ポートフォリオ

ポートフォリオとは資産をいくつか違う投資先に分けて分散投資すること、あるいは資産運用全体を指します。株や債券、現金資産の割合を自分のリスクに合うように調整することは重要です。

リスク

リスクとは?

リスクといっても人によって思い浮かべるイメージはさまざまでしょう。金利の変動リスク、元本割れリスク、インフレーションリスクなど投資にまつわるリスクはさまざまなものがあります。ポートフォリオを組む理由はリスクを減らすためですから、まずはリスクとはどんなものなのか、どのような性質があるのかを理解しましょう。

CDと株の例

例としてCD(定期預金)と、ある企業A社の株を考えてみましょう。5年満期で年利5%のCDの場合、1年目から5年目まで、常に利回りは5%です。毎年5%だから平均利回り(Average Return, Annualized Rateなどと言います)も5%です。A社の株は1年目から5年目まで、下記の表のように利回りが上がったり下がったりしましたが、同じように約5%の利回りでした。


CDA社株
1年目5% 6%
2年目5% -3%
3年目5% 13%
4年目5% 7%
5年目5% 3%
平均利回り 5.00% 5.07%

A社株は毎年、利回りが大きく変動しているにも関わらず、5年間の平均利回り*1はほぼ同じである事に注目してください。さて、ここで6年目の利回りを考えてみます。CDを1年更新すると、今までと同じ5%の利率だとしましょう。株は利回りは予測できませんが、A社の経営状態は過去5年間とそれほど違わないとします。あなたならどちらに投資しますか?

おそらく多くの人はCDにするのではないでしょうか?どちらも平均5%の利回りなら、確実に5%もらえるCDの方が、平均は5%であっても変動が大きい株より安心だからです。別の視点から見ると、A社株は、今までの平均は5%であっても、来年はどうなるのか分からないのです。この分からない、つまり将来が希望通りにならないかもしれない状態が、リスクの正体です。

リスクの測り方

上記のように投資家*2が希望する結果と違う結果になる確率がリスクといえます。では、どのようにリスクを数字として表すのでしょうか?

CDの場合、毎年必ず5%の利率でしたから、金利の変動はありませんでした。A社株は平均は約5%だったものの、-3%から最大で+13%まで大きく変動しました。言い換えれば5%プラス/マイナス8%だったと言えます。この+-に振れる度合を標準偏差(Standard Deviation*3)といい、リスクを表す度合として使用します。

リスクを計れるようになると、投資対象がどのくらいリスクがあるのか、比べられるようになります。例えばB社株は上記のA社株と同じように平均利回りは約5%だったとします。しかし標準偏差(記号σで表されます)が3%だったとしましょう。すると、利回りは5%プラス/マイナス3%の幅で振れるという事になり*4、A社よりも利回りが安定している事になります。上記のCDの場合は利率の変動が0なのでσ=0となり、利率リスクはない事になります*5

リスクフリーの投資

リスクが全くない、つまり決まった利回りが確実にもらえる投資をリスクフリー(Risk Free)と言います。リスクフリーである投資先(Asset)として一番良く使われるのはTreasury Bill(1年以下の米国債)です。アメリカという最高格付けの国の国債で、過去に債務不履行を起こした事がなく(デフォルトリスクはないとして扱われる)、1年以下という期間ですから、インフレーションの変動もそれほど気にしなくて構いません。

実用上はほぼリスクフリーになるものとしてTreasury Bill 以外にCD(Certificate of Deposit = 定期預金)とCP(Commercial Paper)があります。CDは銀行が倒産した場合は元本は$100,000までFDICで保証されていますが、利息は保証されていません。CPはわずかならがデフォルトリスクがあります。しかし、どちらもリスクの度合としては非常に低いものになっていますので、普通のポートフォリオの中ではリスクフリーとして扱っても構わないでしょう。

Treasury Bill, CD, CPの3つの投資先は主にMoney Market Fundの投資先になっているので、Money Market Fundはリスクが非常に低い投資先といわれているのです。自分のポートフォリオにリスクフリーの投資先を入れる場合はT-BillやCDだけでなく、出し入れが自由なMoney Market Fundも使うといいでしょう。

リスクと利回り

今度はもう少し現実に近い例を考えてみましょう。CDはリスクが非常に低いので利率も低くなっています。株式はリスクはあるものの長期的に見れば高い利回りになります。ここでC社株を考えてみましょう。C社の株の平均利回りは11%ですが、リスクはプラスマイナス22%だとします。酷い年には11-22=-11%、良い年には11+22=33%の利回りになるとします。さて、あなたならどちらに投資しますか?

この例が極端だと思った方、このC社は実は株式市場の平均の数字を使っています。株式市場の面白いところは、平均で11%の利回りであるものの、11%に近い利回りの年よりも、11%から離れて良い利回りか、悪い利回りの年のほうが多い事です。つまり、極端に上下しながら長期で見ると11%の利回りになるのが、株式市場なのです。

また、株式市場は毎年の上下のリスクを取る代わりに、平均としてCDなどよりも高い利回りを得られる投資先になっています。リスクを多く取れば取るほど、利回りは高くなるのが市場原理です。ただし、高い利回りを得るには平均化する必要があります。平均化の詳しい話は分散投資の項目で解説します。

バランスの取り方

さて、5%のCDとC社株と、どちらにすれば良いでしょう?例えばあなたの投資目標が、年間8%の利回りだったとします。CDでは5%ですから少なすぎ、C社株だけではリスクが多すぎて不安です。そこで、資金の半分をCDに、半分をC社株に投資することにしましょう。このとき、全体の利回りは

