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消えたお金の話

ポピー

去年の年末から消えたお金の話2件が気になって仕方が無い。

ひとつはMF Global。この会社は去年10月末に破綻し、Chapter 11会社更生法の適用を申請。その商品先物ブローカー部門で、顧客の金$1.2ビリオン(この額にも諸説がある)が消えたままもう2ヶ月半。

私は商品先物はしないが、ブローカーに預けたお金が消えたという話には背筋が凍る思いがする。いったいどこに消えたんでしょうね?$1.2ビリオンが消えたら、ドスンとか音がしたり、空いた穴に隙間風がヒューと吹いて、大勢の人が気付きそうなものだけどと・・・

米国商品先物取引委員会のBart Chilton委員いわく 「ソファーのクッションの後ろを見て、『ああ、ここにあった』といったわけには行きません」 (WSJ報)。

そりゃあ、テレビのリモコンじゃあないんだから・・・。

可能性としては、規制当局の増資要求をかわす為に移されたのか、同社の借金の担保にでも使われたのか、マージンコールを掛けたレンダーに追証として差し出されたのか、そういった説が囁かれてはいる。

一応$200ミリオンはJPMorganのロンドン支社に移されたのが発覚している。同銀行でMF Globalが口座からオーバードラフトした(そういうこともあるんですね)のを埋めるのに使われたらしい。

顧客何万人もの口座(総額$数ビリオン相当)が凍結されたままで、にっちもさっちもいかない状態。顧客にはヘッジファンドや個人投資家もいれば、農産物価格のヘッジをしていた農夫もいるという。

もう一件の消えたお金はオリンパス。

同社の過去の企業買収不明点解明を求めた英国人社長が突然解任され、この元社長が欧米メディアに問題を訴えて一大事に展開。株価を半減させても隠したかったオリンパスの「おたなの大事」は実はバブル期に出来た巨大な含み損。企業買収価格やアドバイザーへの謝礼額を水増しした粉飾会計で損を隠し、一応乗り切ったつもりだった所にこの解任ドラマ。

オリンパス取締役と英国人社長の衝突は、日本人の相対的倫理観と西洋の絶対的倫理観の典型的な衝突のように感じられる。私も日本人だから「会社の存続・おたなの大事」を最優先させてしまう日本人当事者達の事情・気持ちもすごく分かる。会社のためとひとつの不正に目をつぶった結果、それに連鎖して色んな問題や不合理な事態が次々生まれ、その渦中に居る自分も何も言えなくなってしまう状況も容易に想像つく。オリンパスを調査する第三者委員会はそういった状況を『悪い意味でのサラリーマン根性の集大成』とまで表現している。言い得て妙だが、何とも物悲しい。「でももへったくれもなく、悪いことは悪い」といった欧米の絶対的倫理観とは対照的。

でも、粉飾会計で隠そうとした損額が1千億円(ドルにして$1.4ビリオン!?)以上というのは、メーカーさんの財テク失敗の損額としては、どうも一桁位多いような気がする。これは、「1ガロンの牛乳の値段に$10は高いんじゃない?」と言うのと似たような私の個人的な金銭感覚だが、お金に関してはそういった相場感覚が意外に重要なことがよくあるので敢えて書いてみる。証券投資の含み益がどこをどうしてそんな額に膨れ上がったのか、不思議でしょうがない。

どちらの事件にしても、今進行している民事訴訟に加えて、当局が刑事立件して当事者を起訴し、最終的に誰かに実刑判決が降りないことには、落ち着かない、示しがつかない所にまできているのではないだろうか。さもないと規制当局や法律の問題と追及されかねない(もうそういった追求は始まっている)。果たして、このニュース2件がどう展開し、管轄当局がどう対処し、また規制環境がどう変わっていくか気になる所だ。

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