支払ってくれます。緊急時対応サービス(Emergency Roadside Assistance)は路上で出来る簡単な修理(タイヤ交換など)の工賃(Labor)をカバーします。この2つは州によっては1つの条項になっている場合があります。この保険条項はAAAに加入していれば必要ないでしょう。
レンタカー費用(Daily Rental Insurance)、もしくは代替交通費(Substitute Transportation)は、車が修理中の間に借りたレンタカー代の一部や、公共の交通機関を使った費用を補償してくれます。補償額に比べて保険料が割高になるので、公共の交通機関を使える人や、家族や同僚と一緒に通勤できる場合などは不要でしょう。しかし、通勤に車がどうしても必要な場合はこの条項を追加するのも良いかと思います。
ガラス破損補償(Auto Glass Insurance)は、ガラスの破損を非常に低い免責額もしくは免責額なしで補償するものです。車両保険(Comprehensive)への追加保険ですので、車両保険への加入が必要となります。修理費が車両保険の免責額以下のために保険金が支払われない場合でも、この追加保険があればガラスの破損に限って費用を出してくれるものです。例えば車両保険の免責額が$500の場合、フロントガラス交換で必要な費用が$300だった場合、すべて自己負担になります。しかし、この条項を追加していれば、$500以下でも保険会社が補償してくれます。アメリカでは中央分離帯が低い高速道路もあり、対向車からの飛び石などでフロントガラスが破損することもありえます。この条項があれば、自己負担なし、もしくは少ない費用で交換することができます*2。
車両保険には免責額(Deductible)が設定されており、修理が必要な際にはその金額までは自己負担となります。その自己負担を増やすことで保険料を安くすることが出来ます。自分で負担できる程度の高めの免責額を設定すると良いでしょう。
免責額を高くするメリットは2つあります。1つは保険料が安くなることです。例えば車両保険(CollisionとComprehensiveの両方)の免責額を$500から$1,000に引き上げた場合、車両保険部分の保険料は20~50%ほども安くなります。
もう1つのメリットは保険金の請求をしなくて済む場合が増えることです。免責額が$500で、$600の修理が発生した場合、差額の$100を請求するために書類を揃えたり、保険会社や修理工場と連絡したりと煩雑な手続きをしなければいけません。もし免責額が$1,000なら、修理工場に支払うだけで済みます。安くなった保険料をしっかりと貯金しておけば、その程度の差額なら得になる場合が多いのです。
過去に事故や違反がある場合、保険料が高くなります。逆に無事故、無違反であればその分、保険料は安くなっていきます。自分のためにも、金銭的にも安全運転はメリットがあるといえます。
しかし、アメリカに来て免許を取ったばかりの場合、アメリカでの運転歴がありませんから、高い保険料からスタートすることになってしまいます。そこで、もし日本の免許を既に持っているのなら、日本での運転歴を考慮してもらえないか、エージェントに相談してみましょう。日本の警察署から証明を取り、それを提出すれば認められる場合があります。
ただし、日本での運転歴はアメリカで最初に保険を掛けるときにしか使えない場合もあるようです。渡米して最初に車を購入する場合、あらかじめその州の規則をしっかり調べておくと良いでしょう。
自動車保険は州により規制されていますが、さまざまな割引制度も存在します。例えば会社などでまとめて加入するとグループ保険となって割引が適用される場合があります。また、エアバッグなどの安全装置や盗難防止装置がついていると車両保険が安くなります。
同じ保険会社で2台以上加入する場合や、1年の走行距離が規定マイル数よりも少ない場合、屋根の無い誰でも出入りできる駐車スペースではなく車両を車庫で保管する場合なども、割引が適用される場合があります。どういった割引があり利用できるのかを調べて最大限に利用しましょう。
車が古くなり価値が低くなった場合、車両保険を掛けないという選択肢があります。もし、事故で修理が必要になったら、自分で払える程度なら修理し、そうでなければ諦めて廃車にすると決めておくのです。車両保険は自動車保険の中でも割高な条項ですから、これで保険料はかなり安くなります。古くなってくると事故に遭わなくても、「修理費が○○ドル以上だったら、もう諦めて廃車にしよう」と思うことはよくあることです。そう思うようになったら、廃車にする理由が故障でも事故でも金銭的な負担は同じですから、車両保険をキャンセルしましょう。
また、小額の保険金のための条項も要らない人が多いでしょう。牽引やレンタカー費用の保険は自己負担で済ませることにすれば、これらの条項は不要です。
アンブレラ保険に加入すると、自動車保険の賠償責任(対人保険や無保険車条項など)は低い賠償金額で構わない場合があります。例えば今まで自動車保険で対人保険を$500,000まで掛けていたとします。アンブレラ保険で$1,000,000までカバーし、その条件として自動車保険の賠償金額が$100,000であった場合、対人保険をその金額まで下げることで、自動車保険の保険料を節約することが出来ます。アンブレラ保険には別に保険料が掛かりますから、全体としてその分の負担はあります。しかし、$500,000から$1,000,000へ賠償金額を上げるのは、結果としてそれほど負担が増えることにはならない、というのが重要な点です。
保険を掛けるときに保険料を先に考えてはいけません。保険料の安さで保険を選ぶと、肝心の補償範囲が自分に合ったものでなかったり、特別な場合しか保険金が受け取れないなど、保険の本来の目的を外れてしまう場合があります。まず、自分にとってどんな補償がいくら必要なのか、しっかりと判断するべきです。
また、補償範囲が同じで保険料が安いからといって、すぐその保険会社にしてもいけません。保険会社には格付けがあり、格付けが高い保険会社ほど経営状況が安定しています。保険金請求の際にトラブルになったのでは意味がありませんから、エージェントに過去の請求実績などを聞くなど、会社選びは慎重にしましょう。
日本と大きく違うアメリカの自動車保険の特徴は、州によって規制が違うということでしょう。そのため、強制保険だけではその州で発生した事故しか補償しないものがあります。絶対に他の州に行かないと言えるのであれば、州内だけの補償でも構わないかもしれません。しかし、実際には他の州に車で観光や仕事で行く可能性は常にありますので(ハワイ除く)、必ず州外でもカバーされる保険に入ることが必要です。
アメリカでは、窓ガラスを割って車内においてあるカバンなどを取る手口で、多くの盗難が発生しています。このとき、窓ガラスは車両保険に入っていれば補償されますが、ほとんどの場合、免責額以下の修理費なので、実際には保険金は支給されません。さらに、車内においてあったものは自動車保険の対象外ですので、まったく保険金が支給されません。個人の持ち物は住宅保険に入っていれば補償される場合もありますが、この場合も免責額があります。被害に遭わない様に注意する事が大切です*3。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson
住宅保険は保険を掛ける家の種類によって分かれています。一般にHomeowners Insuranceと言えば、一戸建ての保険です。Multi Family Home(2~4軒が1棟になっている家)もHomeowners Insuranceでカバーされます。また、投資物件として家を持っている場合もHomeowners Insuranceを掛けます。この場合、所有者が住んでおらず、賃貸していることを明記しなければなりません。