   全体の利回り = CDの利回り x 50% + C社株の利回り x 50%

で計算されるので、年間8%の利回りになります。もちろん、この数字は平均であって、C社株がこれから1年間どのような利回りになるか予想はつきません。しかし、長期的に見れば8%の利回りになると期待できます。

では、リスクを見てみましょう。CDは銀行の倒産など有り得ないわけではないのですが、ここではリスク=0としましょう。C社株のリスクは22%ですから、

   全体のリスク = CDのリスク x 50% + C社株のリスク x 50%

となって、11%の平均リスクになります。これなら悪い年でも平均利回り8%-リスク11%=-3%、つまり3%の損失になり、何とかやっていけそうです。逆に良い年は8%+11%=19%で、市場の上昇の恩恵も受ける事ができます。

Asset Allocationの最初の1歩

株式はリスクが高い代わりに利回りが多く、それをリスクが全くない投資先と組み合わせる事で、リスクと利回りのバランスが取れることが分かりました。上記の例では半々で資産を分けて投資しましたが、投資の配分は自分のリスク許容度と目標利回りでさまざまに決める事ができます。上記のグラフの線上であれば、自分の好みに合ったリスクと利回りの組み合わせにする事ができます。

資産運用を始めよう、あるいは初めてMutual Fund を買って投資をしていこう、という人は、まずこのリスクフリーの運用先と、リスクがある運用先との割合を考えて見ましょう。「投資はリスクがある」のは事実ですが、それをリスクフリーとの組み合わせで考える事によって、自分が許容できる範囲にコントロールする事ができるのです*6

*1:ここではAnnualized Compound Rate = 複利で計算した平均利率を使っています。
*2:Investorを訳すと「投資家」になりますが、日本語の投資家は「資産家」のイメージがありますよね。しかし、これからは投資家とは将来のためにお金を活用する全ての人を指すと考えるべきでしょう。これを読んでいるあなたも「投資家」です。
*3:厳密な標準偏差はこの例のように最大の振れ幅ではありませんので、もう少し小さくなります
*4:統計学を知っている人は、信頼区間を大きく取り2xσを使ってください。ここでは話を簡単にするために1xσで考えていきます。
*5:それ以外のリスク、例えば銀行が倒産するリスクはあります。
*6:コントロールであって、リスクを無くす事ではない事に注意してください。リスクは無くすものではなく、うまく付き合っていくものです。

分散投資

分散投資とは?

この章の内容は金融工学のポートフォリオ理論を数式を使わずに説明しようとしています。少し難しい内容になっていますので、読み飛ばしても大丈夫です。

分散投資の概念は近年になってコンピューターの登場とともに発展してきました。株式市場での過去のデータを統計的に解析して、どういう組み合わせで株を買ったらリスクを低くできるか、という事を調べていったら分散投資(Diversification)になったのです*1

分散投資の元になる考えは、いくつもの株を持って、リスクを分散することにあります。1社の株だけに投資してその会社が倒産してしまえば全て失ってしまいますが、100社に投資すれば、1社が倒産しても被害は少なくて済みます。倒産は極端な例ですが、株価の上下は1つの会社だけであれば激しいですが、何社もの動きを平均化すれば、上下の幅は抑えられます。

2つの株のポートフォリオ

例えば右のグラフのように価格が上下しながら、平均すると段々価格が上がっていくX社の株を考えてみましょう。青の線で表されるグラフがX社の株価の動きです。


この株価は上下を繰り返しながら、右肩上がりにだんだんと価値が高くなっていきます。しかし、短期的に見ると大きく株価が下落することもあります。この株だけに投資するのでは不安なので、次にY社株(オレンジの線)と合わせて2つの株に資金を半分ずつ投資するポートフォリオを考えます。

この2社はまったく別の業界で、一方の株価が上がればもう片方の株価は下がるような動きをしています*2。そのため、合計すると上下動が少なくなり、なだらかな線になります。

ここで重要なのは、この2社の株価はお互いの株価に無関係に上下している事です。もし2社の株価が同時に上がり、同時に下がるような関係だった場合、2つの株を買っても動きはなだらかにはなりません。

株価の相関関係

相関関係(Correlation)とは、2つの株価の動きがどの程度似ているかを統計的に表したものです。相関関係があると(正の値だと)2つの株価は同時に上下し、相関関係が負の値だと、片方が上がればもう片方は下がる、という逆の動きになります。相関関係が無い場合、片方が上がったとき、もう片方は上がるときもあれば、下がるときもあり、値動きが無いときもあります。つまり、無関係な状態です。

上記の2社を使ったポートフォリオで重要だったのは、2社の株価が別々に上下する事でした。つまり、相関関係が無い事が重要だったのです。現実的には、2社だけでこのようになだらかなカーブにする事は難しいものです。しかし、10社、20社とポートフォリオの株が増えると、それぞれの株価がバラバラに動く事によって全体的に利回りがなだらかになります。この利回りの上下をなだらかにする事が、分散投資の本質です。

リスクは毎年の利回りの変動で計られます。利回りの上下をなだらかにする事により、毎年の利回りの変動が平均化されますから、その分、リスクが減ったといえます。つまり、上下動が少なく、毎年の利回りが大きく変わらない状態が低リスクな状態になります。

分散投資のルール

分散投資を行うとリスクが減る事が分かりました。ただし、リスクを減らすためにはいくつかのルールに沿って投資しないと、投資は分散しているけどリスクは分散されてない(減っていない)ということになってしまいます。そこで、分散投資の基本ルールを見ていきましょう。

似たような株を買わない

例えば航空業界の株を何社も買っても、航空業界全体が低迷してしまえば、自分の持っている株のどれもが値下がりしてしまいます。つまり、1社のリスクを分散しても、航空業界自体のリスクは分散できていないのです。そこで、航空業界とは直接関連が無く値動きをする業界の株を買うことでリスクを分散できます。食品、金融、自動車、医療、ハイテクなど、違う業界の会社から選べばその業界の不調を別の業界の好調でカバーする事ができます。

何社もの株を買う

数社の株を買っただけでは、株価の上下がうまく打ち消しあわないと、上記のグラフのようになだらかにはなりません。そこで、何社もの株を買えば、全体としてよりなだらかになります。20~30社程度の株を持てば、リスクはS&P 500 Indexと1 Percentage Point ほどしか違わなくなります。つまり、うまく株を選べば500社の株を買わなくてもS&P 500 とほぼ同じ値動きをするポートフォリオを組める事になります。

十分な資金を用意する

何社もの株を買うとなると、手数料だけでも費用が多くなります。最近はディスカウント証券会社でかなりの量(例えば5000株など)まで非常に安い手数料で買えます。それでも、30社の株を買うとなると、1回の手数料が$10としても$300掛かります。全体の資金に対して手数料が1%以下になるようにするには、この場合、最低でも$30,000が必要です。しかも、これは株投資だけの分なので、後述するポートフォリオ全体のバランスを取るためには、これ以上の資金総額が必要になります。

頻繁に売り買いしない

一度、分散投資としてポートフォリオを組み、30社の株を買ったとします。市場のそのときの状況により、株価が大幅に下がる場合もあるでしょう。そういった場合でも安易に売り買いして保有株を変えてしまえば、分散投資の意味が無くなってしまいます。売り買いのために手数料が掛かるばかりでなく、タイミングを計って売ろうとすることにより、多くの場合、損失が増えていってしまいます。一度買ったら、自分の決めた投資期間(最低10年)は売らない*3つもりで投資しましょう。

分散投資のリスクと利回り

リスクと利回りで使ったグラフを、分散投資をした場合にどうなるか見てみましょう。5つの株を組み合わせてポートフォリオを組む事を考えます。個々の株のリスクと利回りは◆の点で表されています。この5つの株はそれぞれ相関関係が低いとしましょう。5つの株をさまざまな割合で組み合わせたとき、出来上がるポートフォリオの組み合わせは弓型の実線の内側(青で示された範囲)になります*4

グラフを見ると面白い特徴がわかります。青い範囲の左側の境界線をEfficient Frontier (効率的フロンティア)と言いますが(これは覚えなくても大丈夫)、この境界線は1つの株では実現できないリスクと利回りの組み合わせを示しています。

一番左端の点(オレンジの点)を見ると1つの株では実現できない低いリスクの投資ができることになります。これが分散投資の威力です。「どの株が良いか」といくら探しても、ちょうどオレンジの点のような低いリスクで12%の利回りを得るような投資対象はありません。しかし、5つの株をうまく組み合わせる事によって、ちょうど自分にあったリスクと利回りの関係のポートフォリオを組む事ができます。

リスクフリーと組み合わせる

5つの株の分散投資では、一番リスクを減らした状態でもオレンジの点のリスク(14%)でした。そのときの利回りは12%と魅力的なのですが、リスクが高すぎます。そこで、上のグラフで見たポートフォリオとリスクフリーの投資(通常はTreasury Bill)を組み合わせる事を考えてみましょう。すると、自分のリスクにあった投資割合を決める事ができます。前章で見たバランスの取り方を参考にして、線を引けば、さまざまなリスクと利回りの割合を選ぶ事ができます。

リスクを減らして5%程度にしたいとき、直線状の青の点で示されるポートフォリオにすれば、利回りは約8%になります。このポートフォリオは株が約3割、Treasury-Billが7割という組み合わせで実現できます。株は赤の点で示される5つの株式の組み合わせに投資します。

リスクフリー資産と組み合わせてポートフォリオを作るとき、分散投資で得られる一番リスクが少ないオレンジの点ではなく、リスクは少し多いけれども利回りもその分高い赤の点で示されるポートフォリオと組み合わせる事に注目してください。これは株式の投資はリスクを減らす事が第一目的ではなく、利回りが目的で、リスクとのバランスが取れていれば良いからです。もしリスクを減らしたければ、株式を組み合わせて減らすよりも、リスクフリー資産と組み合わせて減らしたほうが、利回りは良くなります(オレンジの点よりも直線が上にあることで分かります)。

分散投資の現実

分散投資を行うと、理論上はリスクを低く抑えたり(オレンジの点)、リスクと利回りのバランスが取れた(赤の点)ポートフォリオを組むことができることが分かりました。それでは、現実的にこういった理想的な状態のポートフォリオを組むことができるのでしょうか?