一軒家の場合、建物、内装、ガレージ、別棟(物置など)、庭(芝生やアスファルトなど)、垣根など全てをカバーする必要があります。そのため、単純に家の広さだけで保険金額を見積ることはできません。
コンドミニアム*1の保険はCondominium Insurance、タウンハウスはTownhouse Insuranceと別に呼ばれることが多くなっています。
どちらの保険も保険項目はHomeowners Insuranceとほぼ同じ内容になっています。違いは各項目の保険金額です。コンドミニアムやタウンハウスの場合、管理組合(Home Owners Association = HOA)がMaster Policyといって、そのコミュニティ全体の保険を掛けています。Master Policyでは共益部分、つまり建物、庭、ゲート、ジムやプールなどの娯楽施設、水道の配管など、そのコミュニティ全体で共有しているものをカバーしています。そのため、多くの場合、Condonimium Insuranceでは建物を再建する費用をカバーする必要はありません。ただし、内装はユニットの所有者の責任になるので、この部分に自分の保険が適用されます。コンドミニアムは売りに出されるときはカーペット、キャビネット、給湯設備、バス、トイレなどが含まれて売られています。しかし火事などで再建しなければいけなくなると、それらは全て所有者の責任になってしまうので、注意が必要です。
家を所有しているのではなく、賃貸している場合はRenters Insuranceになります。Renters Insuranceは建物や内装に保険を掛ける必要はありませんので、これらの項目の保険金額はゼロになります。しかし、個人所有の物品や後述する賠償責任をカバーするために、アパートを借りているだけでも必ず住宅保険に加入しておく事をお勧めします。
住宅保険の保険項目は、保険の種類に寄らず同じ項目が使われます。Renters Insuranceは建物自体は保険に掛けませんから*2、すべての項目はなく、Coverage C以降だけになります。項目の名前は保険会社や州によって表現が異なる場合がありますのでご注意ください。
住宅保険といえば、まず思いつくのが住居、正確に言えば主たる住居とする建物を補償する保険です。日本では火災保険と呼ぶ場合もありますが、火災だけでなく自然災害も補償するのが一般的です。ただし、補償される自然災害は限定されており、特に地震、ハリケーン、水害は含まれません。これらを補償するには付加条項として追加するか、別に専用の保険に加入する必要があります。
この項目の保険金額を決める際には、再建費用(Rebuilding Cost)を調べます。自分が家を買った値段と、その建物を建て直すための費用は違います。特に古い家の場合や、建築費用が高騰した場合*3は家の購入価格よりもはるかに高い補償金額にする必要が出てきます。
保険を掛けた補償金額が再建費用と比べて低い場合、部分的に損害があった時にその分だけ差し引かれて保険金額が算出される場合があります。建物全体の費用を保険に掛けていないため、費用の算出に減価償却された価値(Depreciated Value)が使われるためです。保険金額は必ず、再建費用をカバーするように設定しましょう。
この項目はガレージや物置小屋など、住居ではない付属的な建物をカバーします。通常はCoverage Aの10%の保険金額が自動的に設定されます。
Coverage Cは家財をカバーします。普通は最大でもCoverage Aの75%ほどまでが保険金額に設定できます。保険金額には2種類あり、1つは実際の物品の価値までがカバーされるものです。この場合、Actual Cash Valueと言われ、その品物を購入した金額から、Depreciation(償却金額)を引いたものを、品物の価値と考えます。例えば10年前のテレビの価値はほとんどゼロに近いでしょう。
もう1つはReplacement Costと呼ばれ、新たに同じようなものを買ったときに掛かる費用です。この場合、10年前のテレビであっても、同等のテレビを新たに買いなおす費用が補償されます。この項目で重要なのは、必ずReplacement Costがカバーされるように付帯条項をつけておくことです。火事など、一度にほとんどの家財をなくしてしまう場合、時間をかけて安売りを探している余裕はありません。そのため、新品で一度に多くの品をそろえる必要があり、そのためにはReplacement Costでなければなりません。
保険対象の家に住めなくなってしまった時に、一時的に住む場所の費用として保険金が支給されます。この項目では一日当たりの金額や、最高で何日までカバーされるか、などが規定されています。多くの場合、掛かった費用をそのまま補償してくれるのではなく、その家に住んでいなければ不要な費用を引いて1日あたりの支給額が算出されます。火事で家が焼けた場合など、その家の公共料金などは(一時的とはいえ)不要になるのですから、その分が引かれることがあります。
住宅保険で、建物と同様に重要な項目が賠償責任です。アメリカは訴訟社会ですから、ちょっとしたことでも訴訟を起こされ、保険が無ければ私財を使って賠償責任を負わなければなりません。Coverage Eでは、住宅とは直接関係ない訴訟も含めて、広範な賠償責任を補償します。家の前で誰かが転んだ場合から、家の外で誰かに怪我を負わせてしまった場合などもカバーされるのが特徴です。住宅保険に加入する意味は、賠償責任が補償されるからと言っても過言ではないでしょう。
この項目は通常は$1,000までの小額の医療費をカバーします。家に来たお客さんが怪我をしてしまった場合、小額の医療費を払えば済むことがあります。この項目でカバーできない場合や、金額が上限を超えた場合は、賠償責任補償(Coverage E)を使うことになります。
住宅保険はそのままだと、基本的なものだけを補償するように考えて設定されており、特別な物品や項目は補償範囲に含まれません。以下に上げる物品や状況を補償するためには、追加条項が必要です。
宝石類は基本の保険のままでは通常$1,000までしか補償されません。また、その宝石類がいくらの価値があったのかを証明しなければなりません。このような場合は追加条項で補償されるようにします。そのためには鑑定書(Appraisal)が必要になります。鑑定書があれば、いくらの保険を掛けるのかもはっきりしますし、万が一、損失した場合でも保険会社は既に価値が分かっているので、補償金額が問題になる事もありません。
自分の趣味で集めた品物、例えば切手などは額面以上の価値があるばあいもあるでしょう。骨董品や絵画なども高い価値のあることがあります。こういった物を保険にかけるには、宝石類と同様に鑑定書を取り、追加条項に必要があります。しかし、物によっては自分にとっては価値が高くても鑑定書にするとそれほどでもない物品もあります。その場合、通常の物品としてCoverage Cの範囲で保障されるようにします。買ったときのレシートを取っておくなど*4、あらかじめ対策を取っておきましょう。こういった特別な物品を保険に掛ける場合、エージェントにアドバイスをもらうのも方法です。
明記しない限り、自宅で行っているビジネス関連の物品や損害責任は補償されません。ビジネスを何らかの形で行っている場合は、適切な保険条項を選択しましょう。自分では「ビジネス」と思っていない場合でも、問題が発生したときに保険会社はそれを「ビジネス」とみなして、保険金の支払いを拒否する可能性があります。例えば高校生が時々、ベビーシッターとして近所の子供の面倒を見て、いくらかの報酬をもらっている場合などです。それがビジネスになるかどうか、状況により判断が分かれます。少しでも疑問があれば、エージェントや保険会社に連絡し、「こういった場合に保険は適用されるか」と聞いておきましょう。適用される場合は書面にしてもらいましょう。そうすることで、保険金申請のときのトラブルを避けることができます。