現実問題

現実にはいくつかの理由で、オレンジや赤の点のポートフォリオを簡単には組むことができません。まず考えなければいけないのが、データの変動です。リスクは利回りの変動で示されますが、株価で言えば刻一刻と変動しており、一定しません。株価同士の相関関係も常に変化しています。

ある程度長期的な期間のデータから計算すれば、1日単位の変動はそれほど気にしないで済みます。では、どのくらいの期間のデータを取ればいいのでしょうか?過去3年間?10年間?50年間?どの期間をとってもどちらが「正確」なデータというわけではなく、統計をどのように取るかの違いに過ぎません。データの取り方で結果も違ってくるのは当然です。

さらに一番最適な赤の点を決めるためには、リスクフリーの投資先、つまりTreasury-Billの利率を必要とします*5。ところが、T-Billの利回りは発行するたびに変わっていきます。当然、リスクと利回りのグラフも変わってしまいます。そのたびにグラフを引きなおして株を買いなおすのは、手数料が無駄なだけでなく、税金が掛かってしまいます。

現実的な解決方法

それでは、投資対象として何を選べばいいでしょうか。株式への投資としていちばん簡単なのはIndex Fund 投資です。

Index Fund だからといってオレンジや赤の点のように最適な株の組み合わせになっているとはいえません。しかし、多くの有名なIndexは常にグラフの左端近くに位置し、極端にリスクが高くなることがありません。Index Fundがお得な理由で説明した理由もあって、ポートフォリオの中心になるファンド(Core Fund)はIndex Fundから始めるといいでしょう。

リスクフリーの投資はどのようにすればいいでしょう?簡単な方法は銀行預金(Savings AccountCD)、Money Market FundTresury BillSavings Bondなどの現金資産として保有する事です。これらはどれもリスクフリー、もしくは限りなくリスクフリーに近い運用先です。生活費など普段使うお金とは別に、現金資産を取っておきましょう。これは緊急資金(Emergency Fund)と考えても構いません。

分散投資の具体例

それでは実在のファンドを使って、リスクと利回りのバランスの取り方を見てみましょう。ここで示す例はあくまでも参考のためで、特定の投資を勧めるものではありません。

分散投資の対象として、Vanguard の500 Index (VFINX)を考えてみます。このFundはS&P 500 Indexに基づいたファンドで、Index Fundとして定評があります。Yahoo!Finance で確認すると、このファンドの10年間の平均利回りは9.27%、リスク(Std. Deviation)は16.99です。またTreasury-Billをリスクフリーの投資として使うと、利回りは1.2%ほどになります*6。この2つの投資先をグラフで示すと次の図のようになります。

この2つの投資割合を決めれば、直線上で表されるどのポートフォリオでも組めます。例えば、利回りの目標を6%にしたいときは、直前上のの点になります。2つの投資割合はの位置から、VFINXがおよそ6割、Treasury-Billが4割になります。

ところが、10年ではなく、過去5年を見てみると、マイナス0.61%の利回り、過去1年になると何とマイナス22.15%です。これではリスクを取る代わりに利回りが高くなる右肩上がりの直線が引けません。

このように、現実のポートフォリオでは単純に直線を引いて割合を出せるものではありません。どの期間のデータを取るかで結果が変わってくるからです。ここでは実際の投資でこのような直線を引くことが重要ではなく、考え方が重要である事を理解しておいてください。まず、リスクがある投資は、その分、利回りも高くなければなりません。グラフが右上がりになるからこそ、意味があるのです。あるいは右肩上がりになることを期待して、投資をする事になります。右肩上がりのグラフはリスクを取ればその分、利回りが高くなるのです。

の点は2つの投資の合計であることにも注目してください。利回りが6%でリスクが10(もしくはそれ以下)の投資対象が見つからない場合、リスクが高い株式ファンドと、リスクが全く無い(とされている)Treasury-Billを組み合わせることで、目指しているリスク/利回りの割合を実現できます。自分に合った投資とは「どの投資先が一番いいか」を探すのではなく、「どのような投資の組み合わせが一番自分にあっているか」を探すことなのです。

*1:厳密にはこういう風に分散投資が「発見」された訳ではありません。興味がある人は金融関係の歴史を勉強するといいでしょう。
*2:このグラフのようにはいきませんが、例えば石油業界(石油価格が上がると儲かる)と航空業界(石油が高くなると利益が減る)は株価が反対方向に動く傾向があります。
*3:絶対に売らないとまでは決めなくても構いませんが、売るときの条件を株を買う前に決めるのが良いでしょう。例えば損失が40%を越えたら売るとか、株価が倍になったら保有数の半分を売る、などの条件をあらかじめ決めておきます。
*4:この範囲を算出するにはそれぞれの株価のリスクと利回り、また5つの株の間の相関関係が必要になります。
*5:リスクフリーの投資先の利率は、ちょうどグラフの切片で示されます。
*6:2003年4月の執筆時点でのデータ

資産クラス

資産分配と資産クラス

分散投資することで、個別株のリスクを回避できる事が分かりました。個々の株に投資するのではなく、ファンドを通して、市場に出回っている多くの株に幅広く投資する事を市場全体に投資すると言います。通常はインデックスとしてS&P 500やさらに幅広いWilshire 5000 を使うファンドに投資する事で市場全体に投資することになります。

株式市場全体に投資し、それとリスクフリーの運用先を組み合わせる事で、リスクと利回りのバランスを取れる事も分かりました。リスクフリーの投資は銀行預金など現金資産(Cash)として運用します。

さらなる分散

リスクを取って高い利回りを得る投資先としてS&P 500を考えましたが、さらにリスクを軽減する、あるいは高い利回りを得るにはどうすればいいでしょう?それには資産分配(Asset Allocation)を考えます。今まではリスクがある投資として株式(およびそのファンド)と、リスクフリーの投資として米国債だけを考えてきました。しかし投資先には他にも債券、不動産、外国株などがあります。株だけでなく、さまざまな資産クラス(Asset Class = 投資先の種類)に資産を分配(Allocate)すると、リスクを軽減し、利回りを高くすることができます。ここで、代表的な資産クラスをまとめておきましょう。

株の役割

株は多くの資産クラスの中でも利回りが高い部類に入ります。また、市場が熟成していて、誰もが簡単に低い経費で取引できます。そこで、リタイアまで時間がある場合、ポートフォリオの中で株は中心的存在になります。株にはリスクが伴いますが、長期間に渡って投資することでそのリスクに見合った利回りを得る事が出来ます。ポートフォリオの中心にするファンドをコアファンドといいます。

多くのフィナンシャルアドバイザーは大型株、中・小型株、成長株、安定株などに幅広く投資するべきと言っています。しかし、こういったカテゴリーに分けて、それぞれのカテゴリーでファンドを購入することは無駄や重複が多くなってしまいます。大型株も中小株も成長株も安定株も全て含むコアファンドを1つ選んで、一度に幅広く投資するのが理想的でしょう。

外国株

ヨーロッパやアジア、その他の地域に投資する株式ファンドをInternational Fund(外国株ファンド)などと呼び、別の資産クラスとして米国株式(ファンド)と区別する場合があります。米国の株式と外国の株式は必ずしも同じ値動きをしないので、リスクを分散する事ができます。International Fundは経費が高くなる傾向にあります。米国内のコアファンドを選んだ後に、補足的にInternational Fundを使うのが良いでしょう。

債券

株と常に比較される資産クラスの代表は債券(Bond)でしょう。債券はリスクが少ない(=価格変動が株式ほど激しくない)ので、株式投資と組み合わせて投資全体の利回りを安定させるために使われます。また、債券は主に市中金利の影響を受け価格が上下します。株価と違うパターンで値動きするので、株価が低迷したときでも債券を保有する事でポートフォリオ全体が安定します。

もう一つの債券の役割は、ポートフォリオからの利息収入を得る事です。債券はあらかじめ決まった利息支払いをしますから、ポートフォリオからの利息が必要な場合、安定した収入源として債券を使います。ポートフォリオからの利息収入が必要になるのは主にリタイアした後です。リタイアする時期が近づくとポートフォリオでの債券の割合を増やす事になります。

債券の役割

リスクが非常に低い債券、特にTreasuary Billはリスクフリーの資産クラスとして使います。米国の短期債(1年以下)はリスクが限りなくゼロに近く、元本割れを心配する必要がありません。既にリタイアしている場合などポートフォリオの安定が非常に重要な場合に組み入れると良いでしょう。しかし、ポートフォリオのGrowth(成長、増加)を望む場合、利回りが低すぎてしまいます。

米国債でも中期、長期と期間が長くなるにつれ、金利リスクが高くなります。金利リスクとは市中金利が上がったとき、その債券の価格が下がる事です。リスクがある分、利回りも良くなるのが普通です。元本が確実で利回りがいい中・長期債はポートフォリオからの利息収入を得るために使えます。

社債は金利リスクに加え、マネージメントリスク、つまりその企業自体の先行きに関するリスクが伴います。それぞれの企業の格付けでリスクを知ることが出来ます。社債は個々の企業のリスクを避けるためにMutual Fund を使って保有する方が良いでしょう。いずれの場合も、高い利回り(=利息収入)を得ると同時に、株と違う値動きをする資産として利用します。

社債でも特にリスクが高いものをジャンクボンドまたはHigh Yield Bondと呼びます。こういったリスクの高いものでも、ポートフォリオの一部に組み込めば全体を安定させる意味があります。ジャンクボンドは株価と連動しないだけでなく、格付けの高い債券とも違う値動きをします。利回りが高い分、リスクも高く、個々の債券ではなく、必ずファンドを使うようにしましょう。

不動産

不動産は資産クラスの中でもユニークな存在です。不動産は有形資産として直接投資することも、証券(Paper Asset)として間接的に投資することも出来ます。また、直接投資する場合は比較的簡単にLeverage(借金して手持ち資金以上の資産に投資すること)が可能になっています。

不動産は株、債券とも値動きが連動していません。そこで、ポートフォリオに適切に組み入れる事で、他の資産クラスが不振のときでも利回りを得る事が出来ます。ただし、不動産投資は地域性が高く、流動性が低い資産*1ですから、リスクも高くなります。

リスクが高くなりますが、不動産はその特徴が他の資産クラスと違う事から、ある程度の大きさのポートフォリオ*2では必ず組み入れておきたいものです。積極的に投資物件として家やアパートを買って貸す方法が一番分かりやすいものといえます。しかし、リスクや手続きの面倒さを考えると、すぐに直接投資をしようと思う人も少ないでしょう。

直接投資する、比較的簡単な方法は、自分の住む家をまず購入し、数年たった後にそれをレンタル物件にする方法です。何らかの事情で引っ越さなければいけないときに前の家を売ってしまうのではなくレンタル物件にする方法は比較的簡単です。また、最初からレンタル物件にするつもりでも、自分の家として購入し、住む事で、低い利率のローンを得られたり、税法上有利になる場合があります。

不動産に投資する間接的な方法、つまりPaper Assetとして投資する方法は、REIT(Real Estate Investment Trust)を保有する事でしょう。REITはさまざまな不動産に投資し、収入を投資家に還元するものです。1つのREITはいくつかの不動産を保有しますから、直接投資に比べてリスクをある程度分散できます。さらにREIT Mutual Fund であれば、さまざまなREITに投資することが出来ますから、ポートフォリオに組み入れるには最適でしょう。