持っている家を人に貸す場合、住宅保険もそれに合わせて条項を追加する必要があります。所有者(Owner)本人が住んでいないとリスクが高まると考えられ、わずかではありますが、追加の保険料が必要になります。また、テナントの家財は、Ownerの住宅保険ではカバーされません。テナントにはRenters Insuranceに入るよう、勧めておきましょう。
住宅保険自体は簡単に契約することができます。しかし、注意しておかないと保険金請求のときになって損害が補償されないと分かる場合があります。住宅に関わる損害は金額も大きくなりがちです。いざというときに慌てないで済むように、自分の状況に合うような保険に加入しましょう。
十分な保険が掛けられていなければ、せっかく保険があっても損害は膨大になります。家の再建コストや、付属建物、あるいは家財は、意外と価値が高いものです。保険エージェントに頼むと、家の大きさやベッド数、建築年数などから金額を割り出してくれます。しかし、その金額をすぐに信用するのではなく、家や家財に即した金額を自分でも算出するべきでしょう。
家屋の場合、購入したときの鑑定書に再建コストが書いてあります。購入したのが数年以上前の場合や、建築資材が高騰した場合*5、再建コストを見直して、保険金額を修正する必要もあるでしょう。
家財であれば、物品リストを作り、自分の見積もり金額を書いていくことで推測できます。物品の金額を計算するのは細かいものまで全て含めるのは大変なものです。簡単におおよその金額を算出するには、家具や電化製品など金額の高いものを全て合計し、それを2倍にすると良いでしょう。自分で計算した金額とエージェントの金額が大きく違うようであれば、詳細に計算したり、建築業者に見積もりを取るなど、正確な数字を出すようにしましょう。
標準的な住宅保険では多くの災害が補償対象になっていません。地震、ハリケーン、土砂すべり、洪水など、その地域と保険会社によって、どの災害が対象になるか違ってきます。地域によって災害ごとのリスクは異なります。例えば地震は、アメリカのどの地域に住むかで大きく発生する確率が違ってきます。自分の家のある地域の地理的状況にあった追加条項を含めるようにしましょう。
被保険者は、損害が発生したら、それ以上被害が広がらないように、家や家財を保全する義務があります。例えば屋根に穴が開き、そのために雨で内装が冠水し被害を受けた場合、内装の被害は補償されない場合があります。そういった場合は出来る範囲でシートを被せるなど、被害が広がらないようにする義務があります。
住宅保険にはさまざまな除外項目があります。
ビジネスに関する除外は気が付かないところで関係する場合があります。自宅で時々仕事をする場合、それが「ビジネス」として扱われる場合があるからです。特にコンピューターで接続しさえすれば仕事ができるような場合、自分が気が付かないうちに「ビジネス」を家で行っていることになり、注意が必要です。住宅保険にビジネス業務をカバーする付帯条項を追加すると良いでしょう。
スノーモービル、ATV、ゴーカートや(公道を走らない)モトクロスバイクなどレジャー用車両も住宅保険の対象外です。ボートは状況によって賠償責任がカバーされる場合とそうでない場合があります。馬力、長さ、エンジンの形状などで分類されています。こういったものを借りる場合は、あらかじめ住宅保険でカバーされるか確認する必要があるでしょう。
アメリカに暮らしている人の多くが見落としているものに、Renters Insuranceがあります。アパート住まいなら、建物の保険は大家の責任ですから、住宅保険が必要であるとすぐに気が付かないことが多いのです。アパートであっても、2つの理由から、必ずRenters Insuranceに入りましょう。
まず、自分の家財を保険にかける必要があります。大家の保険ではテナントの所有物は補償されません。自分のものは自分で守る必要があるのです。
もう1つの重要な理由は、賠償責任です。アメリカは訴訟社会ですから、いつ、どんな時に訴えられるか分かりません。友人や知人であっても、訴えるしか損害を補償してもらう方法がない場合もあります。人を家に呼んだときや外出先で人に怪我を負わせてしまうなど、過失があったと判断されてしまう可能性は、どこにでもあります。直接、保険の対象になるのは賠償責任ですが、保険が無ければ自分の財産を取られてしまいます。アパート暮らしであっても、自分の資産を守るための重要なものと理解して、保険に入りましょう。
保険を掛けたから、何が起こっても大丈夫、という事にはなりません。いくら保険を掛けてあっても、実際に損害が発生すれば面倒な手続きや、精神的な負担もあります。大切な事は、保険を正しく掛ける事と合わせて、危険をあらかじめ避ける、損害が発生した際に最小限になるよう準備しておく、などの総合的な対策です。保険そのものと合わせて考え、有効となるような戦略を取っていきましょう。
住宅保険を考える前に、リスクそのものをなくす、あるいは避ける事が出来ないか、検討するべきでしょう。例えば、賠償責任に関して、危険を最初から避ける事を考えて見ましょう。自宅の庭にプールやトランポリン、ブランコなどを設置する事は訴訟を招く危険があります。近所の子供が勝手に入ってきてそれらを使い、事故になった場合、持ち主が訴えられるのです。こういった遊具を最初から設置しないことで、リスクをなくす事が出来ます*6。
住宅保険の賠償責任には、ボートをレンタルした場合の賠償責任がカバーされる場合があります。しかし、保険でカバーされるからと言って、慣れないモーターボートをレンタルする必要はありません。別の方法でレジャーを楽しむことで、ボートの事故による賠償責任をなくす事が出来ます。
この戦略はバランスが大切です。ボートを借りなければ、確かにそのリスクは無くなりますが、そのアクティビティを楽しみに旅行するのであれば、リスクを覚悟の上で十分な保険を掛け、借りるのも良いでしょう。危険があるから、と言っていては何も出来なくなってしまいます。自分のやりたい行動とリスクのバランスが大切です。
リスクの種類によっては、それを完全に避ける事はできないものがあります。家財を失う危険などは、避けられないリスクの良い例でしょう。そういった場合は、リスクを減らす事を考えましょう。
消火器を常備し、ガスや電気機器の点検を定期的の行えば、火事になる確率を減らし、家財を失う確率を減らすことが出来ます*7。自然災害で言えば、屋根や壁の点検や張替えを定期的に行う、木や枝を剪定する、地下室に(水をくみ出す)ポンプを常備するなどでハリケーンが来たときの家屋への損害を減らすことが出来ます。
万が一、災害にあってしまった場合、どれだけ損害を回収できるかは事前の準備によります。住宅そのものが被害を受けた場合、それを修理する費用が保険会社から支払われます。しかし、保険会社の見積もりが低すぎる場合もあります。事前に信頼の置ける建築業者を調べておけば、その業者から修理費用の見積もりを取り、保険会社と交渉する事も出来るでしょう。
家財の損害を補償してもらう際には、どのようなものを所有していたか、記録が必要になります。記録がまったく無ければ、保険会社に有利なように判断されてしまいます。こういった記録を取っておく簡単な方法がいくつかあります。家の中をくまなくビデオやカメラで撮っておき、どんなものがあったか分かるようにするのも方法でしょう。クローゼットの中や地下室なども、何があったか分かりやすいように撮影します。撮ったビデオテープや写真を自宅以外の安全な場所に保管しておきます。