また、住宅ローンを担保に発行する債券(Mortgage-Backed Securities = MBS)も不動産投資の一形態といえます(債券投資ともいえます)。FannieMae(ファニーメイ)やGinnieMae(ジニーメイ)が発行しているMBSは発行数も多く、個人でも購入できるほか(最低$25,000以上)、Mutual Fund を使えば少額から投資することが出来ます。MBSは、利息だけではなく元本の一部も支払いとして返ってくることが特徴です。

REITやMBSの間接投資の場合、ローンを組んで投資する、あるいは不動産の価値(Equity)を担保に借金するといった、直接投資のメリットはありません。しかし、ファンド会社、あるいは証券会社で手軽に投資できるというメリットがあります。どういった形でポートフォリオに組み入れるかは、その人の(経済)状況、好み、リスク許容度によって変ってきます。

その他

上記の資産クラス以外には、貴金属、先物取引、天然資源、骨董品などがあります。しかしいずれも、リスクや手数料が高かったり、流動性が低いなどのデメリットがあります。ポートフォリオの目的は適度なリスクで多くの利回りを得る事です。これらの資産クラスを保有してもそれほど利回りを高くすることが期待できませんから、普通の人のポートフォリオには向いていません。

*1:株や債券なら電話一本、クリック1つで売り買いできますが、不動産はそうはいきません。
*2:状況にもよりますが、ポートフォリオ全体が$100,000以上の場合です。

資産分配

資産分配の考え方

資産分配(Asset Allocation)の目的は、リスクを抑えつつ、高い利回りを得る事にあります。株と債券を考えた場合、株だけでは歴史的な利回りは高いものの、リスクも高く、時に大きく値下がりしてしまいます。債券はリスクを低く抑えられますが、利回りは株よりも低くなってしまいます。そこでこの2つを組み合わせて、リスクを高くすることなく、利回りを確保するのが資産分配の考え方です。この2つの資産クラスだけで考えれば、利回りを高くしたいのであれば、株に多く配分し、逆にリスクを減らしたければ債券に多く配分します。

投資期間とリスク

どのくらいのリスクを許容できるかと言うのは、投資期間によって違ってきます。現在30歳でリタイアメント資金を運用しているのなら、投資期間は30年以上になります。このような場合、リスクがあっても利回りが高い投資をすることになります。リタイアするまでその資金は必要ありませんし、数年間、価値が下がっても最終的に30年後に上がっていれば構わないからリスクをとる事ができるのです。また、リタイアメントの時期を自分で決める事ができるのなら、資産が下がってしまったときはもう少し働いて十分な資産が出来てから、ということもできます。

子供の大学教育資金の場合はどうでしょうか。例えば、子供が現在12歳で、18歳で大学に進学するとします。投資期間は6年間になりますから、大学に行くときに資産が目減りしては困ります。資産が目減りしたからといって大学に行くのを数年待ってもらうということは、なかなかできないでしょう。大学資金の場合、確実にある年に決まった額が必要になるのです。

このように、リスクを受け入れられるかどうかはその投資/運用の目的によって変わってきます。一般に投資期間が長ければ長いほど、大きなリスクを受け入れられます。また、リタイアメントでも大学資金でも、その資金が必要な時期が近づくにしたがってリスクを減らす必要があります。大学入学の直前になって市場が低迷したから急に資金が足りなくなった、ということがないように、次第に安全な投資の割合を多くしていきます。

年齢に基づく資産分配

リタイアメント資金は長期に渡って運用し、リタイアメントが近づくにつれてリスクを減らす必要があります。アメリカでは65歳がリタイアメントの目安ですから*1、自分の年齢が大きな要素になってきます。

現金資産は別として、株(ファンド)と債券(ファンド)の合計が100%になるポートフォリオを考えてみましょう。この場合、年齢とともにリスクを減らす=年齢とともに株を減らし、債券を増やす事になります。計算方法としてよく使われるのが以下の式です。

株の割合(%)= 110 - (自分の年齢)

例えば、現在40歳の人は70%を株式に、残り=30%を債券に投資します。110の部分はアドバイザーや本などによって違い、100~120と幅がありますが、年齢とともに株の割合が減っていくのは同じです。

この式でもう一つ注目したいのは、65歳のリタイアメントの時期になっても株式の割合が0%にならないことです。その人の家計や健康状態でも変わりますが、85歳まで生きるとしたらリタイアメント期間は20年にも及びます。この期間の間、利回りの低い債券だけではなく、株式も(特に最初のうちは)組み入れて、大きな利回りを得ておく必要があるからです。債券だけに100%してしまうと、利回りが低くなるだけでなく、1つの資産クラスだけに頼ってしまうというリスクも増えます。

再分配

株式も債券も価格が上下し、1年も経つと元のポートフォリオの分配から大きく離れてしまう場合があります。また、継続的に投資資金を積みたてている場合も資産の割合が変ってきてしまう場合があります。このような時、元々決めていた分配の割合に戻す事を再分配(RebalanceもしくはReallocation)と言います。再分配はポートフォリオの利回りのために重要な作業で、1年に1度など、定期的に行うか、あるいは元の割合より10%ずれたら再分配をするなど、自分なりのルールを決めるといいでしょう。

再分配の仕組みは、勝ち組みを売って負け組みを買うことにあります。例えば株を70%、債券を30%保有すると決めたとします。株価が大きく伸びればポートフォリオ全体に対するバランスは株に比重が傾き、例えば株80%、債券20%になります*2。再分配のときに10%に相当する株を売り、債券を買えば元の70:30の比率に戻ります。