購入したもののレシートのコピーを取っておく事も役に立つでしょう。いくらで買ったか、どのような機能の商品だったかがはっきりと分かりますから、保険会社の見積もりに同意できない場合には重要な情報になります。これもコピーが自宅にあっては意味がありませんから、安全な場所に保管します*8
このような戦略は自宅の購入前、アパート探し、住宅保険の更新など、機会があるごとに考える必要があるでしょう。「危険を避ける、減らす、万が一のために備えるには、何が出来るか」という視点を持って住宅を選ぶなど、冷静な判断が大切です。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson
Home Buying for Dummies
著者:Eric Tyson, Ray Brown
賠償責任とは、誰かに被害を与えてしまったとき、損害を金銭的に補わなければならない義務のことです。どんな理由であれ、自分の過失で損害を与えたと認められれば、その責任をお金で取ることになる、という意味です。具体例としては交通事故で誰かを怪我させてしまった場合や、自宅で他人が怪我をした場合です。損害が簡単に計算できる場合は示談で済む事もありますが、損害額が大きい場合や、加害者と被害者が合意しない場合は裁判で賠償責任が決められます。
賠償責任では、保険が補償する物質的な損害とは考え方が異なります。住宅保険であれば、物質的なもである建物と、賠償責任がセットになっています。建物が火事になって焼けてしまった場合は、その再建費用が補償されるので、計算は簡単です。物質的なものは、その物が戻ってくるために必要な金額を計算するだけです。
賠償責任、例えば家に来た人が転んで怪我をした場合などは、損害額の簡単ではありません。医療費に加え*1、怪我で仕事ができなくなった期間の休業補償や、精神的苦痛に対する慰謝料が発生する場合もあります。単純に物を買えば良いわけではなく、いろいろな要素を含め、裁判の判定で補償しなければいけない金額が決まってきます。
賠償責任保険はこういった訴訟のリスクに対する保険です。すべての訴訟をカバーするわけではありませんが、基本的には訴訟になったとき、あるいは示談の結果として、保険金が支払われます。
通常は自動車保険や住宅保険などの項目として賠償責任保険があります。この保険項目から被害者への医療費、休業補償、慰謝料などが支払われます。
この保険の目的は自分の資産を保護することにあります。訴訟の判決で賠償責任が問われると、その金額を支払わなければなりません。もし、保険金で足りなければ、自分の資産から払う必要があるのです。また、訴訟社会アメリカでは、資産を持っている人ほど、支払能力があるとみなされて、高額な賠償請求をされる傾向にあります。そこで、自分の資産を守るには、それに見合った保険を掛けておくべきです。
自分の資産を守るためには、どのくらいの保険金額を設定すればいいでしょうか?正しい保険金額というのはありませんが、いくつかの目安はあります。
自分の資産を守ることが目的ですから、自分の資産総額は保険金額を決める際の要素になります。一般的に資産が多ければ保険金額も高くするほうが良いと考えます。自分の資産が高ければ訴えられる確率が高くなるからです。
お金持ちでなくても、高額の賠償責任を負わされた場合、自分の資産が無くなることには変わりありません。そこで、最低でもある程度の賠償責任を掛けておくべきでしょう。自動車保険や住宅保険の場合、賠償責任を最高額にしてやっと、最低限の補償がある状態と言えます。米国では州によりますが、これらの保険の最高額は$300,000~$500,000程度です。保険金額は、最低でもこのレベルにするべきです。
これ以上の保険金額を設定するにはアンブレラ保険を使います。都市部に暮らす、中流階級以上の家庭であれば、アンブレラ保険で最低でも$1,000,000を掛けておくべき、というのが最近のトレンドです。
賠償責任保険は、自動車保険、住宅保険、自営業ならビジネス保険など、それぞれの保険に賠償責任の項目があります。自動車保険では$300,000まで、住宅保険では$100,000までの賠償責任に入っている、というケースがあります。このような場合、自動車事故で相手に怪我をさせてしまった場合なら$300,000までなので自分の資産は守れても、自分の家に来た人が怪我をした場合には保険金額が足りないということが起こります。保険金額が足りなければ自分の資産から払うことになり、資産の保護ができません。
賠償責任保険の目的は自分の資産を保護することを忘れてはいけません。賠償責任を追うことになった場合、その原因が自動車事故であっても、自宅の事故であっても、自分が守りたい資産の金額は変わりません。そこで、自分が加入しているそれぞれの保険の賠償責任の金額を同じにする必要があります。どのような場合でも、常に自分の賠償責任が同じ額まで補償される状態にしましょう。
アメリカでは訴えてもお金を取れない人なら相手にしないのに、お金が取れそうな人ならちょっとしたことでも訴える傾向があります。一人一人の状況によって、お金が取れそうかどうか、つまり訴えられやすさ(Sueability Factor*2)が変わってきます。資産を持っている(実際には持っていなくても、そのように見えるだけの場合も含みます)、ビジネスを営んでいる、あるいは定期的な収入があるだけでも、「お金が取れる相手」と扱われます。
Sueability Factorが高い人は、自分の賠償責任保険の金額を定期的に見直し、状況にあった金額に上げていく必要があるでしょう。自宅を持っている、収入がある*3、自分のビジネスを持っているなど、少しでもSueability Factorが高くなる要素があれば、私は最低でも$1,000,000の賠償責任保険に入る事をお勧めします。
ほとんどの自動車保険や住宅保険では賠償責任を$1,000,000にしようと思ってもできません。上限が$500,000程度のものが多く、それ以上はアンブレラ保険でカバーする必要があります。
アンブレラ保険は、賠償責任が自動車保険や住宅保険では払いきれないような高額になった場合、さらにその上に積み増して保険金を支払う保険です。自動車保険で$300,000まで賠償責任がカバーされる場合、$1,000,000のアンブレラ保険は$300,000を超える金額だけをカバーします。
自動車事故で訴訟になり、賠償責任が$700,000になったとします。自動車保険からは$300,000まで満額が支払われます。$700,000まで足りない分の$400,000がアンブレラ保険から支払われることになります。

アンブレラ保険の特徴は、自動車あるいは住宅といった特定のものを保険対象にするのではなく、賠償責任全般を対象にすることです。アンブレラ保険は基本となる保険を複数指定することができ、基本となる保険の賠償責任をアンブレラ保険の金額まで引き上げる効果を持ちます。基本となる保険は、通常、自動車保険や住宅保険になります。
自動車保険および住宅保険の賠償金額が共に$300,000までの保険を持っていたとしましょう。$1,000,000までのアンブレラ保険に加入すれば、自動車保険および住宅保険がカバーする賠償責任を、どちらも$1,000,000に引き上げてくれます。

アンブレラ保険の保険金額は通常、$1 Million 単位になっています。ところがアンブレラ保険の保険料はそれほど高くはありません。その人の状況や、基本になる保険によっても違いますが、おおむね最初の$1 Millionまでは年間数百ドル程度、さらに$1 Millionを追加するごとに100ドル程度の追加になります。
保険料が補償する金額の割に高くない理由は、最初の数10万ドル分は、基本となる保険、つまり自動車保険や住宅保険がカバーするからです。訴訟で基本の保険がカバーしないような高額になる確率は低く、そのため、保険料も安くて済むのです。確率が低くても*4、万が一、高額の賠償責任を負う事になったら人生が大きく狂ってしまいますから、年間数百ドルの価値はあると言えるでしょう。
但し、これは個人で主に住宅保険(持ち家、もしくはアパート)に付加してアンブレラ保険を申し込んだ場合です。個人ビジネスを営んでいる場合などは保険料は変わってきます。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
生命保険(Life Insurance)は被保険者(Insured)が死亡したときに、扶養家族が経済的に困らないようにするために掛けるものです。経済的に自分の収入に頼っている人がいる場合は生命保険を掛ける必要があるでしょう。特に子供がいる場合や、配偶者が働いていない場合は必須と言えます。被保険者が死亡した場合でも、扶養家族に十分な保険金が支払われれば、経済的に困らずに暮らしていくことができます。逆に独身で誰も養っていない人、子供のいない共働きのカップルで一方が死亡しても経済的には困らない人、十分な資金を蓄えている人などは生命保険が不要となります。
働いていて子供がいれば生命保険が必要というのはすぐに分かりますが、そうでない場合でも生命保険が必要な場合があります。例えば夫が働いていて、妻が専業主婦の場合、妻には労働収入がありません。直接的な収入がないので生命保険を掛ける必要がないと思ってしまう人もいます。しかし、小さい子供がいるような場合、妻が死亡してしまうと、残された夫は育児と仕事の両方をしなければなりません。このような場合、子供を預ける保育所の料金など、夫が働き続けるために必要な費用が発生します。生命保険の必要性を判断するときは、金銭的な収入だけではなく、もし自分や配偶者が死亡した場合、残された家族がどのように生活を維持するかを考えて決めなければなりません。
いくらの保険に入るか、金額を決めるのは単純ではありません。よくある簡単な方法は年収の5倍、あるいは10倍という年収を元に決める方法です。しかし、年収と、その人が死亡したときに残された家族が必要とする資金は、関連性がありません。貯金が多く、雇用主が加入している生命保険がある場合は、自分で生命保険を買う必要がない人もいます。同じ年収の人でもそういったものが一切なければ、自分で保険に入る必要があるでしょう。
保険金額を決めるためには、残された家族が必要な資金を計算するほうが、より正確に計算できます。一般には次のような資金を計算に組み入れます。
これらの費用は誰でもすべて必要とは限りません。貯蓄がある程度あれば、葬式費用や数年分の生活費はまかなえる場合も多いでしょう。配偶者が働いている場合は、短期的な経済負担分だけ計算に入れれば十分で、長期的には残された配偶者が働く事で生活費をまかなう場合もあります。
それぞれの費用を計算する場合、その資金が必要な時期と、費用の性質で見積もりが変わります。多くの場合、保険金をもらってから実際に必要になるまでは安全な貯金で運用し、インフレで物価が上がっても釣り合うようににします。しかし、それでは正しい資金が見積もれない場合もあります。例えば、アメリカでは大学の授業料はインフレを超える利率で値上がりしています。教育費はインフレ率よりも高く値上がりしていくと見積もった方が無難でしょう。
自分でこういった計算をするのは面倒な作業ですし、さまざまな情報が必要となります。保険エージェントに計算をしてもらうか、ウェブの計算ツールを使って概算を出すことが出来ます*1。
一番分かりやすく、また費用もかからないタイプの生命保険は定期保険(Term Life Insurance)です。この保険は掛け捨てで、決められた期間の間に加入者が死亡すれば保険金が支払われます。一定期間が過ぎると、そのまま契約を終了するか、新しい条件で更新するかの選択肢があります。定期保険は、生命保険の本来の目的である、加入者が死亡してしまった場合のリスクをカバーするための一番効率の良い保険です。
注意しなければいけないのは、「掛け捨て」という言葉に迷わされないことです。掛け捨てというと、お金を払っただけで損をしてしまうような気がします。しかし、そもそも保険は不慮の災害や事故があった場合だけ保険金が支払われるものです。そういった災害に遭いたい人はいません。払い込んだ保険料が無駄になるほうが良いのです。無駄になる部分が一番少ない費用で済むのが定期保険です。
後述する終身保険は掛け捨てではありません。しかし、何らかの形で保険会社は払う分よりも多くの保険料を集めているのですから、それぞれの商品をしっかり理解して、正しい保険を選ぶ必要があります。
定期保険で一番短い期間は1年間です。しかし、1年後には契約をやめるか、更新しなければいけません。契約が終了する間際に重病にかかり余命がほとんど無いと診断されてしまうと、更新ができなくなってしまいますから、これでは生命保険の意味がありません。そこで、1年間の契約でも、無条件で更新できるタイプの保険がAnnual Renewable Term (ART)です。10年から30年の間、健康状態に関わらず、保険料を払う限り、更新することができます。
ARTは確実に更新できますが、保険料は毎年、値上がりしていきます。若いうちは死亡する確率が低いので、保険料が安く、歳を取るにつれ保険料は急速に値上がりしていきます。ARTは生命保険が必要な期間が数年程度の特殊な場合では有用ですが、小さな子供がいる家庭で、子供が大学を卒業するまでの20年ほどをカバーしたい、という場合には適しません。
長期間の保険が必要な場合、保険期間中は保険料が変わらない定額型の定期保険(Level Term Life Insurance)もあります。10年から30年ほどの保険期間中の保険料を平均して払うことで、一定額に保険料を保つ仕組みです。その為、ARTと比べると、若いうちは保険料が割高で、期間の最後のほうは割安になります。保険を途中で解約してしまうと割高な保険料を払い込んだことになるので、自分のニーズに合った保険期間を選択することが大切です。
一般的な生命保険のニーズはほとんどの場合、このLevel Term Life Insuranceで満たすことが出来ます。これ以外の生命保険を検討する場合は、それなりの理由がある場合に限られます。
終身保険(Permanent Life)は、定められた期間ではなく、死亡するまで保有することができる保険です。死亡するまでということは、いつかは必ず保険金を手にすることになります。保険会社から見れば、必ず払わなければならない保険金をまかなうために、高い保険料を設定することになります。歳を取ってリタイアするころには自分の労働収入に頼る子供も巣立った後で、自分や配偶者のためにはリタイアメント資金や社会保障、年金を使うようになります。そのため、特別な理由がない限り一生涯、生命保険を掛ける必要はありません。
割高の保険料を支払ってまで、一生涯、生命保険を掛ける必要があるのは限られたケースといえます。次のような場合は終身保険でなければ満たせない特別なケースといえるでしょう。
上記のような定期保険では満たせない特別な事情がない限り、終身保険は不要です。
いずれは必ず払わなければならない保険金を、保険会社はどのように捻出するのでしょう?保険会社は定期保険と比べて高い保険料を集め、それを運用して死亡保険金に当てるようにします。その運用部分をCash Value(積立金)と呼びます。つまり終身保険は、一生涯続く定期保険と、一生涯運用し続ける積立金を合わせた商品と言えます。
制限があるものの、積立金を死亡する前に現金化することもできます。保険を解約にすることにした場合、死亡保険金のために運用していた資金を、死亡保険金を受け取らない代わりに返してもらえます。また、保険は続けるものの、一時的に必要な資金としてCash Valueからローンという形で引き出すこともできます。