ただし、再分配を課税対象になる口座で頻繁に行うと税金が掛かり、逆効果になりかねません。リタイアメントプラン内であれば売買による課税がありませんから、再分配を行うのに理想的です。また、課税対象であっても、新たに運用に回す資金で株/債券のどちらを買うかで全体のバランスをとる事もできます。

さまざまな分配例

株と債券の2つの資産クラスによる資産分配は簡単でわかりやすくなっています。もし、資産運用を始めたばかりであれば、Mutual Fund などでこの2つの資産クラスを保有するところから始めるのが良いでしょう。この2つの資産クラスは一般に流通量が多く、取引経費が低いのでポートフォリオの中核として運用します。

ポートフォリオのサイズがある程度の大きさになれば、より広範囲な運用先を組み入れるのもいいでしょう。資産クラスで紹介した外国株や、不動産をポートフォリオに組み入れる事で、例えば株も債券も低迷している時期でも不動産が好調になるなど、ポートフォリオのバランスを取る事ができます。

例1:The Truth About Momey

こちらで紹介しているThe Truth About Momeyでは、1つの例として現金、債券、米国株、外国株、不動産に20%ずつ投資した場合を挙げています。

1972年~1992年までの例ですが、この期間の利回りは13%で、同期間の株式の利回りとほぼ同じです。しかし、注目するべき点はそのリスクにあります。このポートフォリオの標準偏差(リスクの尺度)は約8%。同じ期間の株式の標準偏差約17%を大きく下回ります。しかも、同期間の債券の標準偏差(約12%)よりも大幅に低くなっています。つまり、それぞれの資産クラスだけでは高いリスクになっていますが、それを組み合わせる事で全体としての利回りを確保しつつ、リスクを劇的に減らしている事が分かります。

例2:The Informed Investor

情報ライブラリで紹介している書籍からもう一つ例を挙げます。The Informed Investorでは、1975年から2000年までの統計を使い、さまざまな資産クラスに投資することで利回りを確保しつつ、リスクを下げるポートフォリオを紹介しています。

最初のポートフォリオとしてS&P 500 に60%、長期国債(Long-Term Treasury Bond)に40%を分配しています。

この場合、25年間の平均利回りは14.43%、リスク(標準偏差)は11.42(%)になります。しかし、さまざまな資産クラスに幅広く投資した場合、平均利回りを損なうことなく、リスクを下げることができます。そこで、S&P 500 を分け、さまざまなクラスの株式に分割します。この本ではバリュー型株がリスクを上げることなく高い利回りが得られるという考えに基づき、バリュー型に重心を置いた、下記のようなポートフォリオにしています。

このポートフォリオでは平均利回りが14.71%と基本ポートフォリオと同じ水準ですが、リスクは11.42から9.09に下がっています。

この例の特徴は、株と債券だけのポートフォリオで資産分配を行っている点です。株をS&P 500だけから、国債株(EAFE)と小型株を加え、さらにバリュー型に分割しています。この分配方法はリスクを下げるのに効果的ですが、この割合でそのままファンドを買うと保有株の重複などで無駄が多くなるのが難点です。

著者はEmerging Market(発展途上国)はリスクも高いが利回りも高く、先進国の株との関連性が低いので、ポートフォリオの利回りを上げるであろうと言っています。また、REITを追加しても、REITは金利に敏感な公共事業株や小型株に似ているので、ポートフォリオに組み入れても分散の助けにはならないと言っています。しかし、どちらも具体的な数字を挙げていませんので、この主張が本当かは疑問が残るところです。

例3:カウチポテト・ポートフォリオ

The Dallas Morning News が紹介しているカウチポテト・ポートフォリオは単純に株と債券の割合を1:1もしくは3:1にしているポートフォリオです。株はVanguard 500 Index Fund あるいは Vanguard Total Market Indexを使い、債権はVanguard Total Bond Market Index を使っています。標準は1:1(50%ずつ)株と債券に投資し、アグレッシブポートフォリオは3:1で株(75%)と債券(25%)に投資します。

この簡単なポートフォリオでも、2003年12月時点で投資期間が10年なら10%前後の利回りになります。しかも、リスクが少なくなっているのが特徴で10年以上の投資期間なら利回りは8.8%~14.1%の範囲になります*3

Traditional (S&P 500)Total Market
標準(50/50)アグレッシブ(75/25)標準(50/50)アグレッシブ(75/25)
5年3.6%1.6%4.8%3.4%
10年9.4%10.4%9.5%10.5%

このポートフォリオに必要なのはたった2つのファンドだけです。しかも難しい計算は必要なく、標準的なポートフォリオなら半分ずつ投資するだけという簡単さです。投資の難しさはどういった投資先を選ぶかよりも、長い間ずっと続ける事、分配を常に守りつづける事にあるといえます。このカウチポテト・ポートフォリオは細かい分配をせずに簡単で分かりやすいポートフォリオを組む事で誰でも実現できるようにしているのが特徴です。しかも、そのために利回りを犠牲にすることなく、リスクも抑えています。

ポートフォリオ作成

いくつかの資産クラスに分けて投資し、長期間それを保持しつづければ、リスクを抑えつつ高い利回りが得られる事が分かりました。それでは実際にポートフォリオを組むときにはどうやって始めたら良いのでしょうか?上記の例では期間も違いますし、分配率も違います。どれが正しいのでしょうか?