このような積立金に関わる特徴から、終身保険はさまざまな誤用の元となっていると言えます。終身保険が必要な状況は限られているのに、「(Cash Valueがあるので)貯金になる」あるいは「掛け捨てでは払ったお金がなくなるだけだが、終身ならお金が戻ってくる」などの理由がその例です。しかし、Cash Valueがあるから得になるわけではなく、その分、割高な保険料を払う必要があります。生命保険の目的が被保険者が死亡したときの損害を補うことを忘れてはいけません。
終身保険にはいくつかの種類があります。Whole Life Insuranceは保険料が常に一定で、払い続ける限り一生、死亡したときに保険金を受け取る事が保証されます。金利や株式市場の動向によらず、保険料が一定で保険金の額も変わらないのが特徴です。
保険料が値上がりする事なく、保険金の額も保証されているのはメリットといえますが、その代わり、他の生命保険に比べ、一番割高となっています。保険会社は払い込まれた保険料の一部をCash Valueとして貯蓄、運用します。運用がうまく行かなくても保険会社が困らないように、運用利回りを低く見積もっているので、その分、保険料が高くなるのです*2。終身保険が必要で、保険料が高い事を気にせず、絶対確実な保険が欲しい人に向いているといえます。
Universal Lifeは、Whole Lifeでは固定されている保険料と保険金が固定されていません。保険会社の運用利回りが変わったり、死亡率や寿命が変わって保険金の支払いが変動した場合、加入者の負担も変わります。また、加入者が希望すれば保険金の額を変更する事も出来ます。
十分なCash Valueがあれば、保険料の支払い金額を一時的に下げたり、まったく払わなくても(しばらくの間は)保険を保持する事が出来ます。Universal Lifeはその柔軟性から、終身保険が必要な人で、かつ保険料を気にする人に向いていると言えます。
Variable Lifeは、金融商品と生命保険を合わせた商品と思えば分かりやすいでしょう。自分が払い込んだ保険料は、一部のコストを引いて、残りは自分が選んだMutual Fundで運用されます。その運用成績次第でCash Valueが上がったり下がったりします。本来は保険会社が持つべきCash Valueの運用責任を、すべて加入者が負うことになります。
Variable Lifeは運用責任が加入者に移るにもかかわらず、Mutual Fundの経費が高く、投資として考えると非常に不利な金融商品です。わざわざVariable Lifeを選ぶことが適切な人は非常に限られると言えます*3。
保険会社はできるだけ高い商品を、つまりWhole LifeやUniversal、VariableなどのPermanent Life Insuranceを売ろうとします。保険エージェントもそちらの方がコミッションが多く手に入ります。このため、加入者のニーズとは関係なしにこれらの生命保険を勧められる事になります。しかし、終身でなければならない理由がない限り、定期保険で加入者のニーズを満たすことが出来ます。エージェントがこちらの話もろくに聞かないでPermanent Lifeを勧めた場合、要注意といえるでしょう。
終身保険をエージェントが「貯蓄性がある」という表現で、あたかも得になるような言い方で売ろうとする場合があります。しかし、終身保険の貯蓄性は、純粋な貯蓄や投資に比べると経費が高いため、有利とは言えません。貯金や資産運用をしたいのなら、銀行預金やMutual Fundなど、その目的にあったものを選びましょう。生命保険はあくまで、万が一、加入者が死亡したときのためである事を忘れないようにしましょう。
生命保険はこのページで紹介できないほど、さまざまな特約や利用形態、特典があり、非常に複雑です。特に終身保険は複雑になっています。幸い、多くの人は定期保険で十分なため、比較的簡単ないくつかの項目をしっかり理解すれば十分です。どちらを選ぶにしても、なぜその保険を選ぶのか、それぞれの特約はどんな状況で役に立つのか、しっかりと調べる必要があります。
会社の福利厚生の一部として生命保険に加入し、保険料は会社が負担してくれる場合があります。しかし、これだけで生命保険があると安心してはいけません。会社が加入しているグループ保険は、通常、年収と同じか、せいぜい2~3倍程度までの保険金になっています。多くの人にとってはそれでは不十分でしょう。
自分で保険料を積み増して、グループ生命保険の保険金額を上げる事も出来ます。この場合、グループだから割安と思ってはいけません。会社が提供する生命保険は、健康診断などが不要で誰でも加入する権利があるため、保険料は割高になる傾向があります。会社が出してくれる分は加入しても構いませんが、自分で保険料を負担する場合、必ず個人で加入する場合と保険料を比べる必要があります。
さらにグループ保険では特約などを追加する事が出来ない場合がほとんどです。しかも会社を辞めてしまえば保険も解約になってしまいます。歳を取ってから転職をすると、生命保険を探すのに苦労する事になります。生命保険は自分で加入しておき、会社の生命保険はおまけ程度に考えておいた方が無難です。
生命保険は本来、どのような理由であれ、被保険者が死亡したら残された遺族が困らないように保険金が支払われる仕組みであるべきです。ところが生命保険の中には特別な理由の場合だけ、保険金が支払われるものがあります。どのように死んだかで保険金がもらえるのか、もらえないのかが決まるようでは、意味がありません。
Accidental Death Insuranceは限定的な生命保険の一例です。事故などが原因で死亡した場合は保険金が支払われますが、病気の場合は支払われません。病気で亡くなったときのほうが、残った遺族は経済的な負担が大きくなる場合も多いので、助けになりません。同様にTravel Accident Insuranceも旅行中の事故で死亡した場合だけしか保険金が下りません。
子供に対して生命保険を掛けるように勧誘される場合があります。しかし、生命保険は被保険者が家族を養っていて、その収入(や労働)が死亡しても経済的に困ることが無い様にするための物です。子供に何らかの理由で多くの収入があり、家族がそれに頼っている状況以外では、子供に生命保険を掛ける必要はありません*4。
Permanent Insuranceを「Cash Valueがあるので貯蓄になる。将来、学費のために引き出すことも可能だ」と言って売るエージェントもいるかもしれません。しかし、学費のためであれば、別の方法で貯蓄、資産運用をしたほうが効率的ですし、そもそも生命保険を貯蓄と思うのは間違いです。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson
所得補償保険(Disability Insurnace)は何らかの理由で仕事ができなくなってしまったとき、収入を補償してくれる保険です*1。死亡したときに保険金が支払われる生命保険は誰もが「万が一のときのために」と思い、会社で入っている保険を確認したり、自分で選んで加入することが多いと思います。それに対して所得補償保険は意外と忘れられている、あるいはしっかり確認されずに会社の保険に加入しているだけ、という場合も多いようです。
しかし、統計的には65歳より前に死亡する確率よりも、障害のために半年以上働けなくなってしまう(=Disability)ことのほうが多くなっています*2。医療費はある程度、健康保険がカバーしますが、働けない期間は収入がなくなってしまいます。扶養家族がいた場合はその分、大きな経済的な負担になりますから、それを補うために、自分に合った所得補償保険に入る必要があります。
この章では、主に長期の障害をカバーするLong-Term Disability Insuranceを対象として書きます。
所得補償保険では、特別な用語が使用されるので、説明が分かりにくい場合もあります。これらの用語をしっかり理解しておけば、保険エージェントと相談する場合や、ウェブで保険を調べるときにも役立ちます。
Elimination Period(免責期間)は障害が発生してから、実際に支給が受けられるようになるまでの期間です。多くの場合、30日、60日、90日、180日のいずれかになります。Elimination Periodが長いほうが、その分、保険料も安くなります。
Benefit Period(補償期間)は補償が受けられる期間のことで、2年間、5年間、65歳まで*3、一生涯などの選択肢があります。保障期間が長いほど、保険料も高くなります。障害が長く続いた場合のことも考え、5年以上の補償期間にするべきでしょう。
障害のために仕事ができなくなったとき、今までと同じ職種では仕事ができないが、別の職種ならできる場合があります。専門性が要求され、所得水準が高い場合、自分の職種の仕事ができなければ収入が大幅に下がってしまいます。障害を追った時と同じ職種で仕事ができない場合に、それをDisabilityと認めるのが、Own Occupationです。Own Occupationであれば、その人の住んでいる地域で、学歴や経験にふさわしい仕事につけなくなった場合、Disabilityと認めてもらえます。
Own Occupationでない場合、つまりAny Occupationの場合は、何らかの仕事に就くことができる場合、Disabilityとして認められません。例えば脳外科医が障害を負って手術ができなった場合、Own OccupationであればDisabilityと認められるでしょう。しかし、Any Occupationであれば、例えば清掃員として仕事ができれば、Disabilityとは認められないことになってしまいます。
日本語では既往症が一番近い意味ですが、同じではありません。既往症は既に治っている病気を指すのに対して、Pre-Existing Conditionは病気と怪我を含み、保険が有効になる前の一定期間(3ヶ月や1年間)に診療を受けたり薬を処方された場合を指します。また、症状を自覚しているのに医者に掛からなかった場合も、医者に掛かったのと同様の扱いを受け、Pre-Existing Conditionとなります。
所得補償保険ではPre-Existing Conditionが原因のDisabilityは保険金の支払い対象となりません。告知義務もありますから、嘘ではないにせよ、意図的に情報を告知しなかった場合も、保険の請求が却下される原因となります。どういった場合にPre-Existing Conditionになるのか、加入前によく確認する必要があります。
多くの所得補償保険は収入の2/3ほどをカバーするようになっていて、失う収入のすべてを補償はしません。この理由は、できるだけ加入者の職場復帰を促すためです。障害を負った際に、働かなくても何も変わらず生活できると、職場復帰への意欲が少なくなってしまいます。リハビリなどを意欲的に行わせるために、2/3ほどの補償を基本としているのです。
それ以上になると、保険料が高くなります。その為、一般的には基本的な補償額を受け入れることが多いようです。しかし、自分が障害を負った場合、配偶者が仕事を減らして面倒を見る場合があります。そういった場合には自分だけではなく、配偶者の収入も減ってしまいます。状況によっては2/3以上の補償金額にしておいたほうが安心でしょう。
Own Occupationであれば、その人にふさわしい職種に就けなくなった場合に保険金が支給されます。他の仕事ならできる状態であれば、元々の職種ではなくても仕事に就く場合もあるでしょう。True Own Occupationであれば、他の職種に就いた場合でも、ふさわしい職種に就くことができない限り、保険金が支払われます。しかし、True Own Occupationは稀で、多くの場合はModified Own Occupationとなります。Modifiedでは、他の仕事に就くことができた場合、その収入に応じて保険金の支給額が減額されてしまいます。
可能であれば、True Own Occupationの方が良いでしょう。Modifiedでは、以前の収入よりも少ない仕事をした場合でも、保険金が全く支給されなくなる場合があります。例えば他の仕事で以前の80%ほどの収入になったとします。所得補償保険で支給されるのは以前の収入の2/3ですので、他の仕事の収入が保険金額を超え、支給はなくなってしまいます。
Long-Term Disability Insuranceは免責期間があり、保険金が支給開始されるまでに必要なお金を、他の方法で確保しなければなりません。雇用主がShort-Term Disability Insuranceを提供している場合、ちょうどShort-Termの支給が終わるときに、Long-Termの免責期間が終了し、支給を受けられるようになっているはずです。この場合は、Short-Termの支給が始まるまでの比較的短い期間だけ、緊急資金など自分の預金を使えば済みます。
もしShort-Termが提供されていない、あるいは自営業などの場合は、自分でShort-Term Disabilityにも加入するか、あるいはLong-Termの支給が開始されるまでに十分な緊急資金を用意しておくべきでしょう。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson
保険にはさまざまな種類がありますが、全ての保険が必要ではありません。保険の中にはほとんどの人にとって不要な保険や、他の種類の保険でカバーするべきものがあります。以下の保険は、ほとんどの人にとって不要です。こういった保険のダイレクトメールを受け取ったり、エージェントに勧められた場合は注意しましょう。
家を買うとすぐに多くのダイレクトメールが送られてきます。その中にMortgage Life Insurance(またはMortgage Protection Life Insurance)があります。これは加入者が死亡した際に住宅ローンの残高を払ってくれる保険です。保険の種類によっては、死亡以外にも障害を負った場合を含む場合もあります。
この保険の問題点はいくつかあります。まず、保険金の使途が住宅ローンの残高の返済に限られていることが上げられます。生命保険のページで解説したように、生命保険はさまざまな必要性をカバーしなければなりません。しかし、この保険では住宅ローンの支払いという限られた目的しかカバーしません。
保険金額も消費者を混乱させるものです。住宅ローンは支払いを続けていけばだんだんと残高は減っていきます。Mortgage Life Insuranceは多くの場合、最初の住宅ローンの元本で保険金額があらわされますが、その金額がずっと続くのではありません。だんだんと減っていく元本に合わせ、保険金額も減っていきます。その為、同じ保険金額で他の種類の保険と比較することが難しく、場合によっては割安と勘違いさえしてしまう場合があります。保険会社は意図的にそういった勘違いを誘導するようなダイレクトメールを作っているように思えます。保険金額の減額を正しく計算に入れると、Mortgage Life Insuranceは保険料が割高な保険となります。
限定的な保険であること、保険料が割高であることから、Mortgage Life Insuranceは普通は不要な保険であるといえます。死亡した際の補償が必要であれば、定期保険を買うべきでしょう。
ただし、Mortgage Life Insuranceが有用な場合も、稀にあります。健康診断が義務付けられていない保険なら、健康問題を持っている人も加入できる可能性があります。その場合であっても、既往症などが除外項目になっている場合があります。必ず詳細な規則を全て確認してから買うべきでしょう。
延長保証(Extended Warranty)は電化製品などを購入する場合、店員から勧められる製品保証です。通常、メーカー保証がついており、延長保証はその期間が終わったあと、販売店が別に保証します。
保険を掛けるべきものの原則は、損害が発生したときの規模が大きいものです。電化製品などは仮に動かなくなったとしても、単価が安いものは買い換えれば済みますし、単価の高いものは修理費を払って使い続ける事になります。損害がそれほど大きくはないので、そもそも保険を掛けるべきではないのです。
延長保証は非常に割高な保険です。電化製品で言えば製品価格の5~10%ほどになり、故障する確率と比べると高い金額を払う事になります。さらに保証の条件が複雑で、消費者に誤解を与えていることがあります。例えば保証されるのはメーカーの保証が切れた後だけであるため、3年保証と表示されていても、実際にはメーカー保証の1年に、販売店の2年保証が追加されたものである場合があります。保証対象が限定的で、実際には使えなかったということもありえます。このような理由から、延長保証は特別な理由がない限り、購入する必要がありません。
延長保証を掛けた方が良い場合も少ないながらもあります。非常に高額で故障率も高い製品、例えばリアプロジェクションテレビはその例です*1。また、中古車などを買う場合も延長保証は検討しても良いでしょう。中古車の延長保証は保証対象がさまざまで、駆動系だけしか保証しないものから、新車のメーカー保証に近い総合的なものまであります。
クレジットカード会社から、利用明細書に同封されて生命保険の勧誘が送られてくる場合があります。この生命保険はカード利用者が死亡した際にカード残高を払ってくれるというものです。保険料はカード残高に依存して決まり、例えば残高$100当たり59セント、などと表記されています。
自分のファイナンスを正しく管理している人は、毎月、カード残高を残さず、全額を払っているはずです*2。さらにこの保険は健康診断などを要求しないので、この保険料は通常の生命保険の保険料と比べると、非常に割高になっています。健康であれば、クレジットカードの生命保険ではなく、通常の生命保険に入れば良いことになります。もし健康上の理由からどの生命保険にも入ることができないか、不治の病を患い、余命がもうあまりない、という状況にでもならない限り、この保険は不要です。
同じ理由でカード会社が提供するDisability Insuranceも不要です。加入者がDisabilityのために働けなくなったら、カードの残高を払ってくれるという保険です。しかもこの保険は割高なだけでなく、Disabilityの認定が厳しくて支払いをしてくれないという問題もあります。Disabilityの原因が病気では適用されず、事故の場合だけに限られるという条件が付くものもあります。
失業した場合にカードの支払いを猶予してくれる保険もよくあります。失業したときのためには緊急資金を用意しておくべきですから、正しく準備している人には不要の保険です。この保険は、支払いを猶予はするが利息が付く場合や、猶予期間中はカードを使うことができなくなるなど、不合理な条件が付くものもあります。
このようにカード会社が勧誘する保険は、普通の消費者には意味がないものであり、加入する必要はまったくありません。
ボートやジェットスキーなどを旅行先で借りることがあります。また、キャンピングカーや引越しトラックなど、通常のレンタカーではないものを借りることもあるでしょう。こういった非乗用車のレンタルは、通常のレンタカーのような保険ではない場合が多いので、気をつける必要があります。
例えばボートを借りるときに、ボート自体の価値が$30,000なのに物損の際の補償が$1,000までの保険では、意味がありません。ボートにかすり傷をつけてしまった程度ならその保険でカバーされますが、岩にぶつけて大きな凹みを作ってしまったら、その保険だけでは不十分でしょう。ボートの場合は住宅保険でカバーされる場合がありますから、レンタルする前に確認しておくべきでしょう。
レンタルトラックで問題になる場合もあります。例えば米国の大手ホームセンターでは、購入した資材を運ぶ手段として廉価なトラックレンタルを提供しています。しかし保険は提供しておらず、損害が発生した場合は自分で補償しなければなりません。自分の自動車保険などの補償対象になっていれば問題ないのですが、トラックなど特殊車両の場合、補償対象にならないほうが多いでしょう。
結婚式のレセプションや誕生日などのイベントのためにホテルの会場やレストランを貸し切りにする場合があります。こういった場合、少人数で利用する場合とは別に、契約を結ぶことになります。その際、必ず契約書を最初から最後まで読むようにしましょう。イベントの主催者側になった場合、どのような責任が掛かるのか、ホテルやレストランの責任はどこまでか、確認する必要があるからです。
例えばレストランを貸し切って結婚式のレセプションを行うとしましょう。もし契約書に「事故があった際は主催者が一切の責任を負う」という条項があったら、主催者の落ち度による責任だけでなく、参加者が酔っ払って起こした事故や、レストランの料理のために発生した食中毒まで、すべて主催者として賠償責任を負うことになります。参加人数が多いイベントであれば、いくらアンブレラ保険があっても足りないでしょう。
必ず契約内容を確認し、レストラン側が負うべき責任を明確にしましょう。主催者や参加者の過失による損害は自分の住宅保険でカバーできる範囲か確認し、必要であればイベント保険を探します。
自宅であれ、別荘やタイムシェアであれ、不動産を持っている場合、賠償責任が発生する確率、つまりリスクが高くなります。特別な方法で不動産を貸したり、使用した場合、思わぬときに保険が適用されないことがありえます。
アメリカでは特別なイベントのために自宅を貸し出す人がいます。スパーボールやニューヨーク市のNew Year's Eveなど、その時だけ自宅を空け、人に貸してレント収入を得る事が出来ます。しかし、自宅の住宅保険はこういった賃貸をそのままではカバーしません。こういった形で貸し出さないことがリスクを避ける最善の方法です。しかし、どうしても貸すのであれば、十分なデポジットを預かる、契約書を交わして借り手に賠償責任がある事をはっきりさせる、事前に保険会社と交渉し自宅の保険でカバーできるようにするなど、しっかりと準備をする必要があります。
別荘などを友人と共同で所有したり、タイムシェアで他の人とコンドミニアムのユニットを所有する事があります*3。共同所有では保険をどのように契約するか、慎重に検討しましょう。所有者としての責任がどんな形で掛かってくるか、明確にしておく必要があります。場合によっては保険エージェントと一緒に、最適な条項を検討するといいでしょう。
タイムシェアの場合は管理会社が保険をまとめて掛けており、他の人が使っている間や、使用権を交換して他のユニットを使うときはカバーされている事が多くなっています。しかし、自分で自分のユニットを使うときはカバーされていない場合があります。その場合、友人が自分と一緒にそのユニットを使用しているときに怪我をしたら保障されない事になってしまいます。ユニットそのものの保険や、自分の住宅保険が賠償責任をカバーするか確認し、カバーされないケースがあれば必ず、追加条項でカバーされるようにするなど、対策を取る必要があります。
Insurance for Dummies
著者:Jack Hungelmann
Personal Finance for Dummies, Fourth Edition
著者:Eric Tyson