投資で多くの人が不安になる要素が「正しい答がない」ということです。ポートフォリオ作成でも同じで、例えば統計的に一番良いポートフォリオと言うのはありません。過去の統計はあくまで参考に過ぎず、将来、株価や債券価格がどうなるかは予想できないのです。しかし、上記のどの例でも分かるとおり、複数の資産クラスに投資し、それを長期間続ければ、1つの資産クラスに投資するよりもリスクを減らす事ができます。この原則を理解しておけば、実際にどの投資先を選ぶかはその人の状況次第です。

それでは実際にポートフォリオを作るときにはどうすればいいでしょうか?参考としていくつかの方法、考え方を示します。

コア・ファンド

投資金額が多くない場合、投資を始めたばかりの場合は、投資期間に応じてポートフォリオの中心となるコア・ファンドを決めると良いでしょう。投資を始めて最初の頃は投資金額が少ないものです。ファンドの最低投資額などを考えて、まずは1つのファンド、つまりコアファンドから投資を始めます。

コア・ファンドはリタイアメントまで時間がある(10年以上)人は、多くの場合、株式ファンドになります。投資期間が長いので、リスクを取ってでも利回りが高いものが良いからです。コア・ファンドとしては米国内の株式インデックスファンドが一番の候補になるでしょう。また、1つだけしかファンドを保有しなくても株と債券に同時に投資するタイプのブレンド型ファンド(もしくはバランス型)もコアファンドにする事ができます。ただし、ブレンド型の場合、株式と債券の割合を自分では決められないので、以下に説明する補助ファンドで調整するか、年数が経つとともに投資割合が変化するタイプ(ターゲット型などと呼ばれます)のファンドにするといいでしょう。

コア・ファンドの条件

コア・ファンドには優良なファンドの条件をすべて満たすものを必ず選ぶようにします。優良なインデックスファンドでNo Loadで低経費、Turnover Ratioが低い事が条件です。コアファンドには特に経費に気を使ってください。理由はコアファンドは自分の投資の中で一番長い期間投資する事になります。そのため、僅か0.01%の違いでも20年、30年と経つと複利で違いが出るからです。Turnoverが低い事も長期で投資するファンドの重要な条件になります。ファンドが短期で株を売買してしいると、ファンド自体を長期間保有しても実際には長期投資をしたことにならないからです。

補助ファンド

コアファンドから投資を始めて、ある程度の資産額になったら、ポートフォリオを安定させるために、第2のファンド(=補助ファンド)を購入します。コアファンドが株式ファンドの場合、2つ目のファンドは債券ファンドになるでしょう。株式と債券を持つことで、リスクを軽減し、利回りの安定が図れます。この債券ファンドも、コアファンドと同様に長期に渡って保有しますから、経費率などに注意を払いましょう。

コアファンドと2つ目のファンドの分配率(Asset Allocation)は、年に1回程度見直して、最適なものにしましょう。年齢に基づく方法でもいいし、カウチポテト型で一定でも構いません。また、追加投資する際も分配率が変らないように追加購入しましょう。

2つのファンドの投資額が十分大きくなったら、不動産や外国株などの資産クラスが違うファンドをポートフォリオに追加する事を考えます。カウチポテト型ならこれらは不要ですが、好みに応じて全体の資産の1/3を超えない範囲で投資します。最低投資額などを考慮して、全体の投資額が十分大きくなってから行うのがポイントです。

そして再分配

投資を始めたばかりの頃は最低投資額や、定期的な自動投資などでぴったりした割合にはならない事が多いと思います。例えば$1,000が最低投資額で、その後、毎月$100を追加すると、最初に$100を追加投資した段階で10%分になります。時間が経ち、$10,000になっていれば、$100の追加は1%分ですから、それほど分配率に影響しません。そのため、補助ファンドを追加し、分配を考えるようになるのはコアファンドの投資額が十分大きくなってからで構いません。投資額が大きくなければ、とにかくコアファンドに集中して追加投資しましょう。

ポートフォリオ全体の投資額がある程度の大きさになったら(数万ドル程度)、再分配を定期的に行いましょう。ポートフォリオの資産分配(Asset Allocation)を考える事は非常に重要です。ある調査によると、個々の投資先(個別株や債券など)よりも、資産分配の比率を正しく調整する方がポートフォリオ全体の利回りに影響するそうです。つまり、投資する先をどれにしようかと悩むより、Index Fundなどでその資産クラス全体に投資し、分配を調整する事に集中した方がより高い利回りが得られる事になります。

再分配するときは税金に気をつけてください。リタイアメントプランなど非課税口座なら、ファンドを売り買いしてもそのときに課税されませんから、ほとんど税金を気にせず再分配できます。普通の口座(課税口座)で再分配するときは、大きくなったファンドを売って、別のファンドを買い足すよりも、追加投資を常に割合が少なくなってしまったファンドにすることで、ファンドを売らずに全体としてのバランスを取るようにします。

あとは気楽に

一旦、ファンドが一通り揃ったら、あとは時々、ポートフォリオを見直すだけで、それほどする事はありません。日々のポートフォリオ、特に株式ファンドの価格の上下は気にしないようにしましょう。長期投資ですから、今、毎日気にしても何十年後の価値がどうなっているかなんて分からないのですから。

*1:社会保障(日本の年金に相当)の標準的な支給開始が65歳であることによる
*2:これは必ずしも債券が値下がりする事を意味しません。ポートフォリオ全体に対する割合の変化と言う意味です。
*3:Dallas News のこの記事 参照のこと。

